第22話 PHASE2 その9 気持ちのいい朝 

「ん?今何時だ?」

目が覚めた冬馬は、置き時計で時間を確認した。

(6時前か。起きてもいいな。)

起きようと隣を見たら、夏子の姿が見えなかった。


(トイレにでも行っているのかな?)

そういえば、昨日はバタバタしていて、

いつもしている翌日の朝ごはんの準備をしていなかった。

冬馬は失敗したなぁと思っていた。


すると、キッチンの方で物音が聞こえてきた。

「夏子、朝ごはん作っているのか?」

「冬馬くん、おはよう。勝手に冷蔵庫開けて材料使っちゃった。ゴメンね」

「いや、気にしなくていいよ。ありがとう」

冬馬にとって、夏子の何気ない気遣いがありがたかった。


「あんまり凝ったものは作ってないけどね」

それでも、だし巻き卵とキャベツともやしとウィンナーの炒め物、

そして大根の味噌汁が用意してあった。

それに加えて冬馬がよく食べる納豆と豆腐を加えたら、

結構な朝食のメニューだろう。


「ありがとう、早速食べるよ」

俺はお礼を言うと、手を合わせて『いただきます』と言った。

そして、早速箸をつける。

夏子は自分の席に座ると俺の様子を見ている。

そんなに気になるのだろうか?まあいいや、まずはだし巻き卵からだ。

(うん、うまい!塩加減が絶妙でご飯が進む!

そして、大根の味噌汁も体に染み渡るようだ)


「冬馬くん、おいしい?」

「ああ、とても美味しいよ。夏子はいいお嫁さんになるな」

「えへ、そうかな?嬉しい……」


そう言うと夏子は照れたように笑った。その顔がとても可愛くて、

冬馬は思わずドキッとしてしまった。

(くそ、可愛すぎるだろ……)


俺は照れ隠しのようにご飯をかき込んだ。

すると今度は夏子が箸を止めてこっちを見ていた。

「どうかしたか?」

「ううん、何でもないよ」

そう言って微笑むと、彼女は食事を再開した。


結局その後も夏子は俺の顔をじっと見つめていた気がするが、

特に気にすることなく食事を続けた。


「ご馳走様でした」

「はい、お粗末さまでした」

夏子は嬉しそうに言った。なんだか新婚夫婦みたいだなと冬馬は思った。

食器を片付けた後、俺たちはリビングでテレビを見ていた。

まだ出勤するまでに余裕はあった。



「夏子、今日はどうするんだ?」

「ん~、どうしようかな?お掃除とかしてもいい?」

「いいのか?それじゃ頼もうかな」

「わかった。エッチな本見つけても黙っていてあげる」

「おーい。」

夏子は冗談っぽく言ったが、冬馬は内心ヒヤッとした。


「いや、そんな本はないから大丈夫だよ」

(あぶねぇ……)

俺はホッと胸を撫で下ろした。

そして改めて思うのだった。夏子はエロ可愛いと……。


そんなやり取りをしていたら、いつの間にか出勤の時間になっていた。

「よし、そろそろ行ってくる。留守番はよろしく」

「うん、任せてね。いってらっしゃい」

そして夏子は、いってらっしゃいのキスをする。

顔を真っ赤にした冬馬は、玄関に向かうと靴を履いて外に出た。


「ほんと、新婚さんみたいだな」

冬馬はそう呟いて家を出たのだった。

冬馬は通勤路を歩きながら、さっきの事を思い出していた。


(こんな穏やかな気持ちになるなんて、いつ以来かな)

そう思うと自然と笑みが溢れるのだった……。

(夏子と二人で楽しい生活をしていきたいなぁ……)


「よし、今日は早めに帰るぞ!」

そう決意して冬馬は会社に向かうのだった。

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