第20話 決意

 翌日、『カレーありがとうございました、美味しかったです。動画も見ました。アドバイスがあります。もしよければお返事ください』という内容のメモを洗った鍋に入れ、隣の部屋の前に置いておいた。


 返事が来なければそれでいいし、もし来たらきちんと俺なりにアドバイスをさせて頂こう。

 向こうは有名人だし、変な事は教えられないしな。

 

「なんかそう考えると萎縮するわな」


 大人気アイドルグループのセンターとか、俺からしたら雲の上のような存在だしな。

 隼人に茶化された時は素知らぬフリをしていたけど、実際ここまで関わってしまうとどうにも割り切れない。


「待てよ……?」


 佐藤さんからカレーを貰った時に言っていた言葉。


『運命ですね! 大好きです! 今度一緒にダンジョン行きましょう!』


 あれはもしや俺の強さを見抜き、ダンジョンに行って自分達を鍛えてくれというメッセージだったのではないのか?


 その強さが大好き、これもクロノスの導いた運命である、ゆえに盟友として自分達を高みへ連れていってはくれまいか、という魂の訴えだったのではないのか?


 自らの弱さを認め、他者を認め、他者の力を利用してまでも力を貪欲に求める。

 

「なんてこった……」


 佐藤さんがそこまで力を求めているとは思わなかった。

 だがまだその事を恥じているように見える、だからこそあの時異様に顔を赤くして照れていたのだ。


 よし、佐藤さん、君のその貪欲な覚悟受け取った。

 もし君が俺の誘いに乗ってくれるのなら、俺は絶対に君達を高みへ連れていこう。


 俺は拳をぐっと握り、己の心にそう誓った。


「ママー、あの人一人でブツブツ言ってるよー?」

「しっ! 見ちゃいけません!」


 などという声が聞こえたが俺の事ではないだろう。

 そうと決まればまずやる事がある。


 ポケットからスマホを取り出し、とある人物に電話をかける。

 数回のコール音の後、スマホ越しに野太く野性的な声が聞こえてきた。


『おぉー! 久しぶりだなぁコノ! どうした!』

「お久しぶりですおやっさん。ちょっと相談がありまして」

『なんだなんだ? 恋と金の相談には乗れねぇぞ?』

「そんなんじゃないですよ。少しお力をお借りしたくて」

『いいぞぉ! 他ならぬコノの頼みだ、聞かないわけがないだろう』

「ありがとうございます。実は――」


 電話の相手は風吹剛三郎さん、一時期しばらくパーティを組んでいた人だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る