page.43 施設内の設備・フォリアの管理体制について
マニュアル「看守の掟」より
『各地に設立された実験地区は、基本的にはどれも地上二階、地下三階まで建てられている。
既に君たちは地下にいて、これはここに来る前に君たちが使った「ゲート」をそのまま設置しているんだ。指定の位置までワープできる優れものだよ。
このゲートがあるからフォリアをすぐに収容できるし、カルトロンが現れた時もフォリアと職員を向かわせることができる。これからもずっと使っていくものだろうね。
でも階を移動する時は階段を使ってくれ。流石にそんなことにゲートは設置できないから。
地下と地上の移動も階段でいいなんて言わないでくれよ。あれは境目みたいなものなんだから。
どっちかと言うとカルトロンの研究を行っているのは地上の方で、地下はフォリアを収容する場所として使われているんだ。
そして、収容室は基本的にマジックミラーが使用されている。同じ部屋に複数人がいることもあるし、一人しかいない時もあるよ。
そこはフォリア同士の仲を汲まないと何とも言えないけども。
正直、地上と地下の目立った違いはそこだけだ。どちらにも治療室は設置してあるしね。地下一階と地下三階、この二つに収容室がある。
フォリアが収容室から出るのは「カルトロンが出現したとき」と「同行者がいた上で外出許可が出たとき」だけで、それ以外の時は前述のゲートを使って隔離している。
因みにどうやってゲートを設置しているのか。ゲートによる条件付けはどこでなされているのか、というのは──
秘密だ。
それで。君たちが廊下で見たであろう見るからに狂った奴は暴走しかねないフォリアで、ああ言うのは禁錮する以外に方法がない。
だから無理やり監禁するしかなくてね、気分を害してしまったら申し訳ない。憎むならカルトロンと世界を憎んでくれ、彼らは悪くないんだ。
悪くないけど、襲われたらひとたまりもないだろ?
地上と地下のどっちにも研究室とか薬剤室があって、他にも食堂、浴室などがあるね。浴室は男女別で用意している他、昨今の事情に合わせて個室もいくつかあるけども。
職員寮は地上二階と地下二階にあって、それに合わせて同じ階に上記の設備が作られている。購買部もあるし、空調も工夫してある。過ごしやすい環境のはずだよ。
いつも瘴気が漂っている風に感じるなら、それは多分暴走してる彼らの影響だ。
差別とかじゃないよ、これは本当のことだからね。
フォリアは元々カルトロンと遺伝子の構造が非常に似ている部分があって、彼らに心理的負荷がかかりすぎた場合、その遺伝子に組み込まれた破壊衝動や人間への敵意が増幅される傾向にある。
これがある地点に達すると、彼らは完全に理性を失ってしまう。人の姿を保てなくなり、見境なく周囲を襲う怪物になってしまうというわけだ。
要は、カルトロンになりかねないということ。それが周りの空気にまで影響を及ぼしているんだよ。
だから、なるべく彼らにはストレスを与えないように気をつけて。収容、とは言っているけども。彼らもカルトロンにならない限りは人間だからね。
好きなものは食べられるようにしているし、娯楽とかもできる限り提供している。外に出してあげることはできないけど、こればっかりはどうしようもない。
まあ、外出が許可されているフォリアもいるっちゃいるけど。そう言うのは大抵「人類に害を与えることができない」能力であることが条件だ。
如何にかしてこれを変えれないかと思って色々試行錯誤はしてるんだ、まあいずれ変えてみせるさ。
さて。地下はフォリアを収容する場所として作られていると言ったけど、地下二階には収容室はない。理由は単純で、職員もフォリアも四六時中同じフロアで過ごしているとストレスがマッハで溜まるからだ。
まあ、なるべくフレンドリーに接してもらってはいるけど。
因みに、私たちがいた部屋は特別な物だ。蕾くんの来訪に合わせて無理やり作った物でね、なるべく他の職員には内緒にしてくれよ、絶対に怒られるから。
フォリアには能力の他に「制約」がかかることがある。これは個人差があるけど、自分の能力があまりにも強力であるとか恐ろしいものだと感じている者にはかかることが多い。
まあつまり、倫理観がしっかりしてる奴は自分でブレーキをかけれると言うことだ。逆に、倫理観が壊れているようなのは強力な能力を持っていても「制約」がないことがある。
こういうのが居るから、フォリアには強制的に「制約」をかける特殊な首輪を付けてもらっている。
同行する職員の許可が降りれば、その許可に則った範囲で能力が使えると言うものだ。因みに、許可なく能力を使おうとしたり、無理やり首輪を外そうとした場合には──
首輪がどんどんと締まっていく。
もし取れたとしても、首輪を取った時点である種の催眠状態にかかる。取ってはいけないと言う強迫観念を植え付け、今すぐ付けなくてはと思わせる効果があるんだ。
かわいそうだけど、そうでもしないと対処できないからね。
作ったのは私だけど。
何はともあれ、これから頑張ってくれよ。
またすぐ会うことになると思う。
それまで生きているといいね。 』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます