第3話 二次元コミュ
「二次元コミュへようこそ!」
暗闇の中から女性の声が聞こえた。しかし、どこから聞こえているのか見えない。
「みんな、生きてるか???」
「俺は大丈夫だあ」「俺も」「私もですう」
暗闇の中でも全員が同じところにいることを確認できた高生は少しホッとした。二次元の世界でみんながばらばらになってしまったら大変だからな。
「良かった。全員同じところにいるんだな。でも、本当に二次元に来たのか??」
「はい。もうここは二次元の世界です」
「あ、あなたは??」
進向が先程から聞こえてきた女性の声に聞いた。
「私は二次元ナビゲーターのスズコです。皆さんを快適な二次元の世界にご案内します」
「スズコさん、俺たち、どこにいるんですか?」
「皆さんは、今、二次元コミュへ高速で向かっているのです。二次元コミュっていうのは、二次元の世界のコミュニティセンターみたいなものです。全ての二次元の世界のキャラクターは、ここに入ることができて、他の作品のキャラクター達とも交流することができるのです」
よく分からないことを淡々と述べられ、高生たちは頭が混乱してきた。
「漫画やアニメには、いろいろ作品があると思いますけれども、その作品のキャラクターが、別の作品のキャラクターと合流するのです。まあ、最初はお食事とかお出かけ程度です。でも、そこで仲良くなれば、付き合って結婚まで持っていけるわけです」
「???」
「まあ、着いてから話しましょうか。あと1分ほどで着きますから」
高生たちは、スズコが言っていることがよく理解できなかった。ただ、二次元コミュってところは、全ての作品の二次元キャラがいるらしいが…。
「みなさん、着きましたよ」
スズコがそう言うと、ある一点の光の中に吸い込まれていった。また、高生たちの意識が途絶えた。
「ここは、どこだ??」
高生が立ち上がると、そこには、高生が見たこと無いほどに発展した巨大都市があったのである。上を見上げると、ドーム状になっていて、外が透けて見えないようになっていた。そして、人がたくさんいる。それも、見覚えのある人たちばかりである。
そうして呆然と立ち尽くしていると、人型のロボットが高生の視界に入ってきた。高生より、少し小さいそのロボットは、女性の体つきをしていて、背面にはロングヘアが形付けられている。
「高生さん、目が覚めましたか??」
「あ、あなたが……」
「そうです、私が二次元ガイドのスズコです。皆様を快適な二次元の旅へご案内します」
スズコさんってロボットだったんだ。くそ、俺の新しい性癖が生まれてしまうじゃあないか!!
「あ、みなさんも目が覚めたみたいです」
後ろを見ると、三人も立ち上がって周りを見ていた。みんな「ここはどこだよお?」と叫んでいる。
「ここは、二次元ですよ。みなさん。まあ、大丈夫です。私が今から案内いたしましょう」
スズコに続いてみんな歩いていった。しかし、道中で見た景色は、とても、現実とは思いがたかった。
目の前に、二次元のキャラ、実際に漫画で見たキャラたちが、本当にいるのである。本当にどのキャラも別作品のキャラ同士で話している。いつもの高生たちなら、興奮して大きな声で叫び、「二次元に来たぜー!!!」とか言って騒ぐのだろうが、そんな声も出ないくらい驚きに満ち溢れていた。
「な、なあ、あのキャラ、あの有名漫画家の作品に出てくるヒロインの石川フミちゃんだよなあ、、、ほ、本物だ、、、」
「でも、よく見て、フミちゃん、別の作品の男と話してるよ……」
「あ、手つないだ!!!浮気だ浮気だ!!!」
「浮気ではありませんよ。あれが普通の姿なんです。作中の人と結婚することなんてあまりありませんからね。あ、みなさん、着きましたよ。さあ、ここにお入りください」
スズコがそう言うと、全員で公園らしきものの近くにある、小さな建物の中に入った。中には、長机が二つ並べられており、スズコが、それに座るよう言った。全員が、座ったあと、スズコは、説明を始めた。
「皆さんは、推しと結婚する。という使命があると思います。皆さんは二次元に推しがいるでしょう。その子は必ずこのコミュニティの何処かにいるのです。そして、話しかけて、好感度を高めていくのです。ギャルゲー?とやらと同じシステムです。探して、仲良くなって、付き合って、結婚。まあ、いちばん大切なのは、勇気を出して「こんにちは!」って言うことです」
「あとは、勇気だけか、、、」
高生が呟くと、スズコは首を横に振った。
「いいえ。そういうわけではありません。推したち、彼女らは、何かしらのミッションを提示して、君たちを試すかもしれないんです。そして、そのミッションは一人で出来るとは限りません」
「つまり、どういうことだ?」
高生が聞くと、スズコが力強くこう言った。
「一人一人で、行動するのではなく、全員で協力して一人一人を結びつけていかないと、四人で成功するとは無いでしょう」
「ほお、つまり、誰か一人のためにみんなで助け合う。ということですな?」
「はい、そういうことです」
「じゃあ、計画を練らないといけないのか……」
「なあ、とりま二次元コミュ探索して、見つけた人の推しからアタックするのはどうっすか?」
「確かに。時間がない俺たちにとっては、それであたっていくのが一番だ!」
それを聞くと、スズコは笑って、
「ふふふ。決まりですね。それではいきましょうか!」
と言い、部屋の扉を開けた。
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