方向音痴の悪役令嬢はヒロインを虐められない
仲仁へび(旧:離久)
第1話
ノエル・フロイヤー。
目にまぶしい銀色のまき髪が特徴的な少女。
その少女は方向音痴だった。
だから悪役っぽい事をしようとしても、目的地にたどり着かなかった。
「こうなったら、意地でもイベントが起こる場所にたどり着いてやるんだから!」
ノエルは様々な工夫をすることにしたのだが。
残念ながら、その工夫は実らない。
貴族令嬢として乙女ゲームの世界に転生したノエル。
「乙女ゲームの世界に転生。夢みたいな事が現実に起きるなんて!いたたた、ほっぺつねっても目が覚めない。本当に夢じゃないのね」
彼女は、自分が悪役令嬢に転生した事に歓喜した。
「夢に見た悪役令嬢の転生かぁ。素敵ね!こんなに心が躍る事があるなんて!」
ツンデレ好きだった彼女は、自分がやっていた乙女ゲームのツンデレ悪役令嬢ノエルに惚れこんでいたため、そのノエルになれて飛び上がるほど嬉んだ。
しかし、転生したその少女は、ノエルとは違って方向音痴だった。
そのため、悪事をなす前に目的地に着かないのが問題だった。
「ここはどこ! どうして目的地に着かないのよ! もおおおお! これじゃあ悪役令嬢に転生した事を楽しめないじゃない!」
問題を解決しようとしたノエルは、性格な方角が分かる魔法のアイテムを手にした。
喋る磁石を手にしたノエルは、これで悪役っぽい事ができると歓喜したが、なぜかその磁石は壊れていた。
そのため、序盤のメインイベントに参加できず、ヒロインを虐めそこなってしまった。
「ヒロインに水をばしゃっとかけて高笑いするイベントだったのに! これじゃ何もできないじゃない!」
ならばとノエルは次の手を打つ。
空間把握能力に長けた、正確な方角が分かる使用人を雇って、乙女ゲームの舞台である学園につれまわした。
しかしそこでも問題が発生した。
なぜか、その使用人が体調不良になってしまったのだ。
「なんでよおおおおお! ヒロインを倉庫に閉じ込めて風邪をひかせたかったのに!」
そういったわけでノエルは、中盤のエピソードに参加できず、メインヒロインに会う事すらできなかった。
まだまだとめげなかったノエルは奥の手を使った。
絶対に迷子にならないように、方角の神様の加護をゲットした。
その世界には神様の力が特殊な札にこめられて、教会などで売られていたため、ノエルは活用することにしたのだ。
これで、方向音痴で迷子にならない、と思って終盤のエピソードに臨むノエルだったが、しかしダメだった。
ノエルはまた、迷子になってしまった。
「神様もそっぽ向く方向音痴っていったいナニ! 私呪われてる!? 呪われてるの!?」
こうしてほとんどのエピソードで悪役令嬢らしいことができなかったノエルは、しょんぼりして自宅の部屋にこもった。
ノエルは分からなかった。
様々な手を打ったのに、なぜ自分は迷子になってしまうのかと。
俺は転生者だ。
アスクって名前だよろしくな。
とりあえず、普通の貴族の男の子。
とある乙女ゲームの世界に転生したけど、モブとかそういう感じの存在だ。
前世で知っているゲームの世界に転生したみたいだ。
だっていうのなら、きっと何らかの役目があるんだろうな。
そう思った俺は、注意して周囲の人物を観察。
すると、知り合いである女の子が悪役令嬢であると分かった。
だからこれはもうやるっきゃないでしょと、思った。
それはあれだ、悪役になる子の運命を阻止して、ヒロインの恋を成就させるのが俺の役目なんだろう。
そうに違いない。
ってわけで俺は、悪役令嬢ノエルの運命を変えるために努力をした。
ヒロインに悪事を働かないように磁石を壊したり、使用人を説得したり、迷子の神様の加護を使ったり。
って具合にな。
かなり疲れけど、なんとか最後まで主要な悪役イベントを阻止できたと思う。
いやぁ、良い事をやるってのは気持ちのいいもんだ。よかったよかった。
悪役令嬢であるノエルちゃんも断罪されなくて良かったなあ。
「もおおおお! なんでよ! なんでうまくいかないのよおおお。神様のばかああああ!」
なんだかものっすごく悔しがっているように見えるけど、気のせいだな。
うん。
方向音痴の悪役令嬢はヒロインを虐められない 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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