第14話

『ソヴァ殿下、ご機嫌いかがでしょうか。

 長いこと文を差し上げていなかったので、すこし緊張しております。筆記が乱れていますがご寛恕ください。

 夫は今日も元気に畑を耕しております。一日の過ごし方はあれ以来まったく変わっておりません。我が夫ながら、たいしたものだと思います。

 今になって思い出しますと、私は思いやりが足りなかったようです。

 もうすでにお耳に届いておりますでしょうが、クジュキリー妃殿下は先日たまのような男の子をお産み遊ばされました。おめでとうございます。父親になられましたね、殿下。

 お祝いを述べに夫婦で王宮を訪ねたところ、王妃様と妃殿下から王宮で暮らしてほしいと懇願されました。しかしまだ市井でやることがあるといって、夫は断ってしまいました。 隣国と──といってもクジュキリー妃殿下の故国ではない別の国ですが──そちらと共同で農業改革を始めることになったそうです。これは両国の国王から大いに期待されている事業です。

 夫は現在、農具の改革に取り組んでおります。各国で極秘になっていた農業知識を共有できるようになるなんて、夢のようだと喜んでおります。

 上手くいけば、来年はクジュキリー妃殿下の故国とも協力態勢を取れそうです。飢饉や冷害などがあったさい、相互に救援しあう条約も締結したいそうです。

 平和への足がかりになるように、殿下も願ってくださいね。

 ところで、夫の話では、王族が囚われる塔の中は、「快適には程遠いものの不快ではなかった」などと申していたのですが、弱音を吐かないのが夫の長所だと知っております。実際には精神的肉体的に厳しかったのではないでしょうか。

 ソヴァ殿下は大丈夫でしょうか。お体が心配です。

さて、こちらは新しく養蜂を始めました。手紙と一緒に、はちみつを差し入れいたします。あたたかい紅茶にたっぷりいれて飲んでみてください。ソーキより』

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