情熱彼女に振り回される日々。クールを気取っているつもりでもタジタジです。

榊琉那@屋根の上の猫部

プロローグ

第1話 プロローグ その1 (SIDE 冬馬)

「北野、前に言った合コンの話、考えてくれたか?」

「自分みたいな性格じゃ、合コンなんて無理ですよ。他の人に頼んでくださいよ。」

「都合が悪いとか、断られてばっかなんだよ。今回、穴開けられないんだよ。

なぁ、頼むからさ。」

「会費とか必要でしょ。やっぱヤだな。」

「わかった。半額持つ。それでどうだ?」

「全額じゃないんですね…。」


北野冬馬にとって、合コンは結構敷居が高かった。

コミュ障というわけではないが、人付き合いは得意ではない。

いや苦手といった方がいいかもしれない。

小さい頃にあった出来事がトラウマになってもいたし、

それに加えて、決定的に人間が嫌になる出来事も体験した。

だから親友と呼べる人は作らなかったし、

出来る限り一人で行動する事を好んできた。

まぁ所謂、ぼっちという奴ってところか。


幸い冬馬は生真面目な性格で、仕事をきっちりとこなすタイプだったので、

他人から嫌われることは少なかった。職場でも露骨に嫌っている人は少なかった。

もちろん、性格が合わないっていう人もいるだろうが。


「わかりました。気が進みませんが参加しますよ。

まぁ会費分食べたら帰るでしょうけど。」

冬馬は職場の先輩である石塚さんの願いを聞き入れることにした。

今回はかなりしつこかったからなぁ。

「ありがとう、助かる、恩にきるよ。来週の金曜日の夜、

よろしく頼むよ。」


「いっその事、ポンタさんに頼んでもよかったんじゃないですか?」

「いや、流石にポンタさんはないだろ。」

因みにポンタさんっていうのは、冬馬が務める総務課の課長の事である。

本名は権田さんっていうのだが、本人が権田という名字が好きではなく、

あだ名であるポンタで呼ぶように言っている。

気さくで話しも面白い人だが、容姿が例えて言うなら

〇イクぬあらを脱色して丸々と太らせた感じなので、

流石に合コンに行かせるのはちょっとってわけである。


(今度の金曜日かぁ。あんまり気が進まないんだよなぁ)

冬馬は、気乗りのしない合コン参加に憂鬱な気分となっていた。


冬馬は一人でいる事に抵抗はなかった。いや寧ろ単独行動をしたかった。

趣味である音楽鑑賞は、流行の音楽を聴くのではなく、

60年代から70年代の古いロックを好んだ。日本のアーチストに関しても、

国内よりも海外で評価されそうなサイケデリックな前衛的なものを好んでいた。

流行に左右されず、自分の信念に基づいて行動するようなアーチストが好きだった。

当然、身近に話が合う人もいなくて、ライブも一人で行っていた。

楽器とか出来ればバンドとか組んだかもしれないが、

生憎、不器用で何も出来なかった。


(彼女が出来たとしても、話なんて合わないだろうな)

冬馬自身、流行しているものには興味がなく、寧ろ嫌悪感を持っていた。

根本からして話なんて嚙み合わないだろう。

冬馬はそう思っていた。



(まぁ、こういう所は行く機会が少ないし、様子を確認してから

食べるだけ食べて、そっと抜け出すかな。)


冬馬は合コンの会場でそう思いながら料理を確保していた。

(料理はこんなものか。会費からして妥当な感じかな)

会場には冬馬の目を引く奇麗な人もいたのだが、

冬馬は特に目もくれなかった。


(やっぱり特に収穫はなしか。)

冬馬は特に期待していなかったので、

料理を口に入れる作業を続けていた…。



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