第65話 コラボ開始!
「ハァーーッハッハッハァ! 諸君久しぶりだな」
配信が始まり、同時接続数をちらりと見た。
うーわ。
同接82万人ですってよ。
意味が分からんね。
視聴者の皆も、新しい大臣と俺がコラボするのが珍しいのだろう。
何だかんだ言って、新しい大臣堂洞俊輝は探索者から好印象だった。
顔に残る大きな傷跡も、探索者として活動していた時のなごりらしい。
ダンジョン発生初期は回復ポーションや装備など、技術的物量的なサポートが十全ではなかった。
今でこそ傷などは治癒ポーションを使えば傷跡なんて一切残らず治ってしまう。
しかし当時は違う。
文字通り裸一貫に近い状態からのスタートだったのだ。
それを生き抜き、新たな資源や素材の利用法などを発見し、成長させてきたのが堂洞達の世代、始原の世代である。
始原の世代は今はもう殆どが引退しているが、中には未だに現役でダンジョンに潜っている人もいるらしい。
「貴様らは堂洞大臣の生声を聴きに来たのだろうが、念の為に言っておく。これから話す内容は台本などは一切ない、本物の対談だ。そこを留意しておいてくれ」
凄まじい速度でコメントが流れていき、正直目で追うのは無理というものだ。
なので俺は適当に目に入ったコメントと、投げ銭チャットのみ対応する事にした。
そして堂洞からコラボ許可の通知が入った。
「さぁ諸君! 刮目せよ! PKの天敵であるこの俺と、犯罪者となった前大臣の後釜の対談を!」
ばっと両手を広げて大仰なアクションをした後、俺はコラボ許可のボタンを押した。
『んん。ジャッジメント君。聞こえるかね? ダンジョン環境省大臣、堂洞俊輝だ』
配信画面がコラボ画面に切り替わり、執務室と見られる場所にいる堂洞が映し出された。
堂洞は机に肘を置き、手を組んで口元を隠して話していた。
なん……だと……? あのポーズ……ザ・司令官ポーズではないか。
なぜこいつがあのポーズを取っているのだ。
く……渋い、実に様になっている……悔しいがやはり年の功、年季が違うのだろう。
目に宿す光も力強く、過去に地獄を見てきたであろう事を感じさせるほどに、面構えが違う。
しかも見切れてはいるが、隣に背広を着た男が後ろに手を組み、静かに立っている。
あ、あれは伝説の副司令官ポーズではないか……!
「……あぁ、聞こえているぞ」
『突然の話だったが、受けてくれて感謝する』
堂洞俊輝の堂々としてる声が、僅かなプレッシャーと共に返ってくる。
エッジの聞いた中低音ボイス、微かに掠れているがしっかりと芯の通った声。
実に司令官っぽい……!
声だけでこれか……気圧されるな……! 我は深淵の漆黒よりの使者、この程度のプレッシャーに負けると思うなよ。
「かまわん。貴方が何を考え、何を言うのか、それに興味があっただけの話よ」
『くくく……動画で見た通りの尊大さだな。若い頃を思い出して少しばかり胸が痛い』
「ふん。その痛みを恥じと思うか、誇りと思うか、それは女神アナンケーの導きだ」
『アナンケー、宿命の女神か。そうだな、そうかも知れない。さて、視聴者の皆様、初見の方は初めまして、そうでない方はこれからもよろしく。今回この場を設けさせて貰ったのはジャッジメント氏の好意によるものだ。ジャッジメント君、改めて礼を言う』
「貴様アナンケーを知っているのか……貴様とはいい話が出来そうだ」
ここまで話して思ったが、こいつやけに配信慣れしてるような気がするのだが、気のせいだろうか。
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