第66話 魔法剣
うん、こうしよう。
とりあえず、一旦私のことは話さずに剣を作ってもらう。
その後、私が魔法を付与する。
それでスミさんが気にするようなら話してしまえばいい。
後回しにしてるだけと言えばだけだけど。
どのみち、実物があったほうが私の説得力にもなるからね。
というわけで、そういう感じのことをカリナさんに話す。
カリナさんは私が、風の刃を付けられることを驚いていたみたいだったけど。
話すうちに、「今更ですね……」とつぶやいていたのが印象的だった。
というわけで、カリナさんからレアさんに新しい剣を作ってもらうという方向に話を進めてもらうことにした。
「~~~~~~~~~~~」
カリナさんも話に参戦しちゃって通訳してくれる人がいなくなってしまった。
話し合う3人を見ていると、時折、折れた剣を確認しているように見える。
どいうことなんだろう?
そして、最終的に、スミさんが折れた剣を預かって奥へと下がっていった。
私達が残される。
「話はまとまりましたよ」
カリナさんが私に振り返って言う。
あれ? これでもう出ていっていい感じなの?
「細かい内容を話したいのですが、ここでは不自然なので別のところに行きましょうか」
確かに、話も終わったのに、いつまでもお店に残っていたら不審だもんね。
気持ちはわかるので、同意して、お店から出ることにした。
「さて、どこで話をしましょうか……」
カリナさんが悩んでいる。
私がいても怪しまれない場所ねぇ。
そんな場所あるのかな?
「まだ、街の案内の途中ですから宿に帰るというのもちょっと……」
あー、そういえば、街を案内されているところだったんだっけ。
私としては、もう剣の作成の方に興味が移ってしまっていたんだけど。
「案内はまた後日でもいいですよ?」
どうせ時間はあるのだ。
というか、正直、どういう話になったのか気になる。
「そうですか。まぁ、残りの街の東側はあまり治安の良くないところですからね」
この後も、南側を周る予定だったらしい。
東側って危険なエリアなんだ。
覚えておこう。なるべく近寄らないようにしておこう。
「それじゃあ、お言葉に甘えて宿に戻りましょうか」
「はい」
「ああ」
3人で宿屋に戻ることにした。
「さて、どこから話したものでしょうか……」
戻るやいなや、カリナさんが話し始める。
「その前に聞いておきたいのだが」
と、そこにレアさんがストップをかけた。
「本当にあの剣を直すことができるのか?」
レアさんの口数が少ないと思ったら、そこが気になっていたのか。
でも……
「治せるというと違いますね」
元あった状態に戻すのは無理だろう。
「私にできるのは、剣に魔法をつけることだけですから」
元あった状態とまったく同じにはきっとならないと思う。
私が壊れる前の状態知っていれば別だけど、そうじゃないしね。
「本当に魔法を付けられるのか……、いや、ハル殿ならば可能か。あのナイフのこともあるしな」
そうかレアさんは私のナイフ見ているというか、使っているのか。
「そう、あのナイフの応用ですよ。ちょっと効果は違いますが」
振ったら斬撃が飛んでいく感じかな?
その辺のところもう少し詳しく知りたいけど。
それよりも、鍛冶屋さんでどういう話になったのかが気になる。
チラッと、カリナさんを見ると、頷いてくれた。
「結論から言いますと、あの折れた剣を、もう一度打ち直すことになりました」
剣を打ち直す……
つまり、修復するってことかな?
「あれ? 新しく作るのではなくですか?」
最初はそんな感じのことを言っていたんだけど。
というか、それは無理ってスミさんが言っていなかったっけ?
「スミさんが直せないと言っていたのは剣をアーティファクトとして直すことです」
アーティファクトとして。
つまり、風の刃が出る状態にってことか。
「それを考えず、形だけ戻すということならスミさんでもできるとのことでした」
金属の種類とかよくわからないけど、そういうもんなのかな?
「私としても使い慣れた剣の方がいいからな。ハル殿がアーティファクトにできるというのならあの剣にしてもらいたい」
確かに、新しく作ってその剣に慣れるよりも、慣れたやつのほうがいいか。
うん。納得した。
「了解しました。それじゃあ、スミさんが剣を直したら私が預かって作ることにしますね」
「お願いする」
話の流れはよくわかった。
といっても、結局私のやることは変わらないかな。
「それじゃあ、実際にどういう感じの効果だったのかもう少し説明を詳しく聞きたいのですが……」
「効果……、私が剣を振るとだな。こう、シュバッと、風が飛んでいくような感じだ」
シュバッと! というところで、何やらジェスチャーをしているレアさん。
……全くわからない。
「こう、もう少し具体的にお願いしたいのですけど」
「詳しくか? そうだなぁ。シュバッ! ズゥーンって感じだ!」
擬音が増えた。
そして相変わらずわからない。
ヘルプを求めてカリナさんを見る。
カリナさんはため息を付いて話に加わってくれた。
それでも口だけで説明されてもよくわからず、私が内容を理解するのに相当な時間がかかってしまった。
紙に絵でもかければ簡単なんだけどなぁ。
「……あ、スマホのメモでお絵かきできるじゃん」
気がついたのは私がアトリエに帰ってからのことだった。
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