[それでも僕は書きたいんだ]

星乃 ガイト

第1話、世界想像

世界を作る、僕だけの世界でひとつしかない、僕の世界を、


「よし、こんなもんかな」


僕は節也 翔(セツヤ ショウ)17歳、高校2年だ今僕は、物語を想像している、


僕は小説家だ、でも決して多くの人に見られるわけでもない、僕は僕の最高の世界をただ想像しているんだ、


「pv少ないな、」


ぼそっと口に出た一言、決して承認欲求を満たしたいということでもないが、システム上気になってしまう、どんなに書いてもどんなに想像しても評価されることは少ない、たとえどんなに良いものを書いたとしても、


「そっか〜、まあ、また新しいのを書いてみるか」


僕はゲーミングチェアーから立ち上がり自室からリビングへ向かった、


ポチ、僕は何も考えずに適当にテレビをつけて『ネトプリックス』を開いた、


「さて、今期のアニメは、、、」


アニメ欄には小説からのアニメ化作品がたくさんある、それをみるといつか自分もと思うのが小説家あるいは物語を生み出すものの願望なのだろう、


「ふ〜、すごいな、よく作り込まれてる、ストーリーもキャラの個性も出てる、面白い」


アニメは小説と違って表情や仕草でキャラの心情や心理を描く、

反対に小説はアニメと違って感情を文字として描くことができる、


キャラの心理を細かく描くのが小説、キャラを美しく見せるのがアニメ


しかしこの世界の元はその人にしかわからない、これらは言葉や仕草を最大限具現化したものだ、本当の世界はその人の想像の世界にしか存在しない、


「よくここまで描いたな、」


誰しもが完璧な世界を想像しさらに具現化することはできない、どんなにヒットしても、


そんな中でも僕は、


「翔!」


玄関から母の声が聞こえてきた、夕方で少し疲れが感じとれる、だがそれでも明るく疲れを出さないように見せた声、そんな声に聞こえる、


「翔!、ちょっと、手伝って、はあーはあーはあー、買い物の荷物が重くて、はあー」


前言を撤回する、ただ重たいものを持って疲れている声だったようだ、


「はあ〜わかった、ちょっと待って」


僕は一旦アニメをストップさせて一階に行き、母が持っていた買い物の荷物をもち2階に運ぼうとした、


「うわ、おもた、何が入ってんだ?かーさんくらいの重量はあるぞ」


「この!」


「痛!」


僕の一言に腹を立てた母は僕の頭に拳骨を入れた、


「痛った〜、家庭内暴力だ!ドメスティックバイオレス!」


僕はゲンコツで殴られた頭を押さえながらそう言った


「何が、私くらいの重量よ!それに何?ドメスティックバイオレスって、私は今精神的虐待を受けました、私の方がpsychological violenceよ!」


全くその通りの正論が返ってきた、


「う〜、僕にとっては母と子の愛情表現のつもりなのに〜、これ以上バカになったら大学に行けなくなるよ〜」


母はため息をつき僕に言った


「何が愛情表現よ、それに貴方の成績が普通なのは勉強してないからでしょ、まったく、まあ翔が好きなことをしてくれればいいけど」


そうか、少し複雑な気分になった、この気持ちを表現するにはまだ僕の力は足りない、


僕は、まだ少し痛む頭から手を離し買い物の荷物を2階に置きに行った、


はあ〜一発ヒットしたら学校辞められるのにな〜


そんなふうなことが僕の思考めぐる、


「よいしょ、ふ〜さて続きみるか」


僕は止めていた画面を動かした、僕以外の人が想像した世界、美しい面白い、なんて発想力、すごい、そんな称賛の言葉が溢れ出そうになる、


僕がアニメを見てると母は何も言わずに夜ご飯を作っている、唐揚げのいい匂いが漂う中僕はアニメを見ながら時間を潰していた


今僕が見ているのは流行りは少し過ぎているが未だ現役の異世界転生もののなろう系小説が原作のアニメだ、


この作者が一体どんな思いや考えでこの世界とストーリを想像したんだろうか?この発想力、他者多様な世界の中から選ばれて優れた世界と認められアニメに表現された、


僕たちの目指すところ、


「はい、できたよ」


焼きたての唐揚げがたくさん置かれる、その匂いは僕の食欲を掻き立てた、でもなぜか今日は少し元気をなくしていた、


そう、嫉妬だ、


僕たち底辺が何を、と思うだろうか、でも僕たち底辺でも世界を想像し描いたなら、それはもう、立派な小説家であり、作家病を発症しているのだ、


だから僕は、嫉妬しているのだ心にすこし穴が空いたような、そんな複雑な感情が現れる、僕は固まった、


「翔!」


ビク!僕は現世に戻ってきた、その力強い声が僕を無理やり動かした、


「あ、もう、うるさいな、少し考え事をしていただけじゃん」


「せっかく熱々の唐揚げなのに冷めたら嫌でしょ」


僕は少しイラっとしながらソファーから椅子に座り手を合わせる、


「いただきます」


僕は覇気がない『いただきます』という言葉を吐いた、それを聞いた母は僕が落ち込んでいるのを察したのか僕にこう言った


「翔は、大学は何か考えているの?」


大学、僕が行けるところなんてFランより少し上のところくらいだろ、よくて偏差値は45くらいだ、別に僕はこれからも世界を想像するだけでいい、大学とか将来とか別に考えなくても、、、


そんな強がりを僕は心の中で思った、でもそれは思っただけだ、実際、将来への不安はある、だから大学もこの先の将来もしっかり考えてある、


「うん、一応」


僕は将来は建築家になりたい、父がそうだからというのが大きいが、父の会社で働くか、将来めちゃくちゃ努力して一級建築士の資格を取る、というのが一応僕の想像した将来の僕の世界だ、


「それは、翔のやりたいことなの?」


母はなんだか暖かい声で僕に聞いてきた、


「うん、僕は大人になっても小説書いていければいいから、最低限ど度の生活が送れるようになるつもりだよ」


親からしたら、少しでも良い大学に行って欲しいというのが本音なのかもな〜そんなことを思った、


「うん、翔のやりたいことをすれば良いと思うよ、大学なんてどこでもいいのよ、翔はもしかしたら建築学の学校とか思ってるかもしれないけどそんなの習わなくても、お父さんの会社にぶち込んで、一から教わることもできるし、だから、翔の好きな大学に行っても良いんだよ」


?今の父が聞いたらどう思うだろうか?でも、母の気遣いはとても暖かくて安心させてくれた、


「フン、何?かーさん、僕が落ち込んでるからそんな話したの?しかもそんな、電話に出る時みたいな高い声で?」


僕は嬉しさと同時に笑いが込み上げてきた、


「もう、わかったら早く夜ご飯を食べなさい、片付かないでっしょ」


そう言うと、少し冷えた唐揚げを僕は食べながらこれからも僕の世界を想像していこうと誓った、







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