第9話 裸の女?!

飛び立ってから暫く時間は流れ、日が沈みかけている。都会の街は建物が沢山あり、道路には車が常に行き来し、見たこともないほどの人の数に驚きを隠せないレイだった。


「はぇ〜、これが大都会の東京様ッスかぁ」


「...こうも広いと目星も付けられないな、さて、どう捜し出すか」


「そうだよ!どう捜すんだよ?」


「まず、エクソシスト共にはバレてないか、若しくは逃げ延びているに違いない。つまり人気の少ない所にいる可能性が高いだろうな」


「俺もそう思ってたぜ!やるじゃねえか!」


「キャー!」


街の中から悲鳴が聞こえる。よく見ると人が襲われている様だ。


「...厄介な事になりそうだ」


「とりあえず行ってみようぜ!」


接近すればする程、状況が理解出来た。裸の女が仕事帰りっぽいスーツ姿のOLに跨って噛み付いている様だ。周りには人集りこそあれど、ある者は携帯で撮影し、ある者は裸の女の局部を覗いていて、ある者は足早に現場を後にしていた。


ある程度降りて来た所で


「行ってこい」


「え?」


レイはライガーに振り落とされた。


ドシャ!


「イッデェェェ!あの野郎〜!腕折れたじゃねえか!」


レイは建物の屋上にいるライガーを睨んでいると、ふいに女の顔が目の前に出てきた。


「!!!」


栗色の長い髪と瞳の女がこちらを見ている。上に跨われている様だ。レイはまさかと思い下に視線を落とす。


「ハゥ!?!?」


レイは生まれて初めて女の胸と下の毛を見た。


「え、あ!あの!あの!!!」


レイがジタバタしようとした瞬間、両腕をガッシリ掴まれた。折れた方の腕が痛い。


「イダッ!は、離しギャアアア!!!」


女は大口を開けるとレイの首筋に噛み付いた。やけに鋭利な牙が生えていて、それが皮膚を軽く貫通して来ている。


「グゥゥゥッッ!このっ!」


レイは女の股を思いっきり蹴りあげると、女は軽く前に吹っ飛んだ。女は立ち上がりながら言う。


「ほ〜、お前、人間にしては力持ちだなぁ」


「(身長は俺より少し小さいから、大体170cmくらいの女だ...き、綺麗!)お、おいお前!お前は何者だ!」


「はぁ?まずはお前から名乗れ!」


「ああごめん...!俺はレイっつーんだ!灰狼と交じって奈落になったっぽい!」


「へー」


「へーって何だよ!名乗ったんだから名乗れ!」


女は少し考えると、何やら建物に目がいった様だ。


「俺の名はキャバクラだ!そうだキャバクラに違いないぞ!」


レイは目が点になって少しフリーズして答えた。


「き、キャバクラって何だそれ?!変な名前!」


「変じゃない!良い名前だ!殺すぞ!」


ライガーが二人の間に降りて来た。


「取り敢えず訳がわからない状況なのはわかった。そしてキャバ、、、キャバ子は俺達に敵意はあるか?」


「そうだったキャバ子だった!敵意はないが愛して欲しい!愛されたいんだ!」


2人はポカーンとしてしまう。


「と、取り敢えず敵意がないなら一緒に来て欲しい。ここに長居すればエクソシストが来るだろうからな」


「よし!良いだろう!付いてってやる!」


「レイ、お前は足に掴まれ。もう乗り慣れただろ」


「あーい」


「キャバ子、背中に捕まってろ、振り落とされるなよ。っと、その前にこれ着ろ。目の付け所に困る」


「おうおう!随分ブカブカだなぁ!ガハハハ!」


二人が捕まったと同時に空へ羽ばたいた。


下を見れば人がゴミの様にウジャウジャと集まって来ていたらしい。


「おー!下の方がキラキラ光ってて美しいなぁ〜!ガハハハ!」


キャバ子はジタバタと騒がしくしている。


「おい暴れるな!危ないだ...クッ!!!」


ライガーは殺気を感じ取り、緊急回避をした。レイは足元で焦って叫んでいて、キャバ子も同様に焦って叫んでいる。


「おいライガー!何のつもりだ危ねーな!」


「そうだ!お前は安全運転を心がけろ!」


「うるせえ!黙って掴まってろ!また来るぞ!」


ビュンッ!!!


「グッ!」


紙一重でかわした。


「(一発目は見えなかったが、2発目は、槍?!エクソシストに気取られたか?!)おいお前ら!しっかり捕まれ!飛ばすぞ!」


三人は急ぎ東京を後にした。


「ありゃ〜、やっぱり気付くのが遅れるとダメだねえ。逃げられちゃったかぁ」


「あの距離で紙一重なんて、やはり腕は良いんですね」


「こらこらぁ君ぃ、腕はってどゆ意味ぃ?」


「冗談はともかく、最近福島の方で奈落による事件と思しきものが発生、それに続き役所の爆発と同時に研修中だったエクソシストの惨殺、間違いなく奈落が一連の騒動に関わっているとみて間違いなさそうですね」


「役所の件が香ばしいよねぇ、犬神神社で死亡してた保護課のケースワーカーとぉ警察ぅ、それに続き役所の破壊と来たらぁ、足取りを隠す為の証拠隠滅だろうねぇ」


「僕もそう思います。そしてさっきのを見るに、奈落は組織的に動いている可能性が濃厚でしょう。仲間を集めて何をする気なのか...」


「何にせよぉ、東京で特異な奈落が現れた情報をいち早くキャッチしていた訳だぁ、うち(エクソシスト)もきな臭くなって来たねぇ」


「僕は仲間を信じています。きっと他に何か策があるんでしょう」


「君は真面目で情熱的だからぁダメなんだよぉ、常にゲーム感覚でいなきゃね」


「はぁ...それはそうと、とうとう決まりですね。また転勤ですよ」


「慣れたもんさ、場所はぁ〜...」


「福島県いわき市。そこに奈落がいる」


「上手く追いやれるかねえ?私達なんかでぇ」


「やりますよ、命に変えてでも」


そう言うと男達はその場を後にした。何か大きな物語が動き出そうとしている。

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