第146話 くりがみこちょうはくびをはねた。
あの後八瀬さんの自己紹介動画を撮りまして、あ、ミラさんの時みたいにカオスなヤツじゃなくて普通に質問が流れて答えていくやつです。
ちなみに、私が参加するとトラブルを誘引するというやや自覚はあるけど理不尽な理由で撮影の見学はさせてもらえませんでした。
その後、学力検査のテストを黙々と受けてもらったり、体力測定(非変身時)をやったりしつつで2日が経過しました。
……というか、短距離走と反復横跳び、垂直跳び、立ち幅跳びの記録がエグいんですが?まだ1年生ですよね?これ高校生記録超えてたりしませんか?
ただ、彼女の家系は将来の職業的にSPやら内閣調査室やらに入る可能性が高いので大会などで記録と姿を残すことは禁止されてるんだとか。
まあ、普通に頑張ってる高校生の中に生まれたときから身体改造みたいな訓練を課せられてた忍者が混じってきたら勝負になりませんからね。しょうがないことだと思います。
で、今何をやってるかと言うと……。
「この魔物だったら八瀬さんのデビューに丁度いいんじゃない?」
と、ついさっき出現した魔物の映像とモニターに映して腕組みして頷くザマさんと、直立不動で殺る気満々の表情を浮かべる八瀬さんを眺めながらシアちゃんとオセロで勝負してま……あっ!角の黒を今さり気なくひっくり返しましたよね!?イカサマは発覚した時点で負けですからね!?
全く、この邪神普通にボードゲームよわよわな上に隙あらばイカサマを仕掛けてきますからね。
まあ、本体に接続すればオセロ程度なら必勝らしいので端末たるシアちゃんのよわよわ演算能力程度でプレイする方が楽しいのだとか。
それならば仕方……いや、そこでイカサマに走るのはおかしいでしょう。
まあ、それはそれとして八瀬さんの初陣の相手は……。
ゴリ……いや、3メートルほどの大猿の魔物が3体。猿と言ってもニホンザルじゃなくてえっと、ほら、月を見て巨大化した野菜星人みたいな感じの猿です。
これは第一種群体型ですね。
ザマさん、八瀬さんの戦闘力をかなり高く見積もってますね。これは魔法少女に成り立ての子が相手するような魔物じゃないですよ?
「やれる?」
「はっ、この程度の魔物。拙っ……わたしに掛かれば赤子の手に逆十字を掛けるようなものでござ……います」
……いや、それ腕の長さが足りなくて逆に難易度ものすごく高くありませんか?
「じゃ、決まりね?一応そこのアホと優秀な魔法少女4人がもしもの時のために現場で監督するから余程のことがない限り魔物に連れ去られたりはしないから安心して戦ってきなさい」
「はっ!」
とまあ、そういう事になったみたいです。
「では、変身するでござ……います……」
相変わらずのござるキャンセルと共にブレザーのポケットから黒い紙の蝶を取り出す八瀬さん。
「転身!」
1匹だったそれは、八瀬さんが手を翻す度に2匹、4匹と増えて行き……。
4度繰り返すと、両手から溢れて八瀬さんの周囲を飛び回り始めます。
同時に、装具や衣服、身体を装飾していた全ての物品が解けるように蝶へと変わり……。
「
八瀬さんの宣言と同時に黒髪と、漆黒の蝶が全て純白へと染まり、身体を覆って
色こそ純白ですが、父親を意識しているであろう口元まで覆い隠す長い長いマフラー、二の腕までを覆い隠す和紙で様々な装飾が施された長手袋。
髪は後ろへ流した長い髪の先端付近で紙のリボンによって結ばれ……。
まあ、ここまではおおーと純粋な気持ちで見ていられたんですが。
メリハリのある女性らしい身体を見せつけるように角度がエグめのハイレグレオタードが形成された辺りで何かを察し。
長い脚に白い網タイツが装着された時点で色々と諦め……。
そこに編み上げのブーツが装着されて変身が終わった時点でそうとしか思えなくなりました。
最後に、何やら複雑な手印を結んで全ての紙蝶が彼女の影の中へと吸い込まれるように消えていきましたが、そんなのじゃ誤魔化されませんよ!?
対◯忍だこれー!
あと、メガネっ子からメガネ取ったら駄目でしょー!?
「魔法くノ一・繰紙胡蝶。推参……」
恐らく、ザマさんも同じ事を考えているのでしょう。ツッコミたいのを必死に我慢してる様子が見て取れます。というか、魔法くノ一って語呂が悪くないですか?
あ、地味にマフラーだけじゃなくて面頬もついてるんですね。
しかしアレですね。◯魔忍な所をスルーした印象としては「白い」の一言ですね。
羨ましいぐらいに白い肌に純白の衣装が張り付き、アクセントとして装着されている和紙のアクセサリーに柄があるぐらいで全てが真っ白です。
いや、これ忍べます?忍ぶどころか暴れるぜ!な戦隊モノじゃないんですよ?
「羽佐間室長、変身完了したでござ……います。何処から出撃すればよいのでござ……いましょう?」
「……あー、こっち。ついてきて」
声をかけられて再起動したザマさんが蜜ちゃんの所へ案内していきましたが、これ、絶対ぺけったーとかで拡散されてネタにされますよねぇ……。
「セヴンスさん、セヴンスさん、早く行こ?エラ、ニンジャさんの戦い方ががすごく気になってるの!」
あ、エラさんもニンジャ大好きです?しょうがないですねー。
「じゃ、先着してどう戦うのか観戦させてもらいましょうか」
そういう事になりました。
初夏の日差しが照りつけ、逃げ水が見える繁華街のアスファルトの道路を3匹の大猿がのっしのっしと威圧感を纏って歩いています。
進む先は数十メートル先のシェルターでしょう。
それなりに頑丈なので私達が参戦しなくてもそうそう壊されたりはしないと思いますが、手助けが必要かどうするかは対魔◯さんの戦闘の様子次第ですね。
と、ヤツラの背後の曲がり角から八瀬さんが現れました。
手鏡を取り出し、角から敵の様子を伺っているようです。
相手の状態確認は重要ですし、慎重なのは良いことだと思います。
まあ、奇襲のチャンスですしね。彼女は正当な忍者の家系ですし、アンブッシュは最大火力で行えと教育を受けていることでしょう。
「紙道忍術・紙隠し……っ!」
さて、どう仕掛けるのかと思っていると何やら印を結び、影から飛び出た紙蝶が集まって2メートル四方はありそうなでっかい一枚の紙へと姿を変えました。
それは、彼女の少し前に浮かび上がり……。
その紙を浮かべたまま、忍者娘は通りへと歩みを進めました。
ちなみに、大猿達は周囲を舞い始めた無数の蝶を警戒して背中を預け合って全周囲警戒しいています。
しかし、なんでしょう。
忍者の根源の特徴なのか、魔力がめっちゃ薄いです。
シアちゃんの魔力探知能力を共有してる私でギリギリ感知出来るかなぐらいといえばその隠密っぷりがわかるでしょうか?
実際、大好物の魔法少女がエントリーして堂々と歩いて接近してきているというのに大猿共は気が付いてすらいません。
いや、真っ白い紙が空中に浮いてるんですから気が付かないはずないんですがアレどうなってるんですか?
「うわ、光学迷彩だよねコレ!すごいすごい!」
「なるほど、魔力を隠せて、これが出来るなら気が付かれないわけね」
「紙の根源でこれを考えられるのは将来有望でしょう。優希さんに近い思考回路をしているのではございませんか?」
「ん、がんばってる」
はい、エラさんが蝶の群れに紛れて飛ばした魔力稼働ドローンで彼女を正面から映した様子を見たチームセヴンスの反応がこちらになります。
いや、たしかにこれは凄いです。
紙の表面に背後の風景を精密に描画している……のだと思います。
境目まで含めて高精度に偽装されたそれは、そこにいると把握してる私達ですら存在を確認するのが困難なほど完璧な隠れ身の術でした。
恐らくですが、飛び回ってる蝶から視覚情報を得て紙に描かれる背景を精密描写しているのでしょう。
数メートル手前。もはや紙しか見えてないはずの大猿の魔物ですらそれに気が付いていません。
そして、そこからは一瞬でした。
影から紙で出来た忍者刀二本を逆手で引き抜き、大猿の首へ両側からの斬撃をしかけます。
迷彩紙をそのまま斬り裂いての奇襲に、大猿Aは反応すら出来ずに斬首されてしまいました。
大猿Aと背中を合わせていたBとCはそこで初めて魔法少女の接近に気が付きます。
人間ならここでAを殺害された事実に驚いて動きを止めるところですがそこは魔物。
一切の動揺もなく、両サイドから剛腕が唸りを上げてくノ一へと襲いかかり……。
紙の蝶を足場に空へと翔んだ彼女によってあっさりと回避されました。
アレは多分、蝶を
……ということは彼女、私と同じ様に空中に足場を作っての立体機動が可能だということでしょうか?え?つよくね?
そのまま空中で再度跳躍、身をひねり上下反転し、回転の勢いをつけた二刀で大猿Bの首を刎ねます。
斬撃の反動を利用して再度身体を捻って着地しますが、敵はまだ1体残っています。
背後から迫る鋭い爪をどうやって回避するつもりなのでしょうか?
こっそり張り巡らせていた
「
呟きと同時に打撃を伴った爪の貫手が命中し、激しく飛び散る紙の蝶。
ほぼ同時に大猿Cの真上に固まっていた紙蝶の塊の中から現れる紙と忍の魔法少女。
ここからはもう、実況する意味もありませんね……。
そうかー、ガチで戦闘訓練を受けてる忍者が魔法少女になるとこんな感じなんですねぇ……。
いや、第一種とは言え群体型を瞬殺とか優秀過ぎません?
☆★☆★☆★☆
くりがみこちょう は、おおざるにきりかかった。
そして、3かいあたり30のダメージ。
おおざる は、くびをはねられた。
Wiz描写だとこの文章で終わる戦闘シーンでした。
ちなみに、紙蝶空蝉は事前に自分の身体サイズの蝶の塊を作ってないと使えないです。
ということで、対◯忍魔法少女の変身シーン及び初陣でした。
応用力高めな紙の
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