悠久の麦藁菊

麝香連理

???1

          大仕事


「それじゃあ、分かったかしら?」

 そんな気の抜けるような声が響く。

 回りには私と目の前の彼女だけ、その言葉は仕えている主人が口にした物だった。

「お待ち下さいお嬢様。そのような仕事があるという話を初めて聞きましたが。」

「初めて言ったもの。」

 小首を傾げながら彼女は言った。

 ものすごく言いづらいが、正直めんどくさい。

 今回私に振られたそれは長期に渡るものだった。そこで私は唯一の打開策を提案した。

 「しかしお嬢様、あなたの身の回りのお世話は誰がするのですか?私がいない間に何かあったらと思うと私は…」

 お嬢様は身の回りのことがかなり怪しい。だからこそ私がいなくなる時を伝える。

「それは大丈夫よ!私だってそれくらい出来るわ!」

 言い切られてしまった。

 堂々と胸を張っているが不安しかない。

 「それに今回の仕事は私が一人前になるための第一歩でもあるのよ。一番信頼しているあなたと一緒にしたいの。」

 真剣な表情で懇願されてしまった。

 「はぁ…わかりました。その信頼に報いるように努力いたします。」

 ここまで言われたらやるしかないだろう。いつも、早く一人前になりたいと仰っていた。

「でもそれだけじゃつまらないわよね?」

 彼女は無邪気に笑ってそう言った。

 嫌な予感がする。

「一緒にやるんだからもっと楽しくしないと、だから………

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