燎の声劇台本置場

燎(kagari)

過去台本(どこかで投稿済)をアレンジ

A001_最初で最後の嘘


僕は嘘をついた。

大好きな君についた、初めての嘘。


僕は嬉しいよ。

僕が僕であるうちに、人生が終わること。

最後まで、君の手を握っていられること。


ああ、そうだ。僕がついた嘘の話だ。

それは君に「もう泣かない」って言ったこと。

弱虫だった僕が、君と結ばれる時に約束したこと。

あれから、一度だって泣かなかったのに。

最後の最後で、破っちゃった。


嘘が嫌いなのは知っているけれど。

許してくれ、なんて言わないよ。

怒りでも、悲しみでも、どんな形でも

僕のことを覚えていてほしいから。

……なんて、わがままだね。

情けないから、忘れてよ。

大丈夫。

僕は、もう十分すぎるほど幸せだったからさ。


僕さ、君に、好きとか、ありがとうの気持ちを

もっとちゃんと伝えたかった。

恥ずかしくて、なかなか言葉にできなかった。

君になら、言わなくても伝わってくれるかな、

なんて自分勝手な期待してさ。

今からでも遅くないのなら、1度だけ、聞いてくれるかな。


僕は、君が好きです。ずっと、これからも。

今まで、本当に、本当に……ありがとう。

どうか、僕が羨んで、化けて出るくらいに、幸せになってよ。


……あぁ、もう時間みたいだ。


君まで泣かないでよ。

ほら、笑ってよ。


うん。やっぱり。

……君で良かった。


__________


某アプリで、初めて投稿した声劇台本の改良版です。

ちょっとバズった、最初で最後の台本。


生命の終わり際にそんなに喋らんやろ……

と思いながら書いてしまいましたね。


綺麗な世界に憧れた、何も知らない、若かりし日の私が書いた台本です。

心が汚れた今はもう、書けないですね笑


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る