第70話 あれ、絶対立ち上がると思うんですけど?

 数時間後、ザマさんが会議から戻ってきました。

 ……なぜか、得意満面の笑みを浮かべた雛わんこを連れ立って。

 とりあえず、待機室でだらっと話をするような空気ではなかったので全員で会議室へと移動します。


 あ、ちなみに『使徒アポストール』の改造についてはザマさんが戻ってくるまでの間に技術班と打ち合わせ済みです。

 趣味でフィギュアの原型師をやっているというお兄さんがとてもとてもやる気になってらっしゃいました。

 作品の写真を見せてもらいましたが、「アンフェス用に作りましたが魔生対けんりしゃの許可が降りませんでした」と、私の超クオリティなフィギュアをペケッターで公開していた原型師さん。中の人は貴方でしたか……。

 供犠台とか、良い笑顔の会社とかに就職したほうが良かったんじゃないですかね?

 というか、私って未だに魔生対に正規登録されてないんですけど、肖像権やらなんらやの権利どうなってるんでしょう?


 それはさておき、会議室に到着するなり設置されているでっかいモニターに何かの機材を手際よく接続していく雛わんこ。

 「最新型、持って行ってもらったから!」

 えーと、うん、その前にザマさんと行っていたであろう会話の内容を前提とした話をされても流石に理解出来ませんでした。まあ、何やらにこにこしていたのでほどほどに撫でておきましたが。


 で、みんなが集合して席についたのと同じぐらいのタイミングでモニターに映像が映りました。

 「とりあえず、今現在空母を操っているのが魔物だとしても流石に自衛隊に先に攻撃させるわけには行かないって事で、在日米軍が魔物空母あれに先制攻撃をかけることに成りました」

 モニターに映し出されているのは、空母を遠景に捉えた航空機からの映像。

 「とは言っても、相手は分類上魔操種の熊と同じ扱いの器物になるわけで、今から行われるのは魔物に操られた空母及びにその随伴艦がどれぐらい掌握されているのか、通常兵器でダメージは与えられるのか……。その調査のための威力偵察てわけね」

 

 なるほど、魔物の魔力を纏った兵器なんて、今まで一度も発生した事の無いデータの存在しない相手なわけですし、相手が何を出来るのか、何が効果的なのか等の情報収集は重要ですね。

 「で、せっかくだから魔力的な情報も一緒に調べてもらおうと思って月ヶ瀬さんの作った魔力可視化装置の最新型を持って行ってもらったの」

 と、ザマさんの説明が終わった辺りでカメラに魔物の艦隊の全貌が映りました。


 軍事関係は、戦ってると敵からも味方からも終始ヨイショされる戦闘機ゲーでの知識ぐらいしか無いので正直艦種とかはさっぱりですが、空母が1隻とそれに随伴艦が6隻あるのがわかります。

 わかりますが、問題はその配置というか航行の仕方というか……。

 空母を中心に左右3隻ずつが、こう、ハの字型に3段で並んでいる感じで。

 いやもうぶっちゃけましょう。虫の脚みたいに真横もしくは斜めに空母の横に駆逐艦だかイージス艦だかがくっついています。

 「あの、セヴンス様。わたくし、最近ちょっとだけアニメや漫画の『お約束』というものを理解してきたと自負させて頂いているのですが……。あの艦の配置、あれ、絶対立ち上がるための脚になる配置だと思うのですけど、如何でしょう?」


 ほらー、ほぼ感性が一般人である理珠さんですら気がついちゃうレベルじゃないですかー!

 というかですね、空母で攻めてきまーすって話の時点からちょっとおかしいなとは思ってたんですよ。

 私の身柄が目的なんですよね?私、魔生対の本部の位置的に考えて明らかに内陸部に居る人間?ゾンビ?なんですよ。

 海からでてこーいされて出ていきます?原子炉で脅すにしても、港で動かない空母にから一般市民を逃がすのはゴジラやら魔物やら相手にするよりはよっぽど簡単なわけで……。

 逆に言うと、空母サイズで移動手段が歩行の巨大構造物とか厄介極まりないですね。魔生対の子達、大規模破壊出来る魔法が使える子そんなに居ませんからね。


 「私もそう見えますし、まあ、他の人も大体同じ考えに至ったと思いますよ。問題は、アレがどれぐらい頑丈かですよねぇ……」

 そうこうしているうちに米軍の航空機による威力偵察が開始されました。

 綺麗に編隊を組んだF-16からいくつものミサイルが発射されます。


 んー、これ最悪撃墜されても良いようにF-22AやF-35じゃなくてF-16を使ってるんですかね?第五世代戦闘機と比較してお値段お安いですし。

 まあ、相手の戦力は未知数ですし、妥当な選択だとは思うんですがF-22Aが某空戦ゲーで愛機だった私としてはちょっと残念です。

 ハイスペックな超高級品って、なんというか、お嬢様!って感じがして良くないです?らぷたん、可愛く有りません?

 

 まあ、それは置いとくとして……。

 魔物空母の方もミサイルが発射されるほどの距離に接近されているのに未だに艦載機が要撃に上がってこないのが不思議ですね。

 もしかして、艦隊を動かすのにリソースを使いすぎて艦載機を動かす余裕がなかったりしますか?

 いや、そもそもこの艦隊を動かしているのだってミラさんを魔物としての特性で操って魔法を使わせて、その魔法で操作しているわけで。

 例えるなら操り人形に操り人形を操作させてるみたいな迂遠な操作方法ですもんね、ここからさらに艦載機の戦闘機で空戦しろとか、宇宙世紀な作品のアフロ気味パイロットぐらいにしか出来ないんじゃないでしょうか?


 あ、でも艦隊そのものはしっかり掌握できているみたいですね。

 近接防空ミサイルや近接防空ファランクス、えーとCIWSってやつですね、がしっかりとミサイルを迎撃していきます。

 とは言っても、本来は艦載機で要撃してそもそもミサイルを発射させないように立ち回るのが現代戦であって、優秀な対空システムを備えていたとしても既に発射されたミサイルを100%防ぐなんて無理な話なので……。

 

 対空火器をくぐり抜けた2発が空母の甲板へと着弾しました。

 結果は……目立った損傷無し。

 ですよねーって感じです。

 熊の時は思考を操作できる最小限の魔力しか使われてなかったので、普通に銃弾は損傷を与えましたし、ある程度以上のダメージで行動不能、もしくは死亡してましたけど、この艦隊の纏ってる魔力量たるや、いつぞやの魔物の軍勢以上の魔力量ですからね。

 しかも、それが垂れ流しじゃなくてしっかり操作されているので電波妨害の範囲が想定よりもかなり狭く、このまま本州まで来てしまったらしっかり生でTV中継されてしまいそうな予感がします。


 「うーん、しかし、F-16の方に向かってSAM(艦対空ミサイル)とか全然飛んでこないですね?どうせ損傷を受けないからって放置放置されてる感じです?」

 いや、それにしては対空火器はしっかり仕事してたんですよね。

 「ミラさん、がんばってる……」

 さっきまで尻尾ブンブンだった雛わんこがしんみりとしながら私にARグラスを手渡してきました。

 あ、最新式の魔力可視化装置ってビデオカメラの映像からも魔力読み取れるようになったんですね?いや、マジですごくないですかこれ。

 

 とりあえずスチャっとグラスを装着してモニターを見れば空母を中心に広がる毒々しいまでの真っ赤な魔力。

 その中で、攻撃用の兵器類にだけ、これは使わせないとでも言うように展開されている青い魔力……。

 うん、ミラさんも頑張ってるんですね……。

 絶対助けますから、もうちょっとだけ耐えてくださいね。

 

 その後、ミサイルの残弾が尽きるまで攻撃は繰り返されましたが命中弾は合計で4発。また、艦隊に接近しすぎると魔力の影響なのか傀儡の魔法の効果範囲に入るからなのか機体の操縦が安定しなくなるという問題もわかりました。

 ……お約束ではあるんですが、魔物の相手は私達がする他ないんでしょうね。



☆★☆★☆★☆


1日お休みいただきナントカ調子を戻しました。

ご心配おかけしました。


ということでミリタリー回

お空の方のACの知識とサイゲが版権買い取った戦車RPGぐらいのミリタリー知識しかないので描写等おかしかったらごめんなさい

お船の方はアズレンと艦これをプレイする上で調べた知識ぐらいなので現代の艦船となるとさっぱりなのです。


どうでもいいけど、F-22AとかF-35のお腹のウェポンベイがぎゅるんって回ってミサイルとか出てくるのエロいと思います!あれでご飯2杯ぐらいはイケます!




 

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