第2話 神社にて〜陰キャたちの願い〜

「行ってみねーか」

 信のその一言に連れられて、みんなで鳥居へと続く階段を登っていった。信は、軽々と階段を登っていくが、他の三人は、20段登るだけでも精一杯なのであった。


信以外の三人はろくに運動もしていないだらしい男たちであったが、信は、一応サッカー部に入っている。高生が知るに、かなりの凄腕プレイヤーらしいが、本人曰く、「陽キャたちと玉転がしで、遊んでいる暇はない」と言っては部活をサボり、ゲーセンに通っているのである。


 「着いたァ!!」

 一人でどんどん登っていった信が叫んだ。おいおい、俺たちまだ半分しか登ってないんですけどー!


 高生たちが、ようやく階段を登り終え、ハァハァゼェゼェ苦しんでいると、先に鳥居の中に入っていた信が、口をあんぐりと開けて、高生たちの元へとやって来た。

 「やべえぞ。この神社、、、」

 「ハァハァ……なんだよいきなり……こっちは……きついんだよお……」

 義志斗が喘ぎながら答えると、信が目をかっぴらいてこう言った。

 「か、神様がいる」

 またまた変な冗談を、と高生は思ったのだが、信の目は、それが本当だ!と訴えていた。


 三人の呼吸が楽になると、信に連れられて鳥居の中に入った。そこで高生たちは驚くべき光景を見た。御神前から、光がさしていた。手水舎は無く、短い参道にある小さな御神前。それが、不思議で奇妙な光を放っていた。信は間違いなくこれが神だと思っているらしい。


 「なあ、お賽銭をあげてみないか?」

 かなり気味が悪かったのだが、高生がそう切り出した。そして四人は財布から10円ほど取り出し、お賽銭をあげた。鈴がついていなかったので、その場には彼らの拍子音が響き渡った。


 そんな音に反応したのか、光が呼応するように強まったり弱まったりしている。何か来る!四人は皆そう感づいた。そして、身構えた時、御神前から、煙が湧き、四人の視界を妨げた。そして、煙が明け、そこには、老人が賽銭箱に座っていた。


 「ホッホッホ。久しぶりのお客さんですなあ」

 四人は急な出来事に困惑するも、高生は勇気を出して、

 「じいさん、誰ですか?」

 と尋ねた。

 「ホッホッホ、私は神じゃ。この世にあるもの森羅万象を作り出しているのはこの私なのじゃ」

 「ま、まさか、冗談はよして、」

 「ワシの足を見るが良い」

 自称神の老人が言う通りに高生は足を見た。すると、驚くべきことに、老人には足がついておらず、宙に浮いているようだった。

 「ホッホッホ。驚いとるのお。これが証拠じゃあ」

 神は四人をからかうことができて嬉しいのか、上機嫌であった。信は自分の予想が当たったからか、ドヤ顔をしている。すると、ここまで何も話していなかった義志斗が口を開いた。

 「で、何で神様が俺たちのもとに現れたんですか?」

 「ホッホッホ。それは、お前たちに一つだけ願いを叶えるためじゃ」

 「?!」

 「ワシはお前たちに悪いことをしてしまってのお。お前らを陰キャにしすぎてしまったのじゃ」

 「どういうことです?それは?」

 「ホッホッホ。ワシは神じゃから、生命体のことは全て私が決めることができるのじゃ。唯一決められないのは、人の意識、性格くらいじゃの」

 ぼーっと聞いていた四人だったが、なにかに気づいた進向が、こう言った。

 「まさか、俺たちがこんなに落ちぶれてしまった理由っていうのは、、、」

 「そうじゃ。全てワシのせいじゃ。ワシが、お前たちの人生をハードモードにしすぎてしまったのじゃ。そうじゃのう、例えば、モテにくいように設定したり、陰キャになるようにしたりな」

 その話を聞いていたとき、四人は、顔が怒りでいっぱいになった。まさか、こんな爺さんに自分の人生を決められていたなんて…。

 「ふざけんなよ!まじで!どれだけ俺が、、、俺たちが、、、苦しい思いをしているか……お前には分からないだろうなあ!!」

 高生は喉から声を振り絞って出した。すると、神は、へらへらとして、悪びれのない表情で、

 「悪かった~悪かった~。でも、今日はお詫びに何か願いを一つ叶えてやるのだ」

 と言った。それを聞いた途端、義志斗が、目をキラキラさせた。

 「じゃあ、、、願いをいつでも無限に叶えられるようにしよう」

 それを聞いた神は呆れた様子で

 「難しい願い事は、それなりのリスクが伴うぞい。「願いを無限に叶えられる」は、人の体を生贄に取るっていうレベルじゃのう」

 と告げた。やはり、無茶は出来ないっぽい。


 しばらく四人は考えていたが、高生がこう呟いた。

 「二次元に行けば、成功できるんじゃね」

 「ホッホッホ。その願いでいいんじゃな?!」

 「?!」

 まさか、聞かれていたとは。独り言を言ったつもりだったのに。しかし、その願いにメンバーは同意した。

 「なんだよそれ、おもしろそーじゃん」

 「それでいこーぜ!高生」

 口を揃えて言う。

 「それじゃあ、二次元に行きたい!で、お願いします」

 「ホッホッホ。それじゃ、願いを、、、と言いたいところだが、一つ条件がある」

 「なんだ??」

 「二次元に行って、一年以内に彼女を作って結婚まで持っていくことじゃ」

 それを聞いて、高生は不満そうに嘆いた。

 「なんでだよそれ。きっついな」

 「ホッホッホ。これは無茶な祈りに対するリスクじゃ。受け入れてくれ。まあ、二次元にはお前たちの好きなあ~んなキャラやこ~んなキャラがたくさんいるだろう。それを「みんなで協力」して、花嫁にするのじゃ。ちなみにできなかったら、退場していただくのじゃ。それじゃ、二次元に行くと良い」

 「ちょっとまってくれ!!まだよ分からな……」

 「大丈夫じゃ。ガイドつけるからのお。それじゃあ楽しむのじゃ」

 「うわあああ!!」

 そんな響声がして、四人は気を失った。


 はっ。ここはどこだ?高生が目を覚めたところは、真っ暗闇の中だった。え?ここは?どこ?そんなことを考えていると、暗闇から声が聞こえた。


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