第6話 闇堕ちしないために



 さて、前回の続きにもなるんだけど、そんな感じで脳は報酬を欲しがる。


 こんなに頑張ったんだから、なんかくれ!


 こう主張するのが脳みそ。


 で、多くのかたが目に見える形の報酬として、ランキングとかPVにこだわる、と。

「どうせ書いたんだから読まれたいと思うのは当然」と皆さんおっしゃる。

 そうですね。どうせなら、読まれるにこしたことはないですよね。


 でも、それって、たぶん、脳が報酬を欲しがってるんです。ほとんどの人は承認欲求だと思ってるかもしれない。でも、なかには「承認欲求とかではないんですが、それでもまあ、読まれたら嬉しい」と書かれてる人が、まあまあいる。


 報酬だから……。


 ランキングとか、PVとか、ハマるとなんかぬけだせないですよね?

 ちょっとでも上位になるためにやっきになったり、カクヨムではそれやると違反行為なので、即垢BANされてしまいますが、他サイトでは、毎日数十人もの新規登録者に、自作の宣伝コメントを送り続けてる人がいる。自作を読んでください、読んでくださいとリンク貼って宣伝するわけです。僕なんか、どうやって新規登録者を調べてるのか、その方法がわかんないですがw


 たしかに、その人の作品はそのおかげでつねにカテラン上位に入ってます。新規登録した読み専さんなんかは、作家のほうからコメントが来たことで舞い上がってしまって「こんなコメント貰えるなんて嬉しいです! ぜひ読ませてもらいます」という反応を示す人が、じつは少なくない。(前にちょっと調べてみたことがあるんで)コメント貰った三分の一〜半数は喜んでた。残り半数のうち、さらに半数が無反応。最後の四分の一ていどが「キモイです。宣伝不用! ブロックします」って反応。←このへんが分析力w


 つまり、宣伝行為は諸刃の剣ではあるけれど、概して好意的なほうが多い。やってみる価値はある。その一方で、一定数に嫌われますが。(あくまで他サイトです。カクヨムでは禁止されてるのでご注意を。なろうも禁止のはず)


 さらに言えば、毎日数十通もコメント書くのに時間を費やしてるわけですよ? 肝心の小説書く時間あると思います?

 もちろん、ないですよ。そのかたの作品は一時期、1ページも進んでませんでした。今は作品の長さの表記が変わってしまったのでわかりませんが。小説書く時間をすべて、コメント書くのにあてがってたわけですね。


 正直、そこまでしてランキングあげて、なんになるの? だって、そのサイトでは広告収入分配してないですから。いくら読まれてもなんの収入にもならないんです。ただランキングが上がるだけ。


 そんなんだったら、小説の続き書けばいいのに。なんのために小説書いてるの? 本末転倒じゃない?


 これに近いことはカクヨムでも言えるわけで。

 相互営業で星を稼いだり、ランキングの上げかた研究して、「今日は何位です!」「今日も上がりました!」「ショック! いっきに800位も落ちた!」とか一喜一憂してる人たち。


 何が楽しいの?

 まあ、カクヨムはアドスコア稼げば多少なり収入になるから、まったくのムダではないんだけど。でも、リワードのためにやっきになってるわけじゃないですよね? たぶん。


 報酬なんだろうな。脳の報酬にハマってしまってるんだろうな。


 あげくに「ランキング落ちるの見るのがツライので、しばらく執筆活動休止します」とかいうのを見ると、これも本末転倒だなと。

 ほんとに小説書くことじたいが楽しければ、ランキングなんて何位でも関係ないのに。


 気持ちはわかるんですよ。

 僕もエブリのころにはランキングに一喜一憂した時期もあったので。なんなら、妄コンもランキング上げのために始めたようなとこもあった。


 で、結果が出始めると、今度は妄コンじたいが報酬に変わるわけですよ。落選、落選、落選、優秀、優秀、落選、落選、優秀、落選、落選、優秀……佳作!


「やったー! 佳作とれた! 佳作だー!」ってころ、あったなぁ。

 一年くらい続けて、もう優秀以上はとれないんだとあきらめてたころに、急に佳作とれたんで、嬉しかったなぁ。そして、そのあとは二、三ヶ月のうちに大賞、準大賞と続けざまにとれたし。


 妄コンで大賞とった日のことは、たぶん、一生忘れないでしょうねぇ。なんなら、最恐で大賞とれた日より嬉しかった。

 というのも、そのころはかなりの数の書き手さんと交流してたんで、結果発表があった日は、その人たちからひっきりなしにお祝いコメントが来るんですよ。で、コメント来たらメールで通知が来る設定にしてたんで、もう感覚的には数分置きにピコンピコン、スマホが鳴ってる感じ。仕事中だったけど、ニヤニヤが止まりませんよね。たぶん、二十通くらいはお祝いもらったんじゃなかろうか?


 そのあとの妄コンは、このときの気持ちよさが忘れられなくて、もう一回大賞とりたい一心で続けてた。でも、大賞はその一回きりだった。なかには何度もとる人いるんですけどね。


 で、あの感覚が味わいたくてやってるけど、そのあとはあいもかわらず、よくて佳作、ふつうで優秀止まり。さらには、二年間ブーストがあるんで、それをすぎると、優秀に入るのも難しくなってくる。


 で、そのころにじゃっかん、スランプになりかけてたんだと思います。前はふつうに楽しんで書けてた妄コン用の短編が、書くときすごく重くなる。苦痛を感じる。ネタは浮かんで、書けばいい作品になるのはわかってるんです。でも、筆が重い。じゃあ、スランプなのかと言うと、妄コン以外の話はふつうに書けるんですよ。


 たぶん、「前とおんなじじゃダメだ。前よりもっといい作品を書きなきゃ選ばれない。もっと傑作を書かないと……」って意識が強すぎたんでしょうね。自分の実力以上の作品をムリしてでっちあげようとしてたから、苦痛でしょうがなかった。


 それに気づいた瞬間、「妄コンはもうやめよう。小説書くことが嫌いになるんだったら意味がない」と思いました。そしたら、めっちゃ気が楽になったんですね。


 で、このころに書きだしたのが『宇宙は青蘭の夢をみる』でした。もうこれが書いてて楽しくて楽しくてしかたなかった。三年で140万字完結。


 あのとき、僕は闇堕ちしかけてたんでしょうねぇ。報酬を求めるあまり、ほかが見えなくなっちゃう。


 スランプの構造って、これなんだと思います。コンテストとかランキングとか、もっと読まれるためにとか、自分に必要以上のプレッシャーをかけて、自分で自分を縛ってる。実力以上のものを書こうとしても、脳が苦しむだけです。何しろ、脳はラクして楽しめることが好きなんで。


 なんか、ギャンブルに依存してくのにも似てますよね。最初と同じ刺激では、だんだん満足感が得られなくなっていく。より強い刺激を求めていくって。


 ランキング依存症、PV依存症、星評価依存症などですね。


 自分が何かに依存してる、このままだと執筆活動じたいに悪影響になると感じたら、まずは初心に戻ってください。自分は小説を書いて何がしたかったんだっけ? 読みたい小説を自分で書きたかっただけなんじゃなかったっけ? あるいは、書籍化をめざしてる?

 でも、今、書籍化=ランキング上位、=PV数では必ずしもなくなってきてるので、ムリして営業する必要はないかもしれませんよ?

 ただ、交流じたいが楽しいという人は、それが報酬になってるので、やめる必要なし。たくさん交流して学びあうのもよしです。


 あと、一番肝心なのは、小説はあなたの苦しいリアル(貧困とか人間関係とか精神的問題とか)から救いだしてくれる魔法のアイテムではありません。生活の糧はちゃんと別の方法で確保しといたほうがいいです。


 小説が書籍化されて大ヒットすれば、人生大逆転なんだー! という気持ちで書いてる人は闇堕ちしやすい傾向にある……と、これまで多くの近況ノートを読んで感じました。リアルでの追放ざまぁを望んでるんですね。自分を認めない社会に対して、小説が受賞して書籍化、バカ売れ、ざまぁみろと言ってやりたい。見返してやりたい気持ち……。


 だって、小説を書くこと楽しんでないよね? それじゃ脳は苦しいだけだよ?

 いかに脳をだまして楽しく感じさせるか。それが小説を長く書き続ける最大のコツなんじゃないかなと。


 なので、ランキング依存症にならないためには、別の報酬を脳に提供してあげるのがいいかも。僕みたいに書きながらソリティアでもいいし(安くつく脳みそだなぁw)、お金に余裕のある人なら「一万字書いたら、ご褒美にこの前欲しかったアレ買ってあげるよ」でもいいです。自分にご褒美はけっこう有効な手段じゃないでしょうか?


 あとね。すごく小さいことなんだけど。僕はスマホで小説書いてます。音楽聴いてないとき、スマホはマナーモードにしないようにしてます。一文字打つたびに、ポチポチ音がする。そのほうが、なんとなく心地よいんですよね。「打ってるぞ」という実感がする。音なしだと、なんか物足りない。たぶん、これも脳の報酬の一種なんだろうと思います。パソコンで打つときのキーボードのパチパチ音。あれも気持ちいいんですよね。


 みなさんも自分の気持ちいいを追求しながら書いてください。もちろん、内容の自分好みもあるんだけど、それ以外の要素も大事。書くという行為じたいを楽しめるように。

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