第15話

『ソヴァ殿下、お手紙ありがとうございます。

 殿下の日常が手に取るようによくわかりました。痒いのは、おそらく、ベッドに巣くう虫のせいでしょう。夫に言いましたら、こっそりと手配したようです。今しばらくお待ちくだされば、新しいベッドが届きますので、快適な獄中生活になるかと思います。

 貴方の一人息子は妃殿下によってフォーと名付けられました。フォー王孫殿下です。ゆくゆくは皇太子になるお方、と思っておりましたが、なぜでしょう、我が夫が皇太子になりました。

 全王族から望まれ、全大臣から懇願され、全国民から声が上がったのです。このようなことは国の歴史で初めてのことだそうです。

 窮屈だと夫は申しておりますが、フォー殿下が大きくなるまで、皇太子位を空位にするのもよくないと説得されたようで、しぶしぶ首を縦に振りました。人望がありすぎるとこうなってしまうのですね。

 ところで、手紙の中に「どうして証言を偽ったのか」と問われましたので、お答えいたします。偽ってなどおりません。

 私が報告した「あやしい男」が実は肥料を分析する学者だったことは、もうずいぶん前に判明していたではありませんか。「領地にあやしい男を出入りさせ、クーデターを計った」という勘違いにおさまらず「ソヴァ皇太子殿下の生命に脅威を与えた」とお考えになった理由がよくわからないのです。完全なる被害妄想ですよね。

 殿下からいただいた手紙は元気になる薬とともにすべて証拠として裁判所に提出したことをお恨みになっていらっしゃるのでしょうか。それこそ、逆恨みではないでしょうか。

 偽りの証言をさせようとして私を牢から出したのが徒になってしまいましたね。ですがご安心ください。殿下はウドゥンの異母兄です。夫はけっして貴方を見放したりはなさいませんでしょうから。ソーキより』

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