第七話 剣仙の皇子と紅い瞳の姑娘
宮中には容姿端麗な貴婦人が
皇子である刀夜は、そんな華美に着飾った
だが、蝶や花と
そんな刀夜が周囲の状況が目に入らぬほど一人の女性に魅入ってしまった。
(俺は何か怪しげな呪術を掛けられたのか?)
未だ
その瞳に……意志の強い輝きと神秘的なまでに美しい紅に……
(紅い瞳⁉)
(どこぞの候家の姫君か?)
伯家以上の家柄は代々受け継がれる瞳の色があり、それを家名としている。
紅い瞳を持つのは
だが、高位貴族の
(庶子だろうか?)
隠し子の可能性はある。
妻に内緒で手を付けた女を
(だが、それなら多少なりとも路銀は融通するだろう……あまりに
娘が纏う深衣は継ぎ
「双方とも引け!」
夏琴の怒声が思考の海に沈む刀夜を現実へと引き上げた。
未だに矛を収めぬ邑の衛兵と
「魔女を前に武器を下ろせるか!」
「そうだ、こんな
「だいたい最初に我らを襲ったのはこの魔女だ!」
「だから私は何もしておりませんと申し上げているではないですか」
男達の誹謗に紅眼の娘は顔を曇らせた。
「何をぬけぬけと!」
「幾人も怪我人がいるんだぞ」
「現に我らの仲間を人質にしているだろう」
「
「蘭華の言い分を聞かず一方的に襲ってきたのは
いきりたつ邑人達に白き虎と赤い馬が吠えた。
「虎と馬が喋った⁉」
夏琴は人語を操る獣達に度肝を抜かれ、それ見た事かと男達は得意顔となった。
「これで分かったろう」
「この魔女は
夏琴はどう場を収めるべきか判断に迷い困り顔を刀夜へ向けた。
「刀夜様、もしや例の魔女とはこの
耳打ちしながら人語を解する虎と馬へ夏琴はちらとらと視線を送る。彼は白い虎が窮奇ではないかと目で問うているのだ。
だが、
だから、静かに刀夜は首を横に振った。
「噂の魔女かもしれんが、
刀夜の見るところ紅眼の娘は恐らく導士だ。どうして魔女と
(それに彼女が連れているのは
皇族の刀夜は霊獣と接する機会が多く、霊格を感じ取り霊獣と妖魔の区別がつく。だが、只人の邑民にはその見分けは普通できない。
「妖魔を殺せ!」
「魔女を追い出せ!」
「そうだ、俺達で
男達が血気にはやり今にも襲い掛かりそうだ。
刀夜はやって来たばかりの他所者で事情が分からない。加えて窮奇を秘密裏に探っている最中である。
あまり目立ちたくはないだけに、刀夜は首を突っ込むべきか悩んだ。が、娘の紅い瞳に諦念の
「そこまでにしておけ」
どうしても放って置けなくなり刀夜は一歩前に出た。
娘がこのまま儚く消えてしまいそうで、彼女を失いたくないと刀夜は思ったのだ。
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