栞の思い

私にとっての学校は償いだ。


いつでも忘れたことはない。


私のせいで色々な人を不幸に巻き込んでしまったあのことを。


今でも夢に出てくる。


名前を呼ぶ声、泣き叫ぶ声、助けを求める声。


そして、あの瞬間。


全ては自業自得だ。


私が”お母様””お父様”から除け者扱いされるようになったのも。


保険令嬢と呼ばれるようになったのも。


この学校に通うことになったのも。


そして、全てはあの子のためのでもあるのだ。


そんな気持ちで向かう学校なんて楽しいはずがなかった。


周りは明るいお嬢様ばっかりだ。


私は人と目を見て話すことができない普通の人だ。


でも、そんな私に優しくしてくれた唯一の人がいた。


だからこそ、心が折れずに済んだ。


そんな感じで一年と少しが過ぎ、夏休みが終わり学校が始まった初日だった。


私の学校生活に変化が起きた。


それは私が今まで一度も勉強で勝てたことがない孤高の存在だと思っていた楓と話すようになったことだ。


楓は夏休み明けからまるで人が変わったかと思うぐらい性格が明るくなっていた。


人と話したことはない、”お姉ちゃん”が勉強を教えてと言っても無視しかしたことがないあの楓が勉強を教えたのだ。


最初は私も”お姉ちゃん”も媚びを売るためかと思ったが、そうでもなさそうだった。


それからは今まで一人ぼっちだった学校生活が楽しく感じてしまうようになってしまっていた。


性格が変わった楓を見て、自分もおどおどしてはいけないと思って努力もした。


家で”お姉ちゃん”と話したい内容も増えて、食卓が明るくなった気がした。


こんな日々が続けばいいなと思っていた。


でも、いつも通り楓の元に向かおうとすると坪久田さんに声をかけられ、そして強制的に校舎裏に連れてこられた。


抵抗はしたが、3人に私一人が抵抗できるはずもなかった。


そして、


「あなた、もう少し身の丈を知ったらどうかしら?」


私は校舎に向かって押され、壁にぶつかり、すわりこんだ。


「身の丈とはどう言うことですか?」


ここで怖かったり、オドオドしたりしてはいけない。


私は気持ちをできるだけ抑え、堂々とした様子で聞いた。


「あなたも一応神楽家なのでしょ。じゃあ、庶民なんかとつるむのはどうかと思いますわ」


「誰と話そうが私の勝手じゃありませんか?」


これに関しては本心からそう思う。


庶民とか令嬢とかただの生まれた家庭の違いなのだ。


「ふん、そう言うだろうと思ってましたわ。令嬢のをないようなあなたはこの学校にはいりませんわ」


「じゃあ、どうするつもりですか?私は意見を変えるつもりはありませんし、この学校も辞めるつもりもありませんよ」


私は少しに睨みつけた。


「ふん、勝手しなさい。ま、いつまでそれが持つか見ものだわ」


「私は一生屈しません!」


「じゃあ、まずは手始めに」


そう言って坪久田さんは手を挙げ、私に振り落とした。


これは罰なのだ。


バシン!


大きいそんな音がしたが、私は痛みを感じなかった。


何があったのかと思い、ゆっくり目を開けた。


そこには坪久田さんの手を受け止める楓の姿があった。

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