第2話 プロローグ その2 (SIDE 夏子)

「そういう事で、今度の金曜日の合コン、参加してよね。

場所と時間はさっき言った通りで。よろしくね♡」

そう言ってから一方的に電話を切られた。


(ありがとうもお願いしますも、一言もないのね)

南田夏子は、ちょっと、いやかなり呆れていた。

電話の相手は高校の時の同級生。高校を卒業して2年以上経つが、

いきなり電話してきて合コンへの参加を押し付けてきた。

ちなみに仲良しだったというわけではなく、

クラスメイトとして話をする程度の存在だった。

(どうせ人数が集まらないから、わたしに無理やり押し付けたんでしょ。)



夏子は高校時代の事を思い出していた。

高校2年までは、ごく普通の高校生活だったと思う。

成績は中の上ぐらいで落ちこぼれていたわけでもないし、

普通に友達と遊びに行ったりしていた。


高校2年の夏休みに初めて彼氏が出来た。

お互い初めての彼氏彼女で、少々浮かれていたのかもしれない。

やる事をやったら、3か月ぐらいで破局となった…。


それからすぐに新しい彼氏が出来た。同級生の中でも

モテる存在の男の子だった。もっとも、夏子は容姿は重要視はしていなかったが。


そこから何かがおかしくなっていった。今まで普通に接していた友達が

急によそよそしくなっていった。

夏子が話しかけても反応が鈍くなっている気がした。

そして気が付いたら、夏子は孤立した感じになっていた。

もちろん、今まで通りに接してくれる人もいたけど、

そんな人はごく少数だ。

彼氏とはいつの間にか自然消滅していた。


多分、誰かが裏から手を回していたのだろう。

元カノなのか、彼のファンだった娘なのか、まぁ今となってはどうでもいい事だ。


そしてそんな状況のままで夏子は高校を卒業した。

いい思い出も少ない、苦い高校生活を終えたのだった。


結局、大学進学も就職もしないまま、自宅で何もなく過ごしている。

一時はバイトとかもしていたが、長続きはしなかった。

夏子自身、これでいいのかと自問自答していた…。


(ちょっと癪だけど、合コン行ってみようかな。

万が一の事あるかもしれないしね。)

今のどうしようもないような状況を変えるきっかけにでもなれば…。

そんなことを考えていた。



「お母さん、今から出かけるから晩御飯いらないよ。

もしかしたら夜、帰らないかも。なんてね。」

「あまり迷惑かけるんじゃないわよ。」

「お母さん、もう少し娘を心配してくれてもいいんじゃない?」

「あら?久しぶりに遊んでくるんだから、いい人を見つけるぐらいしなさい。

それともお見合いの話を進めた方がいい?」

「お見合いは勘弁して。やっぱ柄じゃないし。」


多分、今の状況、お母さんも心配しているはずだ。

だから、久しぶりに着飾って出かけるのだ。

それほど期待はしていないけれど…。



(まぁ、予想通りかな。さっさと帰ってもいいかも。)

やってきた合コンの会場、夏子は少し白けた感情を持っていた。

夏子に声をかける男も何人もいたが、何か欲望丸出しな感じがして

つまらなさを感じていた。

(会費分だけ食べたら、帰ろうかな?)

そう考えている夏子の前に、話にも加わらず、一心不乱に食べているような

男性が視界に入った。

(もしかして、わたしと同じで無理やり参加かな?)

普段だったら気にも留めないだろうけど、この日は違った。


何だかわからないけど、ビビッと来るものがあった。

夏子には時々、こういう事を感じることがあった。

一種の予感のようなものだろうけど、不思議と幸運に関わる事もあったりする。


夏子はこの予感というか直感を信じる事にした。

(自分が変わる事が出来るきっかけになればいいな…。)



夏子は思い切って、食事を食べ続けている男性に声をかけてみた。



これが全ての始まりであった…。

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