中二病の魔法少女ゾンビ ～心はアラサー、戸籍はアラフォー、そして体はロリゾンビ～

第164話 動揺する世界

　まあ、いきなり宇宙人かつ正体不明な精神生命体が地球に飛来してましたとか永続失せ物探し魔法とかゾンビが人間として生き返ることができるとか言われたら混乱しますよね。

　予想していたことではあるんですが、世界中大混乱です。

　と言っても、基本的に一般人に出来る事とかは何も無いので大忙しなのは突然降って湧いた異星人の来訪に何から手を付けていいやら状態で議論が紛糾しまくって何も進まない政府のお偉いさんと、動く死体（リビングデッド）から人権を剥奪するぜ宣言をしたフランスや世界魔力研究機構（WMRO）みたいな奴らと、なんか桁がよくわからないぐらいの再生数になってて、それが増える度に呼び出されて探し物をして回ってるトゥクヨミトルさんぐらいでしょうか？

　政府のお偉いさんに関してはシアちゃんが「めんどくさいのじゃー」の一言でコンタクトをシャットアウトしたのでそこまではって感じでしょうけど。

　ああ、『必見！失せ物探し魔法の上手な使い方！』とか『失せ物探し：どれぐらいまで自宅周辺と認識されるのか実験してみた』みたいな動画が雨後の筍みたいな勢いでぽこじゃか湧いて出たのは流石に笑いました。

　個人的に気に入ってるのは『トゥクヨミトルちゃん観察日記』ですね。

　初日は捜索物の手前まで誘導して「ここ！ここ！」って主張してたリスさんが3日後にはそれの入った箱をゲシゲシ蹴って「オラっ！ここに入ってんだよ！」みたいな態度に変化してるのがツボでした。

　イツァナグイ曰く、炒ったカシューナッツがお好みだそうなので労いも兼ねて今度渡しておこうと思います。

　そういえば、実績がほとんどないくせに声と顔だけは大きかった世界魔力研究機構（WMRO）は近々解体になるようです。

　さもあらんって感じではありますけどね。

　一方でフランスはこの期に及んで動く死体（リビングデッド）に対しての強硬姿勢を貫いています。

　……というか、多分大統領の主な支持団体がそういう姿勢なので変わりたくても変われない感じでしょうか？

　そのせいでEU内で立場が悪くなっているらしく、昨日出現した巨大なワイン樽型の魔物相手になかなか有効打を与えられず、復興に向けて踏み出したパリが再度破壊される憂き目にあってました。

　まあ、ほぼ間違いなく近々リコールされると思います。

　ああ、動く死体（リビングデッド）に関してなんですが呼び名が変わりました。

　日本政府的には魔力性疑死態変異者が正式名称になるそうです。

　……長ったらしいので公式文書以外では当然誰も使いませんが。

　一般的には、テロゾンビと呼ばれていた重犯罪者達を動く死体（リビングデッド）、一方で復活を目指して魔物との戦闘を行う私や3人娘みたいなのを蘇えりし者（レヴナント）と呼ぶみたいです。

　……動く死体（リビングデッド）はともかく、蘇えりし者（レヴナント）の方は私が魔生対のぺけったーアカウントを通して提案してみただけなのに速攻で定着して驚きましたが。

　ああ、ぺけったーといえばトレンドに#セヴンスの正体　ってタグが表示されてたんですが何だったんでしょうね？

　確認しようと思ったらその日はミラさんとか雛わんこからの構ってアピールがすごくて遊んでたらそのまま寝てしまったので見られなかったんですよね。

　あ、翌日の#その時のセヴンス様　タグは誰が発信者か解りやすかったのと、なんか開くのが怖かったのでスルーしました。

　エゴサするのは嫌いじゃないんですが、偶に変な流れに巻き込まれてることがあってそういう時はしばらくSNSと距離を置くことにしています。

　んー、あとは話題になってることといえば最近作られた日本のNPO法人が怒涛の勢いで魔力保有者の扱いが悪い地域に乗り込んで支援やら政府への改善提案とかを行ってるって話ですね。

　蘇えりし者（レヴナント）を含む非人道的な扱いを受ける魔法少女の保護を掲げたらヤバい額の寄付金が集まったとかなんとか……。

　団体名は「星の遺志」って辺りで発足理由がわかる辺りがアレですが。

　ちなみに、所属の方曰く正式には「☆の遺志」らしいんですが☆記号が公文書に使えないらしくしょうがないので漢字にしているそうです。

　なんて話を清嶺さんにした所、「これ私が生きてるって判明したらものすごく微妙な顔されちゃうんじゃないかな！？」とのたまっておりましたが普通に涙流して喜んでくれると思いますよ？

　で、今何をやっているかと言うと……。

　【みちは　ぬかるみ　あしは　しずむ】

　世界がアデリーさんの嘆願に答えて、アスファルトが泥のように液状化し漆黒の毛並みを持つ巨大な猪型の魔物の足を止めます。

　「さすがアデリーちゃん！いいタイミングです！」

　オフィリアさんが指差すと同時に、ぬかるみと化したアスファルトに埋まった右前足へと真っ赤な帽子を被った子鬼が血まみれの斧を振り下ろして深手を与えました。

　思わぬ痛手に巨猪は怒り狂って身を捩り、身体能力に任せて無理矢理アスファルトの沼から足を引き抜いて脱出します。

　猪のくせに頭は悪くないのか、自らを傷つけた子鬼を無視して攻撃の起点のなったアデリーさんへと突進しようと四肢に力を込めたところで……。

　ザクッと、刺々しくて刺されたらそれはもう痛そうな黒いロングソードを魔物の尻へ突き刺すエルナさん。

　「誘いの一刺（プロヴォカツィオン・アインスティッヒ）」

　突き刺した剣から発現した魔法は痛みを何倍にも増幅させ、あたかも重症を負ったかのような痛みを与えるもの……らしいです。

　まあ、ゲームで言うタンク職バリバリですからね彼女。多分ヘイト値を上げてタゲを自分に固定させるための魔法だと思います。

　「ふむ、御三方とも危なげない立ち回りですね。まだ余力を残している様子でございますし、わたくし達の助力は必要なさそうですね」

　理珠さんの言葉に深く頷きます。

　はい、蘇えりし者（レヴナント）3人娘の日本デビュー戦を観戦に来ています。

　しかしなんというか、黒い剣と巨大な盾を持つ白銀の女騎士のエルナさん、純白のローブに身を包み捻れた杖を振るって様々な妖精を指揮するオフィリアさん、そして、漆黒のアカデミックドレス（欧米で学生が卒業式とかで着てるアレ）を身に纏い2人を支援するアデリーさん。

　この3人、並んで戦わせるとものすごく絵になるんですけど、これ案外差別されてたー、ひどい扱いだったーって言ってた地元の方でも言い出せなかっただけでそれなりにファンが居たんじゃないですかね？

　ぶもおぉぉぉぉ！とでかい鳴き声がしたので再度3人娘の方を見てみれば、助走をつけた巨猪の突進をエルナさんが盾で受け止めている場面でした。

　「えっと、何でしたかね……。鉄の塊は皮装備の動物に遅れは取らないとかなんとか」

　あ、これ九條さんが一生懸命仕込んでたネタですね。

　というか、全長20メートルはあろうかという猪の突進を盾で受け止めて微動だにしないとか何気に凄い事やってません？

　【すべては　おもく　うごきは　とまる】

　再度足を止めた猪に畳み掛けるようにアデリーさんがデバフをかけます。

　……多分ですけど、重力制御的な魔法に見えるんですが思いっきりエルナさんも範囲に入ってますけど良いんですかね？あ、重力が多少強くなったところで元々あまり動かないスタイルだし問題なしと。

　「おいでなさい、ブラックドッグ達」

　そして、とどめを刺すべく現れる雷を纏った4頭の黒犬。

　「ボールライトニング、斉射！」

　オフィリアさんの指示とともに放たれる4つの球電が巨猪の身体で弾け、臓腑を焼き尽くします。

　よし、これで彼女達も魔物と戦う犯罪歴のない（きれいな）蘇えりし者（レヴナント）として映像を公開できますね。

　しかし、ここ数日ドラゴンが出て来ませんでしたが……。

　次はどんな手を打たれるのでしょうか？

　正直、後手に回るのもそろそろ飽きてきたので攻める側に行きたいんですよねぇ。

　……国家機密チームの頑張りに期待ですかね？

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えっと、前話のシアちゃんの失せ物探し魔法は効果発動条件が自宅周辺にあるもので、自分の所有物と認識しているもの。と記載してますのでそこまで便利ではないです。

なので、会社で無くした書類を探すとかは会社が自宅と繋がってたりする社長とかじゃないと探せない感じです。

混乱する世界と無視するシアちゃんと暴れまわるNPO。

ついでに3人娘の戦闘回でした。

次回は悪人チームのどうしてこうなった回です。