トイレの神様に転生した件

うりぼう

第1話 転生の厠神


 あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!


 俺は、トラックに轢かれて死んだと思ったら、いつの間にか異世界に転生していた


 な……何を言っているのか…………わからねーと思うが……。 


 俺も……何があったのか……わからなかった。


 頭がどうにかなりそうだった……。 

 思い違いだとか夢オチだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ


 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。


       ★★


 …………俺は思わずポル◯レフ氏の言葉を引用してしまうほど、異様なことに巻き込まれたようだ。



 周囲を見渡すと、仕切りもない十畳ほどの多きさの部屋に、レンガで組まれた腰掛けが設けられ、そこに十箇所ほど鍵穴のような穴が空いている。

 どうやらここはトイレのようだ。


 なぜ、トイレかと分かるのかと問われれば、今現在、人が次々とやってきて排泄をしているから。


 しかも、俺の目の前で。

 いや、ちょっとお前ら、何考えてんの?

 ここに人がいるんだけど?


 そう力説するも、どうやら彼らには俺の声は届かないし、俺の姿も見えていないようだ。

 俺が話を聞いてもらおうと、トイレから出ようとする人の前に立ちふさがったら、するっとすり抜けてしまった。


 俺は幽霊なのか?



 そんな人々は、仕切りもないトイレで、レンガに腰掛けては穴に排泄をしている。 


 これは古代のトイレだなと理解する。


 どうしてそんな知識を有しているのかは分からないが、俺はこの形のトイレを知っていた。


 イラク北部にある古代メソポタミア文明のテル・アスマルという遺跡で見つかった世界最古のトイレと同じものだ。


 人々は鍵穴に排泄し、水桶から柄杓で水をすくって流すというもの。

 

 紀元前2200年前に水洗のトイレが存在したことに驚きを隠せないが、それが現実に目の前にあることも信じられない 

 


 トイレを訪れる彼らは、映画で見た古代ローマ人のように体を布で覆っている。

 肩から斜めに布を纏っているあの格好だ。


 これがテレビなどの撮影じゃなければ、その格好からして明らかに現代とは違うよね。


 そして、俺が異世界転生したと確信した瞬間が訪れる。


 犬耳やタヌ耳姿の男たちがやってきたのだ。


 獣人キターーーーーーー!!


 うすうす、俺が生きていた世界とは違うかなとは思っていたところだったけど、もうこれは決定的だ。


 獣人たちの特徴である耳や尻尾が作り物でないことは、排泄の間にじっくりと見たから間違いない。

 いやいやいやいや、決して俺にそっちの気がある訳じゃなくてね、初めて見る獣人に興味があったからいろいろと観察したわけで…………。


 と、とにかく、ちゃんと頭の真上に耳があり、尻尾も身体につながっていたから間違いない。



 こうして俺は、異世界転生したと確信したのだった。


 ただ、問題がひとつ。

 

 俺は幽霊として転生したのか?

 あるいは魔物として転生したのか?


 それは誰にも分からない。

 聞けないからね。





 そうそう、女子のトイレ?


 壁を隔てて隣にあるが、俺は紳士なのでそちらは覗かないよ。


 もちろんね。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


毎日が暑くて、こんな話を書いてしまいました。


反省はしていますが、悔いはありません。

短い間ですがお付き合い下さい。


モチベーションに繋がりますので、★あるいはレビューでの評価をお願いします。 

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