第7話 能力の確認
もしかすると、ホントにごく僅かな可能性だけど、俺にも何らかの奇跡的な力があるのかも知れない。
そんなことを思ったのは、いま目の前で起きている光景があまりにも異様だったからだ。
ことの発端は、俺がいるトイレにやってきた男たちが、いわゆるアレ…………やらないかをやらないかとなってしまったことによる。
要はトイレ内で男どうしがイチャイチャし始めたのだ。
前世でも多目的トイレで性行為をして叩かれた芸能人がいたけどさ、トイレはそんなことをする場所じゃないよ。
「っざけんなぁぁぁぁぁぁ!!出ていけぇぇぇぇぇ!!二度と来んなぁぁぁぁぁ!!」
ちょっとイラッとした俺が、抱き合う男たちに向かってそう叫んだ瞬間、頭の中にまたあの時と同じ声が響く。
――――『厠神の拒絶』発動。
すると、絡み合う男たちが一瞬にして目の前から消えたのだった。
はぁ?
消えた?
俺が男たちが消え去ったトイレの中を呆然と見つめていると、トイレの外から何やら騒いでいる声が聞こえてくる。
今度はなんだと、俺がトイレの壁をすり抜けて外を除くと、そこには先程トイレの中から消えた男たちの姿があった。
んんんんんんん?
しかも、彼らの目の前には見えない壁のようなものが存在するようで、彼らはトイレの敷地内に入ってくることが出来ないようだ。
「なんだこれは!」
「どうしてトイレに入れねえんだ!」
見えない壁を叩きながら騒ぐふたり。
これは、トイレからつまみ出されたふたりが、もう中には入れなくなったということでいいのかな?
…………出禁ってヤツか?
まあ、仕方ないな。
トイレは睦み合う場所じゃないからな!
そこんとこ分かってるか!?
前世で炎上した芸人さんよ!
ぼんやりと出禁になった男たちの様子を見ていた俺は、ふと男たちがトイレから消える前に頭の中に響いた声を思い出す。
――――かわやしんのきょぜつはつどう。
あれって、どんな意味なんだろう?
一番先に気になったのは、「かわや」って言葉。
何か非常に重要な気がする。
かわや……かわや………かわや…………。
その言葉を何度も何度も繰り返し呼んでいると、まるで天啓でもあったかのようにとあるひらめきが舞い降りる。
ああっ、そうかッ!
「厠」ッ!
「厠」だ!
トイレのことだよ!!
ようやく気になっていた言葉の意味が理解できた。
喉の奥の小骨が取れたかのような感覚に、俺は喜びを覚える。
そして、それをきっかけに他の言葉も次々と理解できるようになる。
じゃあ、「しん」って神様って意味か?
「きょぜつ」は拒絶で、「はつどう」は発動ってコト!!
そうだったのか!
つまりは…………。
やっぱり俺ってトイレの神様なんだ………。
まぁ、幽霊疑惑を否定できたのはいいけどさ、よりによってトイレの神様だなんて…………。
厨二病的には、どうせなら「戦の神」や「炎の神」みたいに、こう、心を震わせるような神様が良かったのに…………。
トイレの神様かよぉ…………。
能力が云々よりも、自分が何に転生したのかを知って、俺はちょっと凹むのだった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
トイレの神様認定でした。
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