★事件解決
「これが異種融合装置ですか。あのハイパーメント星人が隠し持っていたなんて……」
害宙駆除センターの職員は、信じられないと言った目で、目の前の装置を見ていた。カプセルの中ですやすやと眠る少女を見ると、強く頷いてレオンに言った。
「このお嬢さんは、私たちにお任せください。無事に害宙を取り出して見せます」
「お願いします。あと、これを」
レオンはポケットからデータチップを取り出して職員に渡した。
「これは?」
「分離システムのデータです。異種融合器につなげることで分離できるようになります」
「それは素晴らしい。では、すぐにお嬢さんを助けましょう」
職員は部下にデータチップを渡すと、準備の指示を出した。職員はレオから台車を引き取って、センターの中へ運んでいった。
「では、あなたもこちらに来てください。お嬢さんは同じ地球人がいた方が安心するかもしれませんし」
レオンは、分離作業を見守るために、センターの中を案内された。入り口が開いた瞬間、驚くべきものが目に入った。恐ろしい害宙が部屋の中央にいたのだ。レオンは一歩足を踏み入れたまま硬直した。その様子に気づいた職員は、クスクスと笑った。
「おっと、すみません。説明していませんでしたね。ご安心ください。あの害宙たちは研究用に捕獲してあるものです。それに、よく見てください。眠らせてあるので、動いていないでしょう?」
職員は害宙に向かって歩いた。そして、その周辺を撫でながら、説明を続けた。
「異常をすぐに監視できるように、透明の壁で囲ってあります。ほら、外から見たとき、施設の中央に球体の建物があるでしょう。それがここなんですよ。さあ、見てみましょうよ」
「ははあ」
レオンはあっけにとられつつも、手招きする職員に引かれるように近づいた。こんなに間近で害宙を見られる機会は、襲われる時ぐらいだ。長い胴体に、びっしりと生えた足。いつ見ても気持ち悪い。いまにも鋭い牙で襲いかかってきそうな姿に、レオンは身震いした。レオンが害宙を見ているとき、案内していた職員に連絡が来た。
「分離作業の準備が整ったようです。行きましょう」
「はい」
レオンは、厳重に閉じられた扉の奥に進んだ。少し廊下を歩くと、モニター室に案内された。画面にはカプセルの中に入った少女が映っている。もう一つの空っぽのカプセルの周りには、武装した駆除部隊が取り囲んでいた。
「では、分離開始!」
かけ声に合わせて、装置が起動する。二つのカプセルが輝き出し、空だったカプセルから影が見え始めた。
影は一気に大きくなり、カプセルを破壊した。それと同時に駆除部隊たちが、一斉にレーザーを放った。施設内で見たのと同じ姿の害宙が、苦しそうに体をうねらせ、なぎ払うように室内を破壊し出す。しかし、駆除部隊はひるむことなく攻撃を続けた。
「下がれ!」
攻撃をやめると、害宙が悲鳴を上げだした。耳をつんざくような音だ。モニター越しのレオンも思わず耳を塞いだ。見ている画面も害宙の悲鳴に共鳴するようにノイズが走る。
害宙は悲鳴を上げ終わると、息絶えたように動かなくなった。
「確保完了!」
駆除部隊の隊長が、報告した。周囲の者から安堵の声が漏れる。レオンは、駆除部隊の見事な連携に感動を覚えた。そして、これで事件は本当に解決したことを嬉しく思う。レオンは、ほっと一息ついた。
しばらくすると、宇宙警察が駆けつけてきた。そこには、レオンの上司であるガン警部補もいた。ガン警部補は、センターにいるレオンの顔を見ると驚き、すぐに険しい顔に戻した。
「レオン! なんでこんなところにいるんだ。休みのはずだろう」
「いやー、たまたま連続殺人犯の犯人を見つけましたので」
レオンは、自ら探していたことは言わずに、偶然出会ったと言い訳した。勝手な行動を取ったことがばれると、説教どころの話では済まないからだ。
「犯人だと」
「こちらです」
職員が、先ほど捕まえた害宙を頑丈なケースに入れて連れてきた。ガン警部補は巨大な害宙に目を丸くする。
「うお、そんなおぞましいものを持ってくるな。しかし、どうやってこんなでかいのがホテルに入り込んだと言うのだ」
「それは……」
レオンはどこから説明しようか悩んだ。すると、職員が手際よく原因を持ってくる。ストレッチャーに乗せられた少女と、異種融合装置だ。少女はまだ目が覚めていない様子だった。
ガン警部補は眠る少女と装置を交互に見るが、理解できていない様子だ。
「地球人となんだこのでかいマシーンは。殺人と何の関係がある」
「それは二つの生物を合体させる、異種融合器です。少女はこの装置で害宙と融合させられていたのです。殺人の動機は害宙の捕食本能でしょう」
「なるほど。そうか、やっぱり害宙だったか! ほら俺の推理通りだったじゃないか。ハッハッハ」
ガン警部補は上機嫌に笑うと、レオンの頭を無遠慮にわしわしと撫でた。
「俺の推理は当たっていた!」
と周囲の者に自慢しながら彼は去っていく。レオンはほっと胸を撫でた。現場に残されたクモの糸の疑問を投げられなくて良かったと。クモも少女に融合されていたことをどう説明しようかと悩んでいた。
レオンはストレッチャーで眠る少女の顔を覗き込んだ。巨大タコが話したことをすべて信じたわけではない。この少女からも、何があったのか聞かなければならない。レオンは少女の頭をそっと撫でた。
「レオン! さっさと来い、帰るぞ」
遠くからガン警部補の怒鳴り声が聞こえてきた。
「君はもう大丈夫だよ」
レオンは少女にそっと呟くと、上司のもとに向かって行った。レオンは宇宙警察の宇宙船に乗せられ、ガン警部補の武勇伝を帰るまで聞かされ続けた。
事件を追いかけていたことを叱った。そして、分離された害宙を見て、俺の推理は当たっていたと自慢し出した。レオンは、ガン警部補の自慢話を宇宙船の中で帰るまで聞かされ続けることになった。
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