物音

遊bot

第1話 9月13日の音

部屋の中で音がする。

カサコソと小さな音がする。


それに気がついたのは眠る直前だった。

既に部屋の電気は消しており、暗闇の中に小さな音だけが鳴っている。


微かなその音の主を見失わないよう、全神経を集中させ耳を澄ましている。


体は強張り背中には嫌な汗が流れていた。


そんなことを知ってか知らずか、音の主は素早く部屋の中を動き回り続ける。


時には足元で音がなり、時には天井で音がなる。


少しずつ近づいていくるその音に、身の毛がよだつ恐ろしさを感じつつも、私は身動き1つ取れずにいた。


私にできたのはただ一つ。

その音の主が、決して私のもとに来ないよう願うだけだった。


そんな願いも虚しく、音の主は私のすぐ側までやってきて止まった。


かすかな音と気配で"そこにいる"とわかる。


心臓が煩いくらいに鳴っている。

少しでも動けば音の主も再び動き出すだろう。


布団を頭から被って知らないふりをしてやり過ごしたい。


でも、それをすると更に怖いことが起きるとわかっている。


そのため、私は勇気を振り絞ってスマホを手に取り、ライト代わりにして静かに音の主を照らした。


光に照らされた音の主を見て、私は絶望と恐怖に飲むこまれそうになるくらい、頭がパニックになった。


スマホの光に照らされたそこには、大きな黒いGがいたのである。

しかも何かを探るようにひたすらに長い頭の触覚を揺らしている。


と、その時だった。

Gは大きな音をたてて飛びったのだ。しかも私めがけて……。


私は世界がスローモーションに見えるなか、叫び声を上げてそれを避けた。

同時に布団から飛びたし部屋の電気をつけたのだ。


ああ、下の階の人ごめんなさい。でも許してください。私ほんとうにGが嫌いなんです。


私とGとの格闘は朝がくるまで続いたのだった。





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