第144話 終末の少女、日本食にさよならする。

 パリを巨大ドラゴンがぎゃおーしてしばらく経ちました。

 まあ、その「しばらく」の間に色々あったんですけどね。

 本来なら、大災害に見舞われたような惨状ですので各国から災害派遣として様々な人員が派遣されて人命救助や復興に向けた瓦礫の撤去等に全力を尽くしている……はずなのですが。

 今回ってほら、そもそも被害を齎した元凶がじゃないですか。

 他の災害と違ってが有り得る上にそれに対処する手段が存在しないんですよ。

 それに加えて、周辺諸国としては「ウチに出たらどうしよう」という不安が発生してですね?

 まあ、EU各国及びイギリスからの支援が遅れに遅れています。

 

 で、そういう時こそ遠いし能力もある我が国の出番でしょう!って事で日本からも支援の打診をしたみたいなんですが。

 何故か、当のフランスさんがお断りの表明をしてきたんですよねぇ。

 ここらへんは、なんか調べてみるとアジア人差別とかのアレがアレすぎて闇が深そうだったんで放置しました。


 幸いと言って良いのかなんというか、当のドラゴン本人(人?)は市街をうねうねとお散歩しただけであって、別に怪獣王よろしく建物に対して熱線を吐き出すだとか放射性物質を垂れ流して周囲を汚染するなんてこともなく、そのおかげか火災などの二次災害が思ったほど発生しなかったため人的被害はそれほどでもなかったそうで。

 というか有識者曰く、お散歩コースと速度から考慮すると自分の侵攻によって建造物に被害が出ると認識した上で、人が避難し終わって無人かそれに近くなった地域で積み木を崩して遊んでた的な意図が感じられるそうです。

 

 そもそも、出現時で最初に行った行動は魔物の討伐ですし、なんて概念にとても馴染みがある日本の特撮マニアさんとかは……。

 『魔物を討伐する為に出現し、倒したその後生き残りが居ないか警戒のために周囲を歩き回っただけで、都市の破壊はドラゴンにとって避けられない被害コラテラル・ダメージだっただけである』

 なんて論調でドラゴンは善玉の時の怪獣王や亀の大怪獣みたいな地球の意思的なカテゴリーのなにかである。みたいな扱いをしてたりします。

 まあ、一応シアちゃんに聞いてみた所「んなわけないのじゃー!」でしたが。

 

 あのドラゴン、まず魔物カテゴリーなのか何なのかすらわからないんですよ。

 魔力可視化装置での撮影映像さえあれば一瞬で判別可能なんですが、なんかアレ、結局制作に魔力が必要な箇所があるらしくって量産化には程遠い状態なんですって。

 そうなるとどうしても国内と最大の同盟国であるアメリカさんが優先って感じになって、EU諸国やらイギリスやらへの輸出は日米で最低限の必要数が揃った後という状態になっています。

 一応、サンプルとして関係性の深い先進国には1台は配ったらしいんですけどね。


 まあ、ドラゴンに関してはそんな感じです。

 再出現したって話も聞きませんし、そもそも遠い遠いヨーロッパでのお話なのでもうあんまり気にしなくていいでしょう。

 って感じで現実逃避してましたが、そろそろ目の前の出来事に対処したほうが良い気がしてきました。


 「い゛や゛、デずぅぅぅぅぅ!ステイツ、帰ルの、や゛ぁぁぁ!」

 ……エンドブリンガーことパトリシアさんが顔面をぐっしゃぐしゃにして泣きわめきながら白さんに抱きついています。

 本来なら1年毎のローテーションで派遣人材を入れ替えるというシステムだったんですが、パトリシアさんの終末魔法の効果があまりにも便利だと大騒ぎになってまして。

 結果、予定の半分。半年で戻ってこいという辞令が届いたのが先程になります。

 それを読んだ途端、顔を真っ青にしたパトリシアさんが横に居た白さんに抱きついて駄々をこね始め……そろそろ30分が経過しようとしています。


 「オトウフ、ナットウ、オミソ汁!毎日食べダい゛でずぅぅぅ!ステイツ、ご飯、雑でずぅぅぅ!」

 ……まあ、日本人は世界有数の食事にうるさい民族ですからね。あえて美食家とは呼びません。いやだって、ジャンクフードだって美味しくなくちゃ嫌だって文化で美食は名乗れないでしょう。

 それを毎日の様に、しかも有名店のスーシェフをやっていたような人が作った美味しいご飯を食べてたらこうなってしまうのもやむなしな気がしてきました。

 いや、しかし、本国に帰ったら確実にメジャーリーガーなんて目じゃないレベルの高給取りになるんでしょうし、お取り寄せして食べれば問題ないのでは? 


 「あーもうくっつかれると暑いんだけど!?というかパティ?貴方、帰国したらVIP待遇間違いなしなんだから日本食ぐらい好きに食べさせてもらえるんじゃないの?だって、貴方一人居るだけで原子炉の廃炉1基につき300億が浮くのよ?それどころか、今までに貯めに貯めてきた核廃棄物が全部綺麗さっぱり処理できるって米国の国家予算にどれだけの余裕が出来ると思ってるの?」

 しかも、貴方の国の核廃棄物処理します~って外交カードとしても最強クラスなんですよねぇ。

 あ、日本は能力開発のお礼としてというか、実証実験と称して某大震災でトラブった原子炉とそこから生まれた廃棄物を綺麗さっぱり終末にしてもらってたりします。

 お陰で、魔生対の政治的立ち位置が特権階級化してるとかなんとか。


 「うウー、そうナンですけどー!お水が違エば味が違うんデスー!ニホンの食べ物はニホンの水ダから美味しいんデスー!」

 だばだばと暴れるパトリシアさんとそれに付き合う白さん。

 多分ですけど、アレは白さんとも離れたくない的な感情の照れ隠し的な側面もありそうですよね。

 でも、流石に長時間駄々っ子に付き合って白さんも疲れてきてる頃でしょうし、助け舟を出しましょう。

 何せ、パトリシアさんの魔力波長は覚えましたし、シアちゃんと魔力感知の感覚を共有している私なら地球の裏側に居たって見つけられます。

 ……すみません、流石に盛りました。

 米国近辺まで移動して、更にそこから絞り込んで行く感じで追いかけるぐらいが限界ですね。

 それでも、私が日本からパトリシアさんの元へ移動する時間は長く見積もっても1時間程度でしょう。

 つまり、日本で作ったご飯を保温ケースに入れて潜影操手カルンウェナンで配達するという方法が取れてしまうわけです!なんちゃらイーツみたいな感じですね。


 ……なんて提案しようと思ったんですが、当の白さんから真の英雄が眼で殺す勢いの視線の静止が飛んできました。

 私は働きすぎだからこれ以上仕事を増やすな?仰る通りだわー!

 まあ、なんだかんだあのだばだば駄々こねも彼女達のコミュニケーションの一種なんじゃないでしょうか。

 白さんも口では文句言いながらそんなに嫌がってない感じですし。

 

 それで、パトリシアさんを返品する流れで一文字さん、100号戦士も一度帰国させる流れになったんですよ。

 そこで入れ替わりでこちらからまた一人派遣して、あちらから一人受け入れるみたいな感じらしいです。

 え?ルーシャからの派遣契約?そんなものとっくに破棄されてますよ。賠償金を請求中らしいですが、払う気なさそうって話で担当の人も匙を遠投するレベルなんだとか。


 そういえば、ザマさんが活きの良い新人魔法少女を見つけてきたらしく、その子が新しく初動対策課入りするらしいです。

 なんでも、この前のクソ教団絡みの被害者にご挨拶に行ったらそこで出会ったとかなんとか。

 一文字さんが帰国する3日後にちょうど全員揃う形になるので、そこで顔合わしましょうって流れになってるそうです。

 一文字さんが連れて返ってくるアメリカの魔力保有者の方も気になりますが、今回はこちらから誰が派遣される流れになってるのでしょうか?




☆★☆★☆★☆


なんか、エンドブリンガーさんが和食マニアになってました。

和食マニアというか、大豆加工食品大好き人間?


さて、次回で100号ちゃん帰国&誰かがついてきます。

一体何処の部族のメディスンマンなんだ……。


ザマさんは新人を発掘したようです。

一体何処の忍者の娘なんだ……。


シリアスパートで急にキャラが増えたように見えますが、蘇りし者レヴナント

3人で1グループ、悪い子蘇りし者レヴナント3人で1グループ、残党2人 と、グループで覚えていただければ差し支えないと思いますので……

頑張ってごちゃごちゃしないように書きますぅ……


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