第3話 投稿遍歴



 僕が最初に書きだしたのは中一の晩秋ごろだったと思う。


 夏休みの課題で、なんでもいいから自分で作ったものを提出ってのがあって、中三の先輩が、原稿用紙に手書きでドンと『わが人生』みたいなエッセイを出していた。提出物は全校生徒のぶんが冬休み前まで図書館にさらされていた。なにげに読んだらおもしろすぎて、毎日図書館に通って最後まで読んだ。どっちみち図書館では毎日本を借りてたので行くついでがあった。


 それが九月だったと思うけど、なぜか少しあいだを置いて、十一月ごろだったか? ある日、急にふつふつと「僕もああいうの書きたい」と思った。読みおえたタイミングだったのかも? 冬休みを利用して横溝正史のマネしたような処女作を書いたけど、駄作だったなぁ。


 すべて最初は模倣から入るって言うけど、まさにパクりですな。まあ、すてた話だからいいんだけど。中坊の書く処女作なんて、そんなもの。それでも、原稿用紙107枚。よく書いた。仕上げることが大事。


 まあ、中高のころの話は全部ヘタすぎてすてたので、今はもう記憶のなかにしかない。原稿用紙にして100〜200枚ていどのやつを十数冊ぶんは書いた。ミステリーまがいや、オカルトサスペンス風とか、BL風(エロはなし)とか。たまに3、400枚になった。ながくて600枚。


 高校の終わりごろだったのか? このころ夢日記をつけてた。明晰夢を見て、自由自在にあやつれるようになった。予知夢は子どものころから見たけど。

 いやいや、不思議ちゃんアピールじゃなくて、夢を小説のネタにして、ファンタジーの大長編を書いたのが、たぶん、このころだったと思う。それがワレスさんが脇役で出てたシリーズの元になったやつだけど、それじたいはすてた。ノートに一行あきでギュウ詰めに書いて、20冊くらい?

 これが人生初ファンタジー。その後、ファンタジーからSFに走る。SFのあとミステリーに帰ってきて、最後にホラー。


 あっ、それはいいんだよ。

 僕が何書いてきたかとか、そんなの誰も興味ないだろうし。違う、違う。書きたいのはこのあと、大人になってからの公募との戦い。


 ほら、公募ガイドとか買って。とりあえず、そのとき書いてる話の枚数と規定枚数があうとこに、ガンガン送りつけてた。今にして思うと、まったく賞にあってない内容もあった……というより、ほぼすべてがそうだったんじゃないかなぁ?


 あまりにもたくさんをあちこちの賞に送ったので、どこに何を送ったかは覚えてない。当時はスマホとかない時代だし、当然、web投稿サイトなんて存在しない。作家になりたいと言えば、一般公募に送るしかなかった。


 一般公募は落ちると講評も何もないので、何が悪くて落ちたのか、少しでもいいとこはあったのか、それとももう書式がダメだったのかとか、何も情報がない。

 正直に言えば、たぶん、ほぼ一次落ちだと思う。中間発表なんかも以前は指定の本にしか載ってなくて、「受かれば向こうから連絡来るでしょ」の精神で、そういうのさえ確認してなかったので。だって、いちいち発売日に本屋に行って確かめるのめんどくさくない? そういう人間だった。もちろん、たまたま本屋に行ったときには見たけど、残ってたことがないw


 賞ごとに求めてるものとか、選ばれやすい傾向とか、なんなら業界のお約束とか、そんなのガン無視で送るだけ送る自分に結果なんて出るはずないと、当時の僕は知らなかった。


 なんでこんなこと書いてるかというと、先日、知っている書き手さんがカクヨムの近況報告で「公募に落選しまくって……」みたいな内容を書かれてたので、大丈夫。あなただけじゃない。最初から成功(受賞)する人なんて、そうそういないんだ。みんな、落ちて落ちて落ちまくってるから。それに耐えて続けられる人だけが、いつかほんとに夢を叶えられると言いたかったから。


 あきらめなければ、夢はいつか必ず叶う、とは言いません。叶わない人だってたくさんいるよ。途中であきらめる人のほうが絶対に多い。どんな夢でも。小説でも絵でも音楽でもスポーツでも。ほかの何かでも。


 それでも、あきらめたら、そこで終わりなんだよね。続きはない。

 小説を書くことがほんとに好きなら、続ければいいと思う。

 ほかに趣味があって、そっちのほうが大事なら、そっちに尽力すればいい。

 人間は幸せを追求する生き物だけど、小説を書くことじたいが=幸せなわけじゃないんだよ?

 幸せの形は人それぞれ。自分にとって一番大切なものって何? あなたにとっての幸せは?

 まずはそこから探さないといけないんだと思う。

 承認欲求=小説の人多いけど、それは小説=幸せじゃないよね? 承認欲求=幸せなんだよね? もしもほかに、もっと効率よく承認欲求を満たす方法が見つかれば、そっちを大切にしたほうがいい。

 小説書く=幸せだと思える人だけはやめないでほしい。


 それが言いたかっただけ。


 ちなみにね。落ちた公募は、江戸川乱歩賞、日本ファンタジーノベル大賞、サントリーミステリー大賞(みたいなのあったよねぇ? 賞金一千万円だった)、横溝正史賞、日本ホラー大賞、アガサ・クリスティー賞ほかいろいろ。ハヤカワSFコンテストとかもあったかな? すばるや新潮の新人賞とか。


 ラノベの賞にも送ったし(そういえば、集英社のラノベの賞に送ったとき、『選評欲しい人は切手同封してね』って書いてあったので入れたけど、選評返ってこなかった。「嘘つき!」と、ずっと思ってたけど、もしかしたら、アレ、一次選考に落ちたからか!Σ(´;□︎;`)ガァーン)なんなら児童文庫狙ったこともあったはず。出さなかったけど。しかも何度も(毎年って意味です。もちろん違う作品で)送った賞も複数あるので、全体ではスゴイ数。


 だからこそ、今、過去作です〜とひっぱりだしてくる作品が山ほどあるw

 過去作のほとんどは、何かしらの賞に送ったやつなので、作品の数ほど落選したってことですね……えっと、ザッと30以上? いや、50? 年に1〜3作送ったとして(多い年には5作とか)、ウン十年なので……うん。スゴイ数。


 さすがに「小説は呼吸だ!」とか言ってるやつでも、もうダメなのか……なんでダメなんだ……と、ドップリ挫折感にひたっていた。


 なかば、あきらめかけて、絵の修行したのもそのころだし。でも、絵じゃダメなんだ。やっぱり小説が書きたいんだと再認識して、ちょうどそのころに始めたのが、エブリスタだった。少しあいだ、はしょったけど、だいたいそんな流れだった。


 カクヨム今年で四年め。エブリは五年続けてたから、合計九年ですね。苦節十年の前に、すでに絶望してた。公募はね。博打だから。ハズレたら何も残らないんですよ。心の借金だけが残る。


 でも、エブリを始めたのが結果的には転機だったんですね。自分でも思ってなかった才能が開花したんです。

 えっ? 小説?

 いや、違うよ。分析力、です。


 続く……。

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