ダンジョンより愛を込めて
碾貽 恆晟
零 序章
第1話 《配信》死霊獣ゲロニウス
ギャギャギャギャギャ 洞窟型の迷宮に不快な音が響く。
男は追われている。
「ハァ、ハァ」
男は息を切らしながら逃げている。
パーティメンバーはとうにどこかへ消え、男だけが追われている。
ギャン 骨だけでできたその魔物は曲がり角を減速しながら走る。
ガリガリガリ 巨体が一部、狭くなった洞窟に当たり、削れるような音が出る。
ヴォォォォォォォ 魔物は苛立ちからか、声を上げる。
〈おいおい、あいつ死んだわ〉
〈死霊獣ゲロニウスやん〉
〈大出血サービス♪───O(≧∇≦)O────♪〉
〈逃げろ〉
〈あぁぁ〉
〈もうダメだな〉
〈中層でイレギュラーに合っていると聞いて〉
配信欄は男の死を期待した声が多く見られる。だが、そんなものを逃走中に男が確認する暇があるはずもなく、男は息を切らせながら走り続ける。
だが、そんな時間は長く続かない。後ろには、迫り来る魔物。それが、飛び込んできた。大きく口を開け、男は逃げることもできず噛み砕かれる。
グチャグチャゴキ、と音が鳴り、魔物の、その口から赤い血が滴り落ちている。
〈あ〜😩〉
〈⚪︎んじゃった⚪︎んじゃった〉
〈グロ〉
〈オェ〉
〈まぁ、ゲロニウスさん相手によく逃げられた方だよ〉
〈グチャグチャ〉
〈骨なのに人食ってら〉
〈オロロロロ〉
〈今日も悲しい事故が起こってしまいました〉
〈ベ⚪︎トリックスいて草〉
〈音が……〉
〈。・゜・(ノД`)・゜・。〉
ゴキュ 噛み砕かれた人だったそれが飲み込まれた、と思われた。
ベチャ 骨だけの魔物だからか、それは飲み込まれることなく、重力に従って落ちた。
ヘッタ はラへっタ ニク なイ゛
落ちた肉を食らうことができず、ただ、そこら辺に撒き散らす。ついに魔物は諦めると立ち去っていった。
〈イレギュラー(半月に一回はでる)のゲロニウスさんじゃないですか〉
〈そろそろお昼の時間だったね〉
〈喋ったぁぁぁぁ!!??〉
〈ゲロニウスちゃん はぁはぁ、可愛いよ ぺろぺろしたいよ〉
〈相変わらずホラー〉
〈オひるゴハん タベレなイ゛〉
〈黙祷〉
〈お肉あげたい〉
───この配信は配信者「麦野 夏」が死亡したため終了します───
神々は戯れ、英傑たちは見守り、人々は抗う。
されど、未だ英雄は現れず、世界は混迷の道を歩む。
配信されたダンジョン
:死霊ダンジョン
基本情報
全100階層からなる、大規模ダンジョン。1〜40階層はスケルトンやゴースト、及びその亜種がいる。41〜80階層はゾンビ、グール、吸血鬼などの肉体持ちの不死系魔物のみ。81〜99階層は1〜80階層の魔物の上位種(ドラゴンゾンビ、リッチ、吸血鬼の真祖などが跋扈しており、はっきり言って階層が5つほど突き抜けているところもあるので階層の定義なんてあってないような場所)。100階層、つまりダンジョンボスは死神。(幾つもの系譜の冥界、死を司る神々が悪ふざけで作ったダンジョン。このような、似た性質を持つ神々が協力して作ったダンジョンは意外とある)
攻略者なし
今回の主人公(?)
名
:死霊獣ゲロニウス
系統
:死霊獣、系譜なき魔物
説明
:全身が骨のみでできているスケルトンの亜種。パッと見た感じ恐竜の骨でできた魔物だが、このような恐竜は地球上に存在したことはない。完全物理攻撃の魔物で、いつも飢えて、肉のある餌を探している。半月に一度リポップし、倒されない場合、3日すると勝手に消えてくれる良心的なイレギュラーなのだが、良心的な設定だからか倒されたことは未だ一桁にとどまる。
系譜なき魔物……神々が新たにダンジョンのために創った魔物につけられる系統
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