第44話 丁度良くない?
「何だお前は」
「ぶげっ!?」
目の前で吹っ飛ばされる仮面の人。胸の中が疲労感でいっぱいの中、それをした人を見た瞬間湧いて来る大きな安心感。
「レイさん!」
その名前を呼ぶと同時に僕を捕まえていたうにょうにょがふっと消える。レイさんのパンチで吹っ飛ばされたあの人は動く様子が無い。多分気絶してるんだろうな。
「戻って来る様子が無いから探しに来た。あまり遠くには行くなと言った側からこれだ」
「う」
「やはりお前は危なっかしい。少しを目を離しただけでこうなる。お前の護りを重視するのは正しいと、改めて思う」
「すみません……」
「いや、責めているわけじゃないんだ。――どうやらお前は巻き込まれた側らしいからな」
「……」
いつの間にか手に持っていたナイフを構えたまま硬直する青髪の子と、それを睨みつけるレイさん。二人の空気は……あんまり良くない。
「……なあ、コイツがオマエの言ってた」
「そう、滅茶苦茶強い僕の仲間」
「だよな。見ただけで、分かる。なんでこんなヤツが、
青髪の子はそう言って手からナイフを落とした。カツーンという音が響く。よく見れば手が震えていた。確かにレイさんは強いけど、見ただけでそこまで怖がるの?……いや、これはレイさんの表情を見る感じ、レイさんが敵意を向けているから?
「お前は何だ。何故、サンゴと共に居る」
「……コイツは死にかけのオレを助けた。それが原因でオレの問題に巻き込んだ。だから連れて逃げた」
「あの仮面は何者だ」
「知らねえ方が良い。アンタらはアイツらにとっても手が余りそうだ。だからこれ以上深入りしなければアイツらも手を引く……と思う」
「そうか。なら手早くサンゴの前から去れ。お前がここに居続けることが、それこそお前の事情に私達を深入りさせることになるのだろう」
「そう、だな。アンタの言う通りだ」
「ちょ、ちょっとちょっとレイさん!」
何か青髪の子が責められてる感じで思わず割って入ってしまう。
「この子は襲われてたんですよ?もうすぐ死ぬってくらいの傷も負ってました。だから別に、この子が悪いってわけじゃ――」
「実際に危害を加えてくる相手、という話ではそうだろう。だが物事には原因というモノがある。そしてコイツはそれが自分であると明確に理解している」
「……」
「お前はコイツを助けた。ならそれで終わりで良いだろう。コイツ自身もこれ以上、庇護も助けも求めていない。サンゴ、助けを求めていない者を助ける必要などない。それにそこまで図々しくないというのは結構な話だ」
レイさんの話は、言ってしまえばここで僕らの関わりはおしまい。お互いそれぞれ生きて行けば良い、ということなんだろう。
でも違うんだよ。凄い良いことを閃いちゃったんだよ。
「これ以上、私達に出来ることは無いようにしか見えない。なのにお前は何に引っかかっている?」
「いやー、あのですね、丁度良いなあと思いまして」
「何の話だ?」
「この子を僕らの探索隊に勧誘出来ないかなって」
「……ん?」
「はっ?」
理解出来ないという顔のレイさんと、口をあんぐり開けて何言ってんだコイツみたいな顔で見て来る青髪の子。
いやだって、丁度良くない?
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本作が応募しているカクヨムコン9の読者選考期間終了まであと一ヶ月を切りました。応募したからには精一杯やり切りたいので、引き続き応援のほどよろしくお願いします!
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