錬金術師ですが妖精を恋に落としました

畳アンダーレ

第1話

「あぁ……ついに来てしまったよ……」


木々が生い茂っていて日の光がほとんど入ってこない。自分よりもはるかに大きな木がそこら中に根を生やしているから歩きにくくて、見たことのない生き物が私の正面を横切ったりじっと見つめてきたりする。

このうっそうとした森に来てしまったことを私は早くも後悔していた。とぼとぼと肩を落として、今となっては唯一頼りになる杖を力なく握って足を進める。


「何が出てくるか全然分からないんだよね、この森って。というか既に変な生き物が私を見てくるし……何もしてこないのが逆に不気味だし……」


私の名前はリリス。一応だけど錬金術師やってるんだ。

でも錬金術の腕前は下手で失敗ばかり。だから街の人からは廃材製造マシーンが良いところって評価を下されている。本当に言った奴は杖で殴ってやった。怒られた。ぐすん。

スカっとはしたけど、それで錬金術の腕前が上がった訳じゃない。私の錬金術師としての仕事は減っていく一方だ。


「はぁ。お腹空いたよぉ……あの木の実食べられるかなぁ」


仕事が減ればお金も無くなる。必然的に私の生活は苦しくなっていった。


「んぎっ!? 固いぃ……」


それでも私には錬金術しかできないんだよ。それ以外の仕事なんかしたくないしできない。

そう意地を張っても、結局は難易度の高い仕事はできないのは事実なんだ。

なので私はこの不気味で意味の分からない森を一人で歩いている。


「ギャー! ギャー!」

「ひゃぁああ!? 何この鳥ぃぃ!! ちょっと服ひっぱらないでよぉ!?」


ぶんぶんとすけべな鳥っぽい生物を杖でおっぱらう。

私の服を突いたり脚で鷲掴みしてきた鳥たちは木々をかき分けて空に消えていった


「うぅ、錬金術で失敗してススだらけにって訳でもないのに服汚れた……今日のご飯代もないのに新しい服なんて用意できないってぇ!」


もうどこをどう通ってきたかも分からないだろうけど、後ろを振り返る。


「この森に入れば何か起きるはず! ……そう思ったんだけどね」


錬金術しかできず、しかし依頼も仕事もない。ついに生活費がなくなって追い詰められた私はヤケになってこんな森までやってきたんだ。

街から少し離れた森。不気味で謎の魔力が満ちているから騎士団も街のギルドも一切関知しないし調査もしない森だ。

入れば最後。一生出てこられない禁断の森……なんて言われ方もされている。

そんな森に私は一人入ってきてしまった。


「だめだめっ! 弱気になってどうするの! 何か素材の一つでも持って帰らないとっ」


ネガティブモード終わりっ! 私は杖を少し強く握り直した。私は錬金術師だもん、諦めたら終わりだよねっ!

錬金術師はね。王国の子どもたちによる将来なりたい職業ランキングトップ100の内30位なんだっ。上位3割なんだよ? だから私がこんな情けない姿を見せたら(誰も見てないけど)だめだよね! あ、さっきの鳥のせいで服の端がほつれてる。ぐすん……

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