第15話 PHASE2 その2 こりゃ重症かも…

次の日の朝、いつも通り出勤した。

いつものように挨拶を交わし、仕事を始める。 夏子からの連絡は何もない。


(大丈夫、きっと何とかなるさ)


冬馬は自分にそう言い聞かせた。 しかし不安が消えることはなかった。


(なんで気になるんだよ……)


仕事に集中できなくなってきたところで、

冬馬はコーヒーを買いに行くことにした。

食堂にある自動販売機で缶コーヒーを買うと、椅子に腰掛けた。

プルタブを開けて一口飲むと、冷たい液体が喉を潤していく。


(早く終わんないかな……)


そんなことを考えているうちに時間が経過していたようだ。

午後になり、昼食休憩の時間になった。

冬馬は社員食堂に行き、いつもの予約してある弁当を食べる。

そしてまた会社の自席に戻り、仕事を続けた。



「北野、今日は調子悪いのか?」

職場の先輩である石塚さんが心配したのか、声をかけてきた。

「いえ、そんな事ないですが……」

「何かボーっとしているみたいだからさ。 具合悪いならちゃんと言えよ」

どうやら他人にもわかるくらいだったようだ。 気をつけないとなぁ。


「ありがとうございます」

冬馬は礼を言うと、仕事に戻った。

しかし、いつもより集中力が落ちていることは自分でも分かっていたので、

少し休憩することにした。


(やっぱりおかしいよな)


夏子とのメッセージアプリのやり取りを見ながら考えていた。

画面をスクロールさせていくうちに、

彼女の笑顔を思い出して胸が熱くなるのを感じたのだ。


(会いたいな…。 )


「いや、ダメだ。仕事に集中しないと」

自分に言い聞かせるように呟いた後、

スマホをしまい再びパソコンに向かうのだった。


午後も仕事に集中できず、何度も休憩を挟んだ。

終業時間になり、帰り支度を済ませると冬馬は帰路についた。

今日は自炊する気分にはなれなかったので、

〇つやで期間限定のがっつりした定食を頼んだ。

腹一杯になれば余分な事は考えなくて済むかなと思ったのだが、

やはり気が晴れる事はなかった。


自宅に戻り、シャワーを浴びて汗を流すと早々にベッドに横になった。

目を閉じるがなかなか寝付けない……。


(夏子に会いたい)


そんな考えが頭をよぎる度に胸が締め付けられるような感じがした。


(やっぱり、連絡してみようかな……)


冬馬はスマホを取り出すと、◯インを起動させた。

夏子とのやり取りを見てみるが特に変わった様子はなかった。


「はぁ……。」

思わずため息が出る。

そしてまた考え事をしているうちにいつの間にか寝てしまったようだ。

…、気がついたら2時間くらい経っていた。


(今日はもう寝よう)

帰ってきて何もやっていなかったが、◯インを確認したら寝ようかと思った。

(どうせ何も来ていないだろう)



夏子:明日の夜7時ぐらいに時間とれますか? 返事下さい。



まさかの夏子からのメッセージが……。

30分くらい前に◯インにメッセージが来ていたようだった。

ドキドキしていたが、すぐに返信を書いた。



冬馬:返事遅くなってごめん。 明日は大丈夫ですよ。



夏子:ありがとうございます。 詳しい事は明日連絡します。 おやすみなさい。



何か改まった感じの文章が気になるが、夏子と会える嬉しさの方が優っていた。


「よし、早めに休もう」

冬馬は期待に胸を膨らませながら眠りについたのだった。

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