1章-6 取引の結果・相談事

 「フェロンさん、どうですかね?」


 「これだけ素晴らしい商品ですので…。


  黒コショウは1kgで金貨1枚、唐辛子は1kgあたり


  金貨3枚、山椒は1kgあたり金貨10枚、白コショウは


  1kgあたり金貨15枚で取引させていただきたいと


  考えています。なので、これらの香辛料すべてで


  金貨63枚でいかがでしょうか?」




 黒コショウの場合、販売価格が1kgで金貨2枚だったので仕入れ値が半分になっている。これなら、ぼったくられているわけでもないので、言い値で取引をすることにした。




 「分かりました。その金額で大丈夫です。」


 「ありがとうございます。お支払いはいかがいたしま


  しょうか?」


 「組合の口座を作れると聞いたので、そちらにお願い


  したいです。」


 「では、ついでに口座の作成手続きも行いましょう。


  先ほど身分証をお預かりしていますので、すぐに


  完了いたします。」




 そういうと、机の上に置いてあったベルをフェロンさんがならした。すると、すぐに別の人がやってきて香辛料と身分証をもって手続きをしにいった。




 「ただいま手続き中ですので少々お待ちください。」


 「待ち時間の間に聞きたいことがあるのですが…」


 「どうぞお聞きください。」




 せっかくなので、この際に気になっていたことを聞くことにした。




 「まず、今後護衛を雇った方がいいのかお聞き


  したくて…」


 「そうですね…。ちなみに、香辛料の取引は今後も


  続ける予定が?」


 「はい。しばらくの間は2,3日に一度のペースで


  取引したいと考えています。」


 「そうなると、確実に護衛は必要になってきますね。


  あとは護衛の強さや人数をどうするかなのですが、


  これはどこまで行商に行くかによって決まって


  きます。」


 「ちなみに、どのくらいの強さがあれば安心して


  街の外へ出かけられるのですか?」


 「あくまで平均にはなってしまいますが、物理攻撃・


  防御が近接戦闘をされる方で400、魔法使いの方


  だと100前後ですね。魔法攻撃・防御は近接で


  100、魔法使いで400前後になります。HPに


  ついてはこのステータスであれば、よっぽどの


  ことがない限り安心して旅ができますね。」


 「HPとMPについてはどうですか?」


 「HPは近接の人で1000、魔法の人で500、


  MPは近接の人で100、魔法の人で500も


  あれば十分です。」


 「なるほど…。例えばの話、この街で一番強い冒険者


  の方に護衛を頼むとしてどれくらいの強さがあるの


  でしょうか?」


 「この街最強クラスになりますと、近接特化の人で


  物理攻撃・防御が800、魔法特化の人で魔法攻撃


  ・防御が800前後になります。ただし、このレベル


  の人を護衛として雇うと、1日あたり金貨5枚かかり


  ます。最初の方ですと、1日あたり銀貨20~30枚


  ですかね。護衛は3人くらいが一般的です。」


 「分かりました。ありがとうございます。」


 「他に質問は、ありますでしょうか?」




 この話を聞いて、姫神様のちょっとは全くちょっとではなかったことが分かった。この時点で、この街最強クラスの冒険者よりも強いのである。やり過ぎな感じがしないではないが、心の中で感謝を伝えた。この感じだと、護衛は必要ないといえる。


 なので、次は従業員についての相談をしてみることにした。




 「今回のように10kgで比較的小さい物ならリュックで


  持ってくることができるのですが、もし大きな物や


  重たい物を持ってくるとなった時のために、たくさ


  んはいる鞄を買うか従業員を雇うべきか考えている


  のですが…」


 「まず、鞄についてですが『マジックポーチ』と呼ばれ


  る見た目以上に物がはいる鞄が存在します。この


  マジックポーチは、錬金術のスキルを持った職人に


  しか作れないのでどうしても価格が高くなってしまい


  あまり使われていないのが現状です。また、従業員に


  ついてですが  雇う方法が2つあります。」




 そこで聞いた話は、現代日本で暮らしていた俺からすると衝撃的な内容であった。




 「1つ目は、組合に求人の依頼をしてもらうなどして人


  を雇用する方法です。そして2つ目は、奴隷商などで


  奴隷を購入して働かせるという方法です。」


 「すいません、私のいた村には奴隷がいなかったので、


  奴隷というものがあまり分からないのですが…」


 「そうでしたか。では、奴隷についての説明からさせて


  いただきます。一口に奴隷といっても、この国には


  2種類の奴隷が存在します。まず、借金をしてしまい


  お金が返済できなくなった場合になる『借金奴隷』


  です。この場合、最低限の衣・食・住は保障されて


  いますが、主人に対しての拒否権は”命を脅かす場合”


  を除いて与えられません。そして、主人の命令を


  無視した場合の罰則が3つまで決められます。この


  罰則も、命をうばう以外のことなら何でも設定


  できます。もう1種類は『犯罪奴隷』です。この場合、


  衣・食・住の保障はなく、主人は何をしても問題は


  なくなります。また、罰則についても制限はありま


  せん。」


 「なるほど、あまりなじみがなかったので助かり


  ました。」


 「いえいえ、お役に立てたなら幸いです。


  では次に、雇用する場合と奴隷を購入する場合の


  メリット・デメリットについて説明します。雇用


  する場合のメリットは、雇っている間のお給料を


  払うだけでいいので金銭的な負担が少なく済みます。


  デメリットは、契約しているとはいえ商売に関する


  情報が漏洩してしまう可能性があるというところ


  です。しかし、奴隷を購入した場合は漏洩の可能性が


  なくなります。主人の利益を守るために、奴隷契約


  する際に奴隷には魔法がかけられます。この魔法に


  よって、主人の許可なく体を触られそうになると体を


  覆うように結界が発生します。これは、奴隷は主人の


  所有物という考えから所有物を守るための処置になり


  ます。そして、主人に対して不利益になる情報を他人


  に伝えることができなくなります。これらのことが、


  奴隷を購入することの最大のメリットになります。


  デメリットは、単純に費用がかかるということで。


  購入する際の費用以外にも、衣・食・住に関する


  費用が一生発生します。」


 「なるほど…。ちなみに、奴隷というのはおいくら


  ぐらいするのですか?」


 「一般的な奴隷ですと、金貨50枚ほどで購入できます。


  そこからステータスや技能、見た目や状態によって


  変動するという形になります。」




 ここまでの話を聞いて、俺は従業員として奴隷を購入することに決めた。現代日本から来た身としては、奴隷にたいして拒否感が出てしまうが、自分のステータスとスキルはどう考えてもこの世界ではチート級であり、雇用という形では危険すぎると判断したからである。




 「とても参考になりました。お話を聞いた上で、従業員と


  して奴隷を雇いたいと考えているのですが、どうすれば


  よいのでしょうか?」


 「まずは、奴隷を購入する前に住む家を探す必要が


  あります。奴隷を購入する以上、衣・食・住の確保


  は義務となりますので、借家または持ち家を用意し


  ていただきます。衣・食については随時の用意で


  大丈夫です。ただし、用意できなくなったと国に


  判断された場合、奴隷は奴隷商によって保護されて


  しまいます。あとは奴隷を購入していただき、


  購入届を役所に提出していただきます。その際に、


  役所に対して税金を支払う必要があります。税額に


  ついては、購入金額の1割と一律で決まっています。


  奴隷にかかる税金は1回限りですので、今後は


  納める必要がありません。ちなみに、奴隷を扱える


  お店は国からの認証を受けているお店に限られます


  ので、この街には『ワタリドリ』とよばれるお店


  しかありません。」




 話のきりがついたところで、先ほど出ていった人が戻ってきた。その人は、身分証をフェロンさんに手渡すと、一礼して部屋から退出した。




 「お待たせいたしました。身分証をお返しいたします。


  口座の開設も終わっていますので、身分証に口座


  残高の表示が追加されています。入金手続きも


  終わっているので、どうぞご確認ください。」




 見てみると、これまであった名前と年齢の表示の下に、『口座残高:金貨63枚』という表示が追加されていた。




 「確認できました。ちなみに、どのように使えばいいの


  でしょうか?」


 「お支払いの際には、お店の方に『口座払いで』と


  お伝えいただいて魔道具にかざしていただくと


  お支払いができます。支払った金額については、


  お店のオーナーの口座に入金されるようになって


  います。口座に入出金したい場合は、商人組合の


  窓口にもってきていただければ対応いたします。」


 「分かりました。では、2日後くらいにまた納品に


  来ますのでその際はよろしくお願いします。」


 「こちらこそお待ちしております。受付で


  『フェロン』の名前を出していただければ、


  また私の方で担当いたしますので、ぜひお伝え


  ください。」




 このような会話をして、俺は商談室を後にした。


 商人組合から帰る前に、金庫の資本金が減ってしまっていたので受付で金貨15枚を引き出してもらい宿に戻った。




 <残金>




  運営資金: 金貨3枚 銀貨64枚


   資本金: 金貨3枚 銀貨83枚


    口座: 金貨48枚


    財布: 金貨15枚 

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