第37話 瑠璃ちゃん大丈夫?
「コノミ! 助けて! お願い!」
私はインターフォンを鳴らし、扉をバンバンと叩いた。
コノミはすぐに扉を開け、驚いた顔をしていた。
「ど、どうしたんだ?」
「今から駅まで瑠璃ちゃんを迎えに行くの、お願い、一緒に来て! 訳は向かいながら話すから!」
「あ、あぁ、いいけど……大丈夫か? 顔が真っ青だぞ」
「その原因を話すから!」
心配そうに私を見詰めるコノミの瞳にハートを射抜かれながらも、私は思い切り動揺していた。
まさかこんな事になるなんて。
「待たせた。行こう」
コノミは急いで準備をしてくれ、そのまま一緒に駅まで向かった。
道中瑠璃ちゃんから聞いた話を、コノミに余す所なく伝えた。
するとコノミの顔がみるみる怖い顔に変わっていった。
「クソが……! クソゴミ共め……!」
「コノミ……」
怒ってる顔もカッコイイけど、それ以上に翆ちゃんの事でこんなに怒ってくれる事が嬉しかった。
その怒り顔を見ただけで、焦っていた私の心が少しだけ落ち着く。
「俺のせいだ。俺が――君達のコーチングなんて引き受けなければこんな事にはならなかった」
「違うよコノミ! コノミが教えてくれなかったら私達、ここまで強くなってないよ!」
「だが……!」
「いいの! 今はそれどころじゃないでしょ! ほら、もう着くよ」
家から徒歩10分の所にある駅の改札、そこに瑠璃ちゃんが立って待っていた。
周囲を何度も見回しては、胸の前で小さな手をきゅっと握っていた。
翆ちゃんが目の前で拉致されたのだ。
心細くないわけがない。
「瑠璃ちゃん……」
「い、祈りちゃん!」
声をかけると瑠璃ちゃんは私の胸に飛び込み、そのまま泣きじゃくり始めた。
「ひぅ……! ごめん、ごめんねええ!」
「瑠璃ちゃんのせいじゃない。これは俺の問題だ」
「コノミ……」
瑠璃ちゃんが落ち着くのを待ち、瑠璃ちゃんを連れて家に帰ろうとしたその時、コノミが立ち止まって周囲を見渡した。
「……祈、瑠璃。俺から離れるな」
「え……?」
「は、はい」
そう言ってコノミは帰り道ではなく、逆の方向に歩き出し、段々と人気のない方へと向かって行った。
「ちょ、ちょっとコノミどしたの? 逆」
「しっ! 尾けられてる。三人、てとこだな」
「え……!」
「もうやだぁ!」
取り乱す瑠璃ちゃんを宥めつつ、コノミの横を付いていく。
私は瑠璃ちゃんの手をしっかり握り、私は……コノミにしっかりと手を握られていた。
「はわぁ……!」
と、私が心ときめいたのもつかの間、私と瑠璃ちゃんはコノミに建物と建物の細い路地に引き込まれた。
そして少し奥のゴミ箱の角に私達は座らされた。
「ここに隠れて、じっとしていてくれ」
「うん」
「はぃ……」
そして物陰に姿を隠していると、コノミが言った通り、後ろから3人組の男が現れた。
作業着を着た若めの男達は、そのまま私達のいる場所に近付いてくる。
このままじゃ見つかる、と思った瞬間。
鈍い音と、何かが弾ける音がして男の1人が呻き声を上げて倒れた。
「てめぇ!」
「やりやがったな!」
残った男2人が怒鳴り声をあげるが、それと同時にさらに鈍い音、そしてバチバチ! とさっきと同じ音がして静かになった。
「もう大丈夫だ。2人共出てきていい」
コノミの声が聞こえ、私は瑠璃ちゃんの手を引いて物陰から顔を出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます