第172話 中二病といえば黒い翼ですよね

 過分に中二病なキーワードを宣言すると同時に、黒い稲妻が再度発生してミラさんの衣装に降り注ぎます。

 ドレスに降り注いだ、斬りつけるような稲妻が刻むのは夕陽の様にくらい血の色をした薔薇の紋様。

 手足の拘束具へと墜ちる雷鎚は鈍色に光る装飾と縛鎖を黄金へと変えていきます。

 あー、良いですねぇ……。

 やっぱり黒い服に差し色を入れるなら赤と金、もしくは青と銀ですよねぇ。

 変化としては細かい変化ですが、それでも刻まれた薔薇と黄金の鎖によって強化変身の前とは受ける印象がかなり変わりますね。

 変身を終えたミラさんは手のひらを広げたまま身体の前でクロスさせるようなポーズを……って、これ狂気のマッドサイエンティストさんのポーズとほぼ一緒じゃないですか?いや、確かに彼も相当な中二病ではありましたが!

 『偽装再臨アドヴェントゥス・ファルソス!魔女、マリオネイター・メシアン・グリムリーパー・ジ・エンド!』

 そして、変身完了の宣言と同時にミラさんの背中から漆黒の翼が生えて辺り一致面に黒い羽が舞い散りました。


 ……はっ!

 危ない危ない、あまりの中二病的な業の深さに一瞬意識が飛んでいました。

 というか私の根源だからこそ理解できるんですが、「ジ・エンド」の部分、多分意味とか一切無いですからね?カッコ良さそうだからつけたってだけですよ絶対。

 羽にしたって、人間が翼の羽ばたきで空を飛ぼうと思ったらこんな研究室に入るサイズの翼では無理なはずなのでアレも多分飾りか何かだと思うんですよね。

 全く意味のない名前の追加要素に、全く意味の無さそうな翼!

 うーん、完璧ですね!

 何が完璧なのかは私も実はよくわかってませんが、完璧だという謎の納得感を感じています、はい。

 「……えっと、セヴンス。どう……かな?」

 ……恥じらいながら窺うような視線を向けてくるミラさんという要素を得て、完璧を超えた完璧が存在するという事実に私は涙を流しながらサムズアップを返す以外に答えるすべを持ちませんでした。


 しかし、偽装根源オリジンフェイカー狂奔調律リチューニング・オーヴァーロード……ですか。

 「前回の二重根源・再覚醒デュアルオリジン・リ・イグニッションと言い、今回のキーワードといい、めちゃめちゃセンスが私寄りなんですがこれって誰が考えてるんです?」

 流れるように取り出したスマホでミラさんの姿を激写しながら、ふと思いついた疑問を呟いた所、雛わんこが嬉しそうに微笑みました。

 「んと、セヴンスさんが好きそうな単語でそれっぽくした。あ、ラテン語はわからなかったから英語で」

 ……地味に雛わんこって私のこと事好き過ぎませんか?

 というか、今ふと冷静になって考えたんですが私未成年に手を出しすぎじゃないですか!?

 え?外見がその未成年のお相手達よりよっぽど年下に見えるからセーフ?いや、その理論はどうなんでしょう?


 「で、ミラさんは何が出来るようになったんですか?」

 とりあえず、強化変身というからにはどのへんが強化されたかチームリーダー(にされてた私)としては確認しておく必要があります。

 「えっと、あ!この翼は私の思い通りに動いて、実は盾の役割を果たすみたいね。こう見えて羽の1枚1枚がすごく細かい障壁になっててかなり頑丈……うん、見た目に反してかなりの硬さになってるみたい」

 ほほう、中二度強化アイテムにしか見えないその翼に実用性があったとは……。

 まあ、何の効果もない翼が生えてても邪魔なだけですからね。

 しかし、盾になるっていうのは良いですね。何処かのゼロでカスタムな新機動戦士

の翼部分も大気圏突入時には盾的なお仕事をするんでしたっけ?

 なんにせよ、ミラさんが安全に戦える可能性が上がるのは喜ぶべきことだと思います。

 

 ……いや、翼が盾になるってのは解かったんですがそれだけじゃないですよね?

 「えっと、あとは……ヒナ、普通に魔法を使えば効果が出てるんだっけ?」

 「ん、再臨時限定のなら。普段のは変わらない」

 ほほぅ、既存の魔法が勝手に強化される的な強化スタイルでしたか。

 まあ、確かに毎回強化形態が増える度に新しい魔法を作るとか結構しんどいですからね。

 「じゃ、じゃあとりあえず……。英霊召喚プリズィーフ・ギャライーチスコゴ・ドーハ私の最高の仲間達ドラーゴイ・エインヘリヤル!第二の英雄・闇を紡ぐ語り手!クリーピーパスタ!」

 古びたぬいぐるみを媒介にミラさんが作り出した如月さんの写し身が顕現します。

 

 出ましたねミラさんのインチキ魔法!

 操作がマニュアルな上に出力自体は下がってるとは言え、他の魔法少女の魔法を特に訓練も無しで使えるっていうのはかなりのぶっ壊れ魔法だと思います。

 ちなみに、一番使いづらい魔法少女は誰でしたか?と質問した所「セヴンスをセヴンスみたいに戦わせるのが難しすぎて……」と悲しい答えが返ってきました。

 私のみを操るならともかく、私と誰かを組ませて戦闘をさせようとすると選択肢が有りすぎて逆にしんどいみたいな状態になるらしいです。ちょっと悲しい。

 

 で、召喚されたパスタネキなんですが……。

 まずですね?受け取ったはずのぬいぐるみがいつの間にか精巧なアンティークドールへと姿を変えています。

 戦闘法衣バトルドレスの方も、被った三角帽子のつばからジャラジャラとアミュレットが垂れ下がっていたり、ローブの各所にシルバーなチェーンのアクセサリが生えてたりと……、その……。

 「如月さんが中二病に染まってらっしゃいますね……?」

 ……はい。

 というか、理珠さんも地味に中二病が何たるかを理解し始めているのはちょっと問題だと思います。

 理珠さんは理珠さんのセンスのままで居てくださいね……?


 「で、この状態で呼び出す都市伝説の方もアレです?私の根源の影響受けてたりする感じですか?」

 「たぶんそうなる」

 私の疑問に対して変身者より先に答える雛ちゃん。

 ちなみに、この部屋で唯一私の根源を把握していない九條さんは「なんでこんな中二病デザインになるのか意味不明なんですわ、お?」と混乱してらっしゃいます。


 「あー……、実演しようと思ったんだけど良くない結果になりそうだからやめちゃって良い?ミラ、ヒナの研究室を滅茶苦茶にしたくないの」

 おっと、ミラさんからも魔法自体のお披露目はやめといたほうが良さそうだという提言が来ましたね。

 「一応確認ですけど、どんな感じになりそうです?」

 「……多分、取り憑く」

 ……やめときましょうか。

 心霊現象とかいう得体のしれないものじゃなくて魔法の産物だと解かっているので怖くは無いんですが、取り憑くって言うことは絶対なにかデバフ付くやつじゃないですか。

 ただの強化形態お披露目でそんな目に遭う必要は無いですよね?


 「ふむ、方向性は理解致しました。つまり、根源共有状態でのみ行使出来る魔法が強化され、セヴンス様の根源の影響をより強く受けるようになる変身……。との理解で問題ございませんでしょうか?」

 まあ、要約すると理珠さんの言った通りの内容ですね。

 あれ?これミラさんの魔法で私を召喚したらどうなるんですかね?

 私には使えないと言われた今回の強化ですが、もし適用可能ならどういった姿になるのか……が見られたりする可能性があるのでは?

 あ、でもなんか暴走する可能性が云々言ってましたっけ?

 仕様にない運用方法とか絶対ヤバいヤツなんでやめておきましょう。

 

 「しかし、雛ちゃんも良くこうやってポンポン強化アイテムとか思いつくものですね……」

 思わず漏らした私の感嘆の声に雛わんこは満面の笑みを浮かべて……。

 「えっと、研究をリスさんにも手伝って貰った。ヘビさんと合わせて三人で意見を出し合えるし、一人の時よりすごく楽しい」

 なんて楽しそうに答えてくれました。

 これ、イツァナグイのストレス解消にも一役買ってそうですね。

 ……って、トゥクヨミトルちゃんも訪ねてくるんですかここ!?



☆★☆★☆★☆


なんか、カクヨム公式の「女性主人公限定!小説ランキング【TOP50】」とかいうのに47位でギリギリランクインしました。

これもひとえに皆さんの応援のお陰でございます。

今後ともご贔屓にして頂けるとその、とてもありがたいです。

とりあえず4期ももうすぐクライマックスですのでお楽しみいただければ幸いです。


次回更新予定は12月22日21時の予定です。

2日ほど早いですが、クリスマス回と参りましょう。

今年も暮れが近づいてまいりました。

寒さも厳しくなってきましたので、皆さんも体調にはお気を付け下さい。


次の更新が楽しみだと思われた方は、良いねコメント★拡散等で応援していただけるとありがたいです。

よろしくお願いします。




最新話までお読みいただき、感謝致します。


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