第89話 双子のモデル

 その後、時間までたっぷりと私について話し、トキコさんとミリナちゃんは帰っていった。

 非常に疲れました。

 こう、会話に魔力でも消費したんじゃないかってくらい疲れたよ。

 悪い人ではないのはわかったし、それに色んな意味でお金、権力持ってそうな人だから繋がりとしてはとてもありがたいけどね。


 とりあえず、疲れたのと眠気がそろそろ限界だったので、異世界の方に戻って休むことにした。

 双子抱きしめての睡眠は癒やされました。

 その後も双子と遊んだりして一日を過ごしたあと、再び私は地球に戻り、ミドリ親子と話していた。

 もちろん、議題は昨日の話し。


「ハルちゃんはどう思った?」


 というのはナナミさんから私への質問だ。


「えっと、トキコさんのこと?」


「ええ、トキコさんのこともそうだし、ショッピングセンターの話しも」


 両方ってことか。

 それじゃあ、まずは人の印象から。


「素直に、悪い人ではなさそうという感じですかな? まぁ、私としてはちょっと困ったけど」


「”天使様”だものね」


 ナナミさんがからかうように笑う。


「ナナミさんまで、勘弁して」


 途中一旦は、天使様呼びをやめてくれたものの、最終的にはハル様呼びと天使様呼びが行ったり来たりしていた。

 私としては、ハル様呼びも勘弁して欲しいんだけど。


「あれが演技だったら凄いよね」


 ミドリが苦笑いをする。

 演技であれだけやられたらもうどうしようもない。


「もし演技だったらその時は素直に負けを認めるしかないね」


 まぁ、十中八九それはないだろうけど。

 むしろ、演技であって欲しい気もしなくもない。


「それで、ショッピングセンターの話は?」


 うーん……


「結局のところ、振り返ってみればまだ具体的な話って何もなかったかなって……」


 聞いたのは、トキコさんの理想だけ。

 まぁ、トキコさんが本気で商店街の未来を考えてくれてるのは伝わってきたけど。


「草案はあるとは言ってたけど、それもまだよくわからないし」


 私がそう言うと、ナナミさんが考えるように口に手を当てた。


「そうね、私なんかこれで商店街も大丈夫なんて思ってたけど、言われてみたら何もまだ聞いてなかったわね……」


 本当に大丈夫かしら、と少し不安げだ。


「うまいこと共存はできないものかしらねぇ……」


 共存って言うと、お互いに利益のある関係だから、なかなか難しい気はしてる。

 この商店街にもなにか、特徴的なものがあればいいんだけど……


「まぁ、とりあえず、トキコさんが言ってた草案待ちじゃないかな? きっと本当の集まりの時には何かしら示してくれるんじゃないかと思う」


「そうね。結局待つしかないわね……、それにしても……」


 ナナミさんの不安げな顔が一変、少し嬉しそうになる。


「やっぱりハルちゃんが一緒にいてくれると安心できるわね」


 えっと?


「あんな大企業の社長さんとお話なんて私だったら緊張しちゃうもの」


「えー、いや、あれは後出し情報じゃなかった?」


「それでもよ。ちゃんと冷静に判断もしてくれるし、やっぱりハルちゃんは頼りになるわ」


 一人で納得するように頷く。

 いや、そう言ってくれるのは嬉しいけどね。


「まぁ、でも今後は、大人同士の話し合いだろうから、私はあんまりでしゃばるつもりもないかな」


「あら? そうなの?」


「うん。今回もなんか余計なことしたかな? って思ってるし」


 私はまだまだ子供なのだ。

 ませている自覚はあるけど、まだまだ16歳程度のひよっこだ。

 享年だけど。うん? 死んだのは15だから享年は15か?

 いや、まぁどうでもいいや。


「そんなわけで、あとのことは頑張ってくださいね」


「ええ、でも、なにかあったら助けて頂戴ね」


「私にできることだったらね」


 子供の私にできることなんてそうないだろうから、出番はないと思う。


「どうかしらね、きっとまたハルちゃんは巻き込まれると私は思うわ」


 ナナミさんはどこか嬉しそうにそんな予言をするのであった。


 トキコさんの話はそのくらいにしておいて、それよりも個人的に重要な案件が一つ。


「3Dモデルが届いた!」


 例の凄腕デザイナーからの3Dモデルが届いたのだ。

 数日とは言ってたけど、3日くらいしか経ってない。

 しかも、


「うわっ、イメージ通りというか、これほとんどそのままだよ」


 軽くこんな感じの二人とだけ伝えたのに、写真でも見たんじゃないかというくらいそっくりのものが返ってきた。

 修正があったら教えてとのことだけど、これで十二分だ。

 これが無料というのは非常に申し訳ないんだけど、転生祝いだそうな。

 向こうとしては、冗談のつもりだろうけど、笑い事じゃないんだよなぁ……

 今度何かしらでお礼できるといいな。

 とりあえず、お礼を伝えて、っと。


「お姉ちゃん、なんか嬉しそうだね?」


 カナがいつの間にか、私の顔を覗き込んでいた。

 メールに集中してたからちょっとびっくりしたよ。

 それにしても嬉しそうか……


「うん、思ってたよりいい感じのものが出来上がってきたから」


 出来上がってきた3Dモデルを見せる。


「わぁっ、かわいい! お人形さんみたい!」


 お人形さんと来たか、まぁ、動いていない3Dモデルは人形みたいなものか。


「見て! ミドリ姉も! かわいいよ!」


 カナがミドリにも画面を見せる。


「確かに可愛いね。でも、これって何のやつ? なにかのゲーム?」


 あれ? 二人には話してなかったっけ?


「これ、レナとルナだよ。前に話した双子の子供の幽霊」


 レナとルナについては話してある。

 向こうで知り合った双子の子供の幽霊とだけで、ママ呼ばわりは話してないけど。


「うん? それの写真ってこと?」


「いやいや、幽霊は写真に映らないから、言葉で伝えてイメージを作ってもらったんだよ」


「イメージで本人とは違うってこと?」


 うん。まぁ、そうなるよね。

 でも、それが出来てしまうから凄腕の凄腕たる所以なのだ。

 単純に私との相性が良いのもあるけど。


「うーん、細かい違いとかはあるけど、大まかにはほとんど同じだね。私も最初写真かと思ってびっくりしたし」


「そんなことできる人がいるんだ……」


 関心したようにミドリは再度モデルを見る。


「お姉ちゃん、よくわからないんだけど、これがレナちゃんとルナちゃんってこと?」


「うん。まぁ、それで合ってるよ」


 へぇ、っとカナは嬉しそうにモデルを見る。


「それにしても、こんなの作ってもらってどうするの? 僕たちに見せたかっただけ?」


「いや、これを素に二人の身体を作るんだよ」


「うん? 二人の身体を作る?」


 ミドリがよくわからないという様子でオウム返しをしてくる。

 このあたりちゃんと説明するのは難しいなぁ……


「ようするに、双子が憑依できるような人形の身体を錬金術で作ろうとしてるだけだよ」


「憑依? あ、そっか幽霊だからか」


 それで納得するんだ。

 幽霊なんだから憑依くらいできるだろうみたいな考えなんだろうか?


「うん? ってことはハルも身体ができたりするの!?」


「あー、初めはそのつもりだったんだけどね……、私の場合は色々と事情があって無理だったんだよ」


「そっか、それは残念」


 まぁ、その代わりに双子はできるからまぁ、良しかな。


「お姉ちゃん、レナちゃんとルナちゃんに会ってみたい」


 あー……


「ごめんね、ちょっと難しいかも」


「そっか、お話してみたかんたんだけどな」


 カナは残念そうな顔をするけど、

 流石に、双子までこっちに複製とかは出来ないと思う。

 ……できないよね?

 私と同じ存在と考えるとできる気がしなくもないけど、二人の魔力量的にどうなんだろうという気がしてる。

 なにかの間違いで二人が消えちゃうとかったら困るし、試すこともできないなぁ。


「代わりに、二人の身体ができたら動画でも撮ってくるよ」


 どうせだからその時はメッセージもお願いしよう。


「ほんと! 楽しみ!」


 そのためにも二人の身体を早く完成させないとね。



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