第84話 血の味のキスで染め上げて
【ほあ!?そそそそそそれ!ありえないのじゃぁぁ!?ほ、ほ、ほああぁぁぁ!?手に収まらないサイズの純魔結晶じゃっとぉ!?おっほぉぉぉお!?】
……えーっと、私、今初めて根源さんから言語と認識できる声を聴いたんですが。
なーんで最初に聴いた声がオホ声なんですか?
いや、今まではなんというか、身振り手振り的なイメージで魔法の創造とか手伝ってもらってたんですが、喋れたんですね……。ちょっとびっくりです。でも、のじゃロリはあざとすぎじゃありませんか?
で、これ純魔結晶って言うんですね。
……いや、魔法に関するアドバイスなら根源さんがアドバイスできるのは理解できるんですが、なんで私が知らない物体の名称をご存知なんです?
そんな疑問は彼方に投げ捨てて今はミラさんの救命が最優先です。
エヴゲーニヤの魔力が消滅するに従って明らかに心臓の拍動が弱まってきていますし、この出血量です。一刻の猶予もありません。
えーっと、
ふむふむ?この純魔結晶とやらをできるだけ血管等を傷つけないように気をつけながら心臓の側にぶっ刺す?
……いや、
まあ、やるんですけど。
【おぬし!おぬしおぬし!なななななな何をやろうとしておるのじゃ!やつがれも少しは長く生きておるが、見るも初めてなら聞いたことすら無い大きさの純魔結晶なのじゃぞ!?どどどどどどどれだけの価値があるかわかっておらん……のじゃあぁぁぁあああ!!?】
えーい!(ざくっ)
はい、邪魔な服をはだけて心臓のわずかに上、見栄えと言うかどっちかに寄ってると落ち着かなさそうだったので正中線上にぶっ刺しました。
いやだなぁ、初めて見る物体の価値とかわかるわけ無いじゃないですかぁ。
というか、私が身内の命を救うためならどれだけ価値のあるモノだって容赦なく使う人間だってわかりません?
んー?だいぶ深く刺したと思うんですがゴリッともゾリッともしないって事は重要な器官に当たらずに刺せたんでしょうか?それとも、なんかよくわからない仕組みで体内に入ると当たり判定無くなったりするんですかね?
そこんとこどうなんです?魔力根源さん?
【知らぬわぁぁぁ!純魔結晶じゃぞ!?うたた寝しとる間に代替わりする炭素生命の維持なんぞに使ったなんて話聞いたこともないし、そんな用途で使う大うつけがおるわけが無いのじゃぁぁ!】
いや、ここに居ますよ?
【のじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!】
……のじゃが鳴き声みたいになってますね。
【誰の!せいで!こんなに!叫んでおると!思っておるのじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!】
えーっと、元を辿ればミラさんをこんなボロボロにしたエヴゲーニヤって女のせいですね?私のせいじゃないですよ?
えーっと、次はこの純魔結晶とやらから魔力を引き出さないといけなくて、現状のミラさんだとその呼び水とする魔力すら無いので私が外部から流して起動させると。
あ、いや待ってください、この流れはなんか前にやった記憶がありますよ?
また粘膜接触で流せっていうんでしょう?流石にもう口には行きませんよ?
ほら、損傷した眼球とかさっき流し込んだ場所からでいいでしょう?
え?何度も外部からの魔力供給に使用された場所は、魔力の
……いや、だってほら、私昨日理珠さんに美味しく頂かれたばっかりなんですよ?
その翌日に別の女にキスしろと?
……やりますけどね!人命救助ですからね!
血塗れになっている薄い唇をそっと拭い、私の魔力がミラさんの身体を通して純魔結晶とやらに届くように深く口付けを交わしながら魔力を注ぎます。
ってちょっと待ってください。私の魔力でこのなんちゃら結晶を起動させるだけならこの結晶に直接魔力を注いでしまえばOKだったのでは!?
あ、それだと完全に私の波長の魔力がこの結晶から生み出されるようになってミラさんの魔力として馴染むまでに命が尽きると……。
これがこの
血の味の濃い口腔内で舌を絡めながら、魔力を流し続けます。
……
数分間魔力を注ぎ続けたでしょうか?
純魔結晶が薄っすらと黒い光を放ち始めました。
いえ、黒い光とかありえないんですけど、そうとしか見えないんですよね。
【うはあぁぁあ、完っっ全におぬしの魔力で染まってしまったのじゃぁ……。これでおぬしの生が終わるときまでこの結晶はおぬしの魔力を産み続ける事しか出来んのじゃぁぁぁあ。あーもったいない、もったいないぃぃぃぃ!】
あ、つまりコレが私の魔力の色と?く、黒い光とか中二病そのものじゃないですか!……いや、まあ中二病なんですけど。
あれ?でも結局私の魔力を生成する状態ならミラさんの生命維持とか大丈夫なんですか?
【それは問題なかろうて。ほぼ魔力が失われ、根源核すら崩壊しそうだった所をおぬしが魔力でそれを維持し、無尽蔵に供給されるようにしたのじゃ。あー、つまりあれじゃの、この娘はおぬしに染められてしまったのじゃ】
また知らない単語が……。
いや、なんとなくわかりますけど、活性魔力から力を取り出して不活性魔力に還元する魔力構造体の、根源の核とかそういうものでしょう?
長時間に及ぶ過剰な魔力供給の負荷でそれが壊れかかってたところを、私の魔力が支えて、外部バッテリーでそれを維持できるようになったと。そういう感じですかね?
……結晶が刺さってる場所とか、生み出してる効果とかがものすっごくパワードスーツを着た社長を思い出しますね?
ところで、私に染められたってのはどういう……?
【姉の魔力のみでぎりっぎり生きておった所をおぬしの魔力が根源核を埋め、純魔結晶から流れ込む同質の魔力が身体を巡るようになったのじゃ。魔力的には元の魔力波長なんて残っとらん状態になっとるじゃろ。これ、多分アレじゃぞ、おぬしと伴侶の根源共有、こいつとも起こっとると思うのじゃ。というか、根源核に思いっきり入り込んでおるし、こっちの共有の仕方のほうが原理的に正しいまである】
あれ、これ理珠さんに嫉妬されるやつじゃないです?大丈夫です?
いやでも、魔力の波長が私と同じ感じになっただけで別にほら、それだけですから。
【あとアレじゃな。根源核と肉体、両方の修復が完全に終わるまで変身は解かぬ方が良いと思うのじゃ。下手をすると非変身状態だと純魔結晶から流れ込む魔力が多すぎて死に至る可能性もあるしの】
あれ?ほぼ死んでて、ずっと変身解けなくてってこれ、つまりほぼゾンビって事で私と同じカテゴリーになりません?
【おまけに魔力波長もほぼ同じじゃからな。おーおー、おぬしの細君がどういう反応を返すか楽しみなのじゃぁあ!純魔結晶をやつがれの意見も聞かずに無駄に使いおった罰なのじゃぁ!……まあ、それはそうと今度直接殴りに行くが】
と、魔力根源さんとふざけあっていた所でミラさんの心臓の鼓動が安定してきたのに気が付きました。
魔力による自己保存も再開されたのか、全身の至る所から起こっていた出血も止まってますし、もう大丈夫そうですね。
うっ、安心したら意識が……。
まあ、もう無理する必要もなさそうですしぶっ倒れてしまいましょう。
あ、でも空母って今傾いて座礁してるわけで、私ここで意識失ったらそのまま転がって海ポチャしたりしません?
……うーん、一度ぶっ倒れてOKと思ってしまった意識が持ち直せません。
あー、身体が傾いていきますねー?
ずりずりと、意識を手放しながら血に濡れた甲板をずり落ちていく私が最後に見たのはでっかいサメと、その背中から飛び降りて必死の形相で駆け寄ってくる理珠さんの姿でした。
人命救助のためのキスでそんなに怒らなくたっていいじゃないですかぁ……。
☆★☆★☆★☆
中二病の魔力根源さん、一体何者なんでしょう?
そして実質ゾンビがまた1人。
のじゃロリ、良いですよね。
ということで一件落着です。後始末的な話とエンディングやったら、連続でコメントログ回ですかね。
ところで、「Web小説サイト・カクヨム」【重要】ってメールが届いたんですよ。
ちょっと期待するじゃないですか。
……カクヨムコン9完走キャンペーン当選のお知らせでした。
ブックカバーが貰えるやつの当選通知だったんですけど、こう、なんか、ぐぬぬ!ってなりました。
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