閑話 ハロウィンの夜に
「優希さん、ハロウィンの、10月31日の夜は空いて居られますか?」
「はい、理珠さんの頼みなら何が有っても空けておきますが、どうしたんですか?」
む、来ましたね季節恒例の奴ですよね。
流石にクリスマスバレンタインと2回経験してますから騙されません。ハロウィンは魔生対でどんなイベントやるんでしょうね?
「ええ、ハロウィンで仮装するのは当然でございましょう?でしたら、優希さんが変身した状態のままでもそう目立たないのではないかと考えたのです。ですので……、ハロウィンデート、致しませんか?」
ふむふむ、なるほど、デートですか。
……?
あれ?魔生対主催のイベント参加のお願いじゃなくてデートのお誘い?
デデデデデデート!?
いや、夜の運動会でくんずほぐれつしといてデートごときで取り乱すなって話ではあるんですが、実は初めてなんですよ!理珠さんとデートに行くの!
なにせ、私が変身解除出来ない都合でやたらと目立ちますからね。
この銀髪がですねー、ウィッグもつけさせてくれないし染めさせてもくれないんですよー。
根源に紛れてるシアちゃん成分、こだわり強すぎませんか?
いや、そんなことはともかくデートですよデート!
「します!いきます!例え死んでもハロウィンですし化けて出て生きます!……いや、もう死んではいるんですが」
私の定番ネタに、理珠さんはクスリと上品に笑って……。
「では、当日を楽しみにお待ちしておりますね?」
と、楽しそうな声とともに極上の笑顔を私に向けました。
くっそぅ!顔と声が強いなぁもう!
☆★☆
まあ、そんなこんなでハロウィン当日です。
ハロウィンとは、死者が戻って来る北欧版お盆であり、戻って来る死者に連れて行かれないように自分たちも死者と同じカテゴリーであるお化けに仮装する。というお祭りです。ドイツのヘビメタバンドの事……でもありますが、今回はそっちじゃないです。あ、でもPower辺りは名曲だと思います。
で、そんなハロウィンの日ですからコスプレして当然の日なんですよ。
まあ、私はそもそも『魔女』ですから?変身状態になってしまえばコスプレなんて必要ないんですけどね。
大丈夫、今日だけは異常に質の高い『魔女セヴンスのコスプレ』で押し通せます。
さて、で……ですよ?
流石に超クオリティの魔法少女が2人並んでるのは目立ちすぎるって話でしたので、理珠さんは変身を解いて普通にコスプレしてくるって話になりまして。
何のコスプレするかも教えてくれないまま家政婦さんとお部屋に籠もってそれなりの時間が経過しました。
うーん、雪女……だと普段のイメージとあんまり変わらなすぎるし、天女……だと神々しすぎますし、というかゴッスゴスのゴスロリ衣装の私と並ぶんですから日本妖怪はやらない気もするんですよねぇ。
……お、どうやらお着替え&メイクが終わったみたいです。
見せてもらおう、コスプレする理珠さんの性癖とやらを!
「えっと、どうでしょう?着慣れて居ない衣服でございまして……。わたくしに似合っておりますでしょうか……?」
……はい死んだー!今、私が生きてたとしたら間違いなく死んでるほどの衝撃が胸に走りましたよー!
なにこの、何?天使ですか?
「あー、えっと、ミラさんのウェディングドレス……ですね?完璧に似合いすぎて神様でも降臨したんじゃないかと思いました」
そう、純白のウェディングドレス姿だったんですよ!
まあ、ミラさんの
あと、流石に胸に結晶ぶっさすわけには行かなかったのか代わりに大きなクリスタルのペンダントをつけています。
アッシュブロンドの髪はウィッグですかね。流石に理珠さんのキレイな黒髪を染めて戻してーなんてしたらもったいないですし。
「わたしもその、着慣れない服装と靴でございますので……。優希さん、腕を貸していただいてよろしいですか?」
そして、自然な感じで腕をからめて体重を預けてくる理珠さん。
あー、だめだめ、ダメです。これからデートの予定が入っていなかったら即、
持ってくださいね私の理性、貞操観念10倍だー!
えー、そんな感じで私の理性がガリガリ削られるのを楽しそうに眺められながら2人でハロウィンの街へと繰り出しました。
いや、流石に水流崎のお家からここまでは車での移動でしたけどね。
しかし、ハロウィンもいつの間にこんなお祭り騒ぎするイベントになったんですかね?10年前とかって渋谷で若いのが騒いでるなーぐらいで話が終わってた気がするんですが……。
しかし、これだけコスプレした人が歩いてるのに「○○のキャラの□□ですよね!?一枚いいですか?」みたいな声を掛けられない事にちょっと違和感を覚えてしまう悲しきオタクのサガが……。
あ、ちなみに二度見はめっちゃされます。しかも二度目はだいたいガン見です。
そりゃもう、こんな美人さんがウェディングドレス着て自分より頭一つ分小さいゴスロリ少女をに連れ回されてるのが注目を集めないはずがありません。
いいでしょー。この美人さん、私の彼女なんですよー?
仲の良さを見せつけつつ、色んなお店のハロウィン限定アイテムを集めながら歩いていると、私達と同じぐらいみなさんが視線を向ける2人組を発見しました。
えっと、片方が三角帽子にマントに……一般的な魔女のコスプレと見せつつ、相方と反対側の腕に抱えたくまの人形でクリーピーパスタさんのコスプレだとわかる感じのアレで、もう一人が……。
桜色のドレスに、特徴的な星をあしらった魔法のステッキを持った……って待ってください!
これ、超絶高クオリティのコスプレ衣装を纏った一般人になりすました御本人ですよね!?
って、よく見たらパスタネキのコスプレイヤーも咫村崎センパイじゃないですか!
……あ、いや、でもこういう日でもないと初代魔法少女は死んだことになってる清嶺さんはお外を大手を振って出歩けないんですよね。
ほぼ間違いなくザマさんの許可も取ってあるでしょうし、この注目度で私達が合流するとエライことになりそうなので遠くから見守るだけにしておきましょう。
しかし、こうしてみると魔法少女やそれっぽい感じの衣装のコスプレしてる方結構いますねぇ。
しかも、稀に本物であってもおかしくない超クオリティの衣装の方が居るんですよねー。
ほら、あそこのなんか手の平でトリックアートみたいな四角いオブジェクトを回転させてる方とか。
「……優希さん。あの方、一昨年に魔物に連れ去られて消えたアキュムレット・エニグマさん……、本人に……見えるのですが……?」
……え゛?
確かに、魔力感知の精度を上げてみれば彼女から何かしらの魔力をビンビン感じます。
というか……。
「理珠さん、あちらの赤いドレスで火の玉を周囲に浮かべてる人、あの人にも見覚えあったりしません?」
「……わたくしが魔生対に入る直前にお亡くなりになられた、フェアブレンネット・ヘルシャーさん……だと思われます……」
……確かにハロウィンは死者が帰ってくる日ではありますけども!
いや、確かによく見ればアレだけ目立つ格好をしているのにも関わらず周囲の人は彼女達のことを一切気にしていません。
冷静に考えればこの人混みの中で火を扱ってるのに誰も注目しないとか可笑しい事この上ないんですよね。
あ、ちなみに初代さんペアの方は周囲の人からガン見されていました。
まあ、魔法が存在するんですから、こういった奇跡だって実はそこそこの頻度で起こっていたりしてもおかしくないですよね。
元はケルトのお盆+大晦日だったハロウィンですらこんな感じなんですし、実はお盆の盆踊りとかにも案外彼女達が紛れていたりするのかも知れません。
幸い、私が知っている魔法少女達は誰も犠牲になっていないので探しに行ったりする意味はありませんけどね。
なお、後日ぺけったーでエゴサした所、声を掛けられなかったのは実は本人だとバレバレだったからの様で……。
一緒に居たミラさんのコスプレはどの魔法少女の中の人だったのかが激しく議論されていました。
あ、ちなみに理珠さんの衣装はかなり汚れてしまったのでクリーニングに出すことになりました。
……なんでそうなったのか、ですか?
言わせないでくださいよ、恥ずかしい。
☆★☆★☆★☆
某イノシシ「勇者たちが帰ってきた!」
はい、ハロウィンライブとかではなく純粋な?デート回でした。
まあ、デート内容より起きてる不思議現象がメインでしたが。
作中世界、奇跡も魔法もありますからね?
で、次回更新はいつも通り中2日の11月2日21時なのですが……。
日曜日に1日潰れる用事が入っているためその次の更新は普段より1日遅れての11月6日になります。ご了承ください。
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