第6話 決意

3人で泣いたその後、私たちは一緒に夕食をとることになった。

春香は今日遅くなるようで、私たち4人での夕食だ。


今日という日のお祝いに父がケーキを買いに行き、私たちはお寿司をテイクアウトしに出かける。母は、家でサラダと味噌汁を作ってくれる。


私たちは4人で穏やかに食事を食べた。

母の顔は今も無表情だけど、少しだけ表情が動いていることがわかる。

今まで気付けなかったのは見ようとしていなかったからだ。

私と母が似ていると言ったハヤトはすごいと思う。


食事を終え、家を出る。

片付けは母がするからと

今日は新婚初夜だからと

直ぐに帰らされた。

帰る間際に、母から「ハヤト君は若い時のお父さんに似ているわ。優しい人ね」と耳打ちされた。

耳打ちされたのも初めてだし、誉め言葉も初めてだった。

私に過去を打ち明けた事で母の緊張も解れたらしい。

私は少しの自信を得ることが出来た。

ないと思っていた愛情があったからだ。

私が望まれて生まれてきた。

母親に愛されていたという事実は思いの他私の心を軽やかにした。


私はハヤトと並んで歩く。

「ハヤト、私、自分がお母さんになったら、いっぱい大好きって言ってあげることにする。お母さんは愛し方が分からなかったって言った。私はお父さんやハヤトに沢山愛されて、お母さんにも沢山愛されてた。だから、愛し方も分かると思う。確かに小さなころから今日までお母さんは私のこと好きじゃないんだと思ってきた。でも、それでもお母さんの精一杯の愛情を受けてきたんだと思う。だから、今度は私が私の子供に精一杯の愛情を注ぐね」

ハヤトは嬉しそうに笑った。

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