変えるための行動

それから、俺はまず周りの人と仲が良い人を作ることを目標に色々な人に話しかけるようにした。


どんな人だろうと、どんな身分だろうと、相手がどんな態度を取ろうとも、積極的に話しかけた。


そのタイミングは話し合いの活動の時、他の人に聞きたいことがあった時など様々だ。


その結果、かなりの人と仲良くなれているような気がしたが一部の大企業の社長令嬢の娘からは媚を売っているだの色々言われるようになった。


一方、栞も俺が頑張っているところを見てか、色々な人に話しかけてくれた。


俺が移動教室の時に栞が他の人と仲良さそうに話しているところを見たのだ。


今までは1人で本を読んでいたとは思えないほど、周りに人が集まっていた。


いじめといういじめは周りに人が集まるようになったから、お互い被害は全くなかったが、俺たちを見た時に変な視線を向けられたし、内緒話をされたり、裏でデマを流されたりするくらいだ。


まぁ、別に気にするほどでもないだろう。


お互いによく話す人ができたからと言って、栞と話さなくなるなんてことも全くなかった。


昼休みは相変わらず2人で屋上で弁当を一緒に食べている。


それだけが素でいることができる唯一の楽しい時間なのだ。


組織を作るのであるならある程度のカリスマ性や真面目さがないといけないのだが、本当の俺はそれとは真逆だ。


だらけるのは好きだし、よく逃げるし、少人数でいるなが好きな、陰キャだ。


だから、みんなに見せる姿は本当の俺の姿ではない。


だから、栞には本当に感謝をしているし、本当の自分の姿を知っているのは栞しかいない。


「疲れたぁーー!」


俺は昼休みいつものように屋上で横になってそう叫んだ。


「大丈夫?」


栞が顔を覗き込ませれそう聞いて来た。


「大丈夫大丈夫。ただ、やっぱりずっとあの感じていると疲れるね」


「そうだね。私も頑張っているけど、少しボロが出そうになることもあってビクビクしちゃうよね」


「本当にそうだよね!でも、よく話しかけてくれる人が増えたね」


「確かに」


本当に今はお互い20人くらい話せる人ができたのだ。

普通の人からしたら少ないかもしれないがこの学校は派閥がある上に僕らは元ぼっちだ。


ここまでいくのは完全にお互いの努力からくるものだと思う。


「二学期始まった頃には2人ともぼっちだったのに一か月半でここまで慕ってくれる人が増えるとは思っていなかったよ」


「それはきっと楓の頑張りのおかげだよ。私もみんなの前での楓を見たとき驚いたもん」


「ほんとに!?ちゃんと演技できてたんだ」


それに少し俺はほっとした。


やっぱり、なりきっているとはいえ他から見たらどう見えるのかという部分は他の人にはわからない。


そういう意味では客観的な意見は本当にありがたい。


「でも、私は素の楓の方が好きだよ」


「えへへ、私も今の栞が好きだよ」


「ありがとう」


しかし、栞はいい意味ですごく変わったし、前に比べて明るい印象になったから余計に可愛く見える。


「でも、最初はこんなことになるなんて思ってもいなかったよね」


「うん、そうだね。友達ができて、慕ってくれる人もできて、そしてこれから大きな革命を起こそうとするんだもん。想像できるわけがないし、何より楽しみだね」


「うん!そうだよ、これからが本番だから、頑張らないと!」


本当に最初学校に来た時とは思えないくらいに変わった。


しかし、これから物語は動き出すんだ。


これから変えていくんだ。


俺たち2人を中心として、この学校を変える!


「てことはもしかして?」


「明日、みんなに隔たりをなくすために組織を作ろうと言おうと思う」


ついにこの時が来た。


そこまで生徒会選挙まで時間があるわけではない。


ある程度話せる仲間が増えて来た今しかチャンスはないと思ったのだ。


「そうなんだ。反対する人でないかな?」


「出ると思うけど、それはそれでしょうがないよ。やっぱり社長令嬢を敵に回すのは恐ろしいからね。でも、関係ないよ。私達がこの革命を成功させるっていうのは絶対だから!」


「うん、一緒に頑張ろうね!」


「うん、よろしくね」


そう言って、お互い握手した。


不安や恐怖が全然ないわけではない。


でも、きっと栞とならこの学校を変えていけるという自信だけはある。


栞とこの学校とそして国を変えるんだ。


「それにしても名前何にする?かっこいいやつがいいな」


「可愛い方が良くない?」




そんな感じで次の日から俺たちはよく話しかける人に相談して組織を作り上げた。


結局名前は決まらず、おいおい決めることにした。


最初の人数は30人に話して10人弱しか賛同してくれる人はいなかったが、その中に中小企業の社長令嬢もいたおかげでその人数は半月で2年生の中で250人中100人にも及んだ。


もしかしたら、他にも不安に思っていた人や令嬢という重圧に耐えられなかった人は多かったのかもしれない。


しかし、他学年はまだまた少ない。


でも、1か月半後にある生徒会総選挙にはまだまだ間に合いそうだ。


そんな感じで順風満帆に行っていると思っていたが、それはある二つの出来事によって崩れ去っていくのだった。

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