第4話 「中二病の魔法」少女
中二病 それは、大体中学ニ年ぐらいの頃から発症する「こじらせたかっこよさ」に憧れ、模倣し、黒歴史を生産し、最終的に(恥ずかしくて)死に至る病である。
通常は数年で完治……というか、卒業して行くか、或いは受験等の現実に押しやられて忘れ去られていくものなのですが……。
困ったことに、治らない人種も存在するのです。それも結構な割合で。
私も、社会に出て完治させたというか、されたはずだったのです。仕事と生活というものに押しやられて。
……いや、というかですね
「魔法の根源が中二病って何なんですか!?中二病の魔法って何が出来るか全然わかんないんですけど!?」
敵を中二病にするとか……?いや、主に動物とかの形状をしてる魔物の右手が急に疼きだしても特に意味はないでしょう。
「そもそもわしは人間社会に詳しいわけじゃないからの。まず中二病とやらがわからぬ。じゃが、魔法は根源に「関係あると自分が真に考えているもの」を効果として発現する事が出来るものじゃ。
例えば、『雨』の魔法少女なら、普通に雨を降らせることも出来るし、石の雨を降らせることも、ちょっと捻って雨から発生する災害、土石流辺りを魔法とすることも出来るじゃろう。
ならば、おぬしは中二病という病の症状を直接発生させたり、まあ、死に至る病であれば魔力は大量に消費するかもしれんが直接相手の死を発現させることも出来るやもしれぬ」
中二病をまともな疾病だと思ってる蛇はなんかうんうんと頷いていますが、私はそれどころではありません。
中二病に関連するものなら魔法として再現できると言うなら、昔かっこいいと思ったアレやコレが再現できるわけで……。
ああ、しまった、間違いなく再発しました。ちょっと闇っぽくてかっこいいと思う戦闘方法が次から次に浮かんできます。インドア系だから戦闘無理とか言ったのは誰ですか!?
「まあ、まずは魔力根源から湧き上がる衣装を具現化せんとな。それっぽい感じの衣装が思い浮かんでくるはずじゃ。好みによって多少変更できたりもするようじゃし」
服のデザインも自分で出来るんですか!?
しかも、今自分はめっちゃきれいな銀髪の少女にされているのです。なら、中二病かつ似合う服といえば当然アレでしょう。
というか、もう見なくてもわかりますが、この銀髪の原因が根源の中二病であれば、私の眼は深紅に染まって……。あ、違いますね、左目が真っ赤で右目がなんか特殊な瞳孔になってる
「
言われるがままに拳を空に突き上げ、理想の衣装を願い、叫びます。魔力とやらは私がそれに生かされているからでしょう。なんとなく動かし方がわかります。
「
アニメでよく見る変身シーンだと、服が光になって分解される描写が入る場面ですが、今回私は素っ裸なのでいきなり装着スタートです。
黒い光、ソレ以外に表現が思いつかない光が身体を覆い隠し、その上から無数の黒い鎖がまとわりつきます。
あ、なんか勝手にポーズ取らされてる感ありますねこれ、映像にした時目をつぶって微笑んでたほうが映えるかな?
……いや、誰が見るわけでもないんですけど。
まず、弾けるように四肢の光が爆ぜて、白いオーバーニーソックスと、二の腕まである黒いフィンガーレスグローブ(あの、中指で固定する手のひらを出した感じのヤツだ。あの中二病御用達の指ぬき手袋じゃないぞ!)が現れます。
そして、急に右眼の視界が塞がれます。なんか、動きに合わせてジャラジャラするチェーンの感触も感じますし、これはおしゃれな眼帯が装備されたに違いないです。というか、私そんな指定してないんですけど魔力根源とやらが勝手にやってるんでしょうか?
次いで胸から腰にかけて巻き付いた鎖がコルセットビスチェとして具現化、首にも黒いレース状のチョーカーが巻き付きます。
最後に、ドレスハットがくっついて、身体に巻き付いた黒い光が豪奢なフリルを伴って黒いドレスを紡ぎ出しました。
うっわ、これモ○ティエ系の衣装をイメージして作ったんだけど、どっちかというとかなり○ーブル寄りのゴスロリですよ!
しかし大丈夫、銀髪低身長少女にしか見えない私にはきっと似合うはずです。過去の自分みたいなイタい姿になって永遠にタンスの肥やしになったあの服みたいな状態にはならない!多分!
武器はどうしようかと悩んでいると、魔力の流れに従って勝手に突き出された両手に先に、黒い雷光を纏って具現化される真っ赤な宝石の刃の大鎌!
コッテコテだ!やりすぎだ!私の脳の中二病から卒業してる部分が大声で叫びます、でも、魔力根源様がいいぞ!もっとやれ!って言ってるからしょうがないのです!
そして、脳内に魔法少女としての名前が浮かんできます。
魔法少女 セヴンスジョーカー
……ごめん、流石にきつい無理です。まずもう精神が少女じゃないから自分から少女を名乗るのが色々しんどい。
よし、改変です。みんな魔法少女ほにゃららって名乗ってる中で自分だけ名乗りが違うのは中二くささあふれるので魔力根源様もOKを出しています!
「魔女・セヴンス、
鎌は片手で先端が地面につかない程度に持ち、左手は眼帯の前に掲げる如何にもなポーズ。
というか、この鎌大きすぎませんか?全長2mぐらいありません?
変身完了後から、魔力が活性化していくのを感じます。
何が出来るのか、どんな魔法が『創造』出来るのかを魔力根源が教えてくれます。
念のため、本当に出来るのかちょっと試してみましょう。
魔法には名前をつけたほうが効力が上がって魔力消費量が減る……と、根源に因んだ名前の方がより顕著に。
ええい、ならばつけてやろうじゃないですか!私の過去よ!黒歴史よ!唸りを上げろ。つけるぞ中二病ネーミング!頑張れ覚えたそれっぽいラテン語!
「
手の平から一条の、黒い稲妻が迸ります。ほんの少しの魔力を込めただけのそれは、直進し、壁に到達し……。
想定通りに、何も起きませんでした。
これは、魔物にダメージを与えながら魔力を吸い取るための攻撃。物理現象としての電気じゃないから何も起きなくて問題ないのです。
じゃないとこんな名前にしませんからね。○イデルンのゲージ技のHP吸収攻撃も同じ名前だけど、出典が一緒だからですよ?
「ふむ、十全に
現時点の魔力で実行可能な魔法を整理してみます。あ、この魔法なら日本まで辿り着けそうです。
日本にさえたどり着いてしまえば、あとは自宅に忍び込むなりなんなりして預金通帳を回収出来ますし、当面の生活資金はきっと大丈夫……なはずです。
「大丈夫だと思います。あの、ずっと変身しっぱなしってことは、この格好で日常生活も送らなければならないんですか?」
流石に、こんなゴッスゴスでフリフリな衣装でスーパーに買い物に行ったりするのはハードルが高すぎるのです。
「ああ、そうじゃな、おぬしの場合は特殊じゃからな・・・。ちくとまて、今権能を追加する」
さらっと権能を追加とか言ってるこの蛇は、ほんと一体何なんでしょうね・・・
「
移動して、更に魔物から魔力を奪う必要があるからの。どんな術で移動するかはわからぬが、ここから日本とやらまでの移動で消費する魔力を考えれば活動停止まで3日もなかろうて」
活動停止まで2週間って言ってませんでした?移動で消費する魔力とかは計算に入れてなかったのですね。いや、適当すぎませんかこの蛇……。
「となると、日本に移動して数日以内に魔物に遭遇できなかったらソレだけでアウトでは?」
「
そう言って蛇はからからと笑います。なんか知らない単語が出てきましたね?
「活性魔力量とはなんですか?ついでに、そろそろ貴方の正体とか質問してみたいのですが……」
自分の状況に整理が付けば、当然他の謎も気になるわけで……。
「うーむ、ここで話し込んでも良いが、教えてもおぬしが数日で亡骸に戻る可能性もあるからのぅ。何回か魔物を倒した頃にまた会いに行こうかの。まあ、
妾の名はイツァナグイ、魔法少女と魔物の元締めじゃよ」
……え?貴方が元凶なんですか?
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