大好きな双子の妹の頼みで妹との代わりに女子校に通うことになったんだが
ほしくず かなた
前編
第1話俺に女子校に行けだって!?
「ねぇねぇ、私の代わりに学校行ってよ」
俺は家で料理を作っていると妹からそんなことを言われた。
「なんでだよ、せっかく学校に行けてるんだ。たくさん学んでこいよ」
「え〜、だって学校で習うところもう全部勉強終わったんだもん」
楓は俺に比べてすごく優秀なのだ。彼女自身の努力もあるが、何より才能があるのだ。
なにをやっても少しの時間でほぼマスターしてしまうし、一回やったことはほぼ衰えることがないのだ。
だからこそ、両親からその能力を期待されて、1日のうち16時間もつまり、ほぼ寝る時間以外ずっと色々なことを教えられてきた。
そういうことから、俺は楓と家から飛び出し、2人で暮らすことにしたのだ。
「まじか、やっぱ楓は流石だな。どうせ今回のテストも一番だったんだろ」
「もちろんだよ。お兄ちゃんが私のために一生懸命頑張って働いてる分、私も勉強頑張らないと行けないからね」
楓は高校2年生でこの地方でトップレベルの学校に通っている。
そんな中で一番とは楓は将来有望だ。
しかし、そんな高校はやっぱり学費がすごく高い。さらに学費を親に借りれないので俺は中卒で働いているわけだ。
「でも、お兄ちゃんもずっと働き続けるのもダメでしょ」
「そうか?俺はずっとこのままでもいいと思うんだが」
「ダメだよ、やっぱお兄ちゃんも学校に行くべきだよ」
「でも、お金がないからなぁ。でも、確かにそうだな。楓が働けるようになったら、高校卒業試験でも取って大学行こうかな?」
その言葉を待ってましたという風に楓はキラキラ目を輝かせながら、手をぱんと叩く。
「そう、そこでなんだよ。私の代わりに学校行かない?」
キラキラ目を輝かせながら、楓は手をぱんと叩く。
「なんでだ?」
本当になんでそうなった?
学校に行くことが大切なのはわかる。
だが、だからと言って楓の代わりに学校に行くのはおかしくないか?
そう思い、楓の方を見ると楓は両手を腰に添えてちょっとしたドヤ顔みたいなことをしていた。
「ふふふ、実はねお兄ちゃんにも学校に通って青春を楽しんで欲しい!っていうのは建前で実はね、やりたいことができました!」
「お!そうなのか!?」
楓は昔から親から「やれ!やれ!」言われて、いろいろなことをしてきたから、自分から興味を持ってないかもすることがなかった。
そんな楓が自分から何かをやりたいと言って、そのために行動しようとしていることは俺に取ってはこれ以上にない喜びだった。
「だけど、学校に行ってたらそれができないから、お兄ちゃん、少しの間でもいいから私の代わりに学校行ってくれない?」
そんな楓のお願いだから、俺はできるだけ聞いてあげたかった。
ま、楓のお願いを聞いてあげたいのはそれだけが理由じゃないのだが。
実は俺は楓のことが大好きなのだ。
自分で言うのをなんだが、俺はまじのシスコンである自覚がある。
だから今すぐにでも、楓の願いを聞いてあげたかった。
だが、さすがにかわりにがっこうにいくのはむりがありすぎるだろう。
「ちょっと待てくれ。楓が言っている学校は女子校じゃないか。絶対にバレる。絶対大変なことになる」
「大丈夫!大丈夫!だってお兄ちゃん、双子だから私に容姿そっくりじゃん。しかも、声も高いんだからカツラ被って、私の制服を着たら絶対にバレないって」
確かに声も顔も似ているが、そう言う問題ではない気がする。
「いやだよ、大体お前みたいな頭ないんだから、授業に絶対ついていけないって。」
俺は妹と比べられて、ずっと親に怒られてきた。
それでも認められるために楓よりかは劣るがそれでも人一倍勉強してきた。
それでも5段階評価の内、3を出さないようにするだけしかできなかった。
5も1つか2つであとは4だったのだ。
今までオール5しか取ったことのない楓とは格が違うのだ。
「そこは安心して!私が勉強をしっかり教えるし、私のお兄ちゃんなんだから、絶対行けるって。」
そう言う楓からは絶対俺を学校に行かせるんだという気概を感じた。
本当に今までこんなことはなかった。
ここまで楓がなにかに対して、全力で取り組もうとしているところを見たことがなかった。
そんな楓を見て俺はついにうなづいてしまった。
「そ、そうか」
「私のお兄ちゃんは世界一すごいんだから」
「そう言われたら、大好きな妹のためにやるしかないか!」
俺はうなづいてしまったことから若干投げやりになりながら答えた。
「言質とったからね」
楓は腕を前に出すとそこにはボイスレコーダーが握られていた。
「待てって、今のはジョークみたいなもんじゃないか!」
「大好きな妹のお願い聞いてくれないの?」
楓は俺の近くまで寄ってきて、上目遣いでそう言ってきた。
シスコンが妹にここまで言われて断れるはずがない。
「ぐぬぬ…」
が、俺はなんとか耐え切った。
「お兄ちゃんと死ぬまで一緒に一緒にいてあげるから」
「行きます。行かせてもらいます。」
「やったーーーー!!」
そうは言ったものの、両手を上に上げてピョンピョンと飛び回る楓を見て、もう俺は少し後悔し始めていた。
「ていうか、その前にそこまでしてやりたいことってなんだ?それを聞いてからじゃないと許可できないぞ」
楓に限ってないと思うが、これで遊びとか言われたら、たまったものじゃない。
「あのね、実は家でできる仕事をしようと思って」
「仕事?金の心配をしてくれてるなら、俺が働いてるからいいって…」
かなりキツくはなるが楓が働かなくても、高校を卒業して働けば、大学に行かせられるくらいの貯金はある。
楓がそれで学校を行くのをやめるのであれば、俺が楓の代わりに学校に行く必要がないし、学校を優先して欲しいと思うのだ。
「だって大学費用だって結構ギリギリでしょ」
楓のなんでも見透かしたような視線が俺に向けられる。
「それはそうだが…」
「だから、私がたくさん稼ごうと思って」
「でも、今の稼ぎでもお前の大学費用が足りなくなることはないぞ」
俺がそう言うと、楓は突然俺の両手を握ってきた。
「違うの、私、お兄ちゃんと一緒に行きたいの」
「大学にか?」
楓は笑顔で返事をした。
その笑顔はやっぱり可愛かった。
俺じゃなくても、兄が妹を好きになってしまうのはしょうがないだろう。
もしかしたら、学校でもモテモテなのかもしれない。
「そうか、それなら大学費用は足りないな。じゃあ、一緒に働けばいいじゃないか」
「だって、お兄ちゃん、勉強全然できないじゃん。高校だって行ったこともないのに」
それはそうだ、中学を卒業してからすぐに俺は働き始めたのだ。
高校の勉強なんて少しもしたことがない。
「それは確かに」
「私は高校の範囲は全部勉強終わってるから大丈夫だもん。それにお兄ちゃん、コミュ障じゃん。」
「うぐっ」
確かに俺は楓以外の人と話すのが苦手だ。
だが、決してコミュ障ではないと思っている。
「だから、私が恥ずかしくないように高校を練習だと思って」
楓はまた、「お願い」と両手を合わせて上目遣いでお願いしてきた。
「わかったよ、行けばいいんだろ」
俺は楓に根気まけした。
「そう!それでこそお兄ちゃんだよ」
「でも、楓がお金を稼げるって保証は…いや、楓だもんな。俺なんかと比べ物にならないくらい稼げるだろ」
楓はすごく頭の回転が早いし、優秀だ。
きっと俺の考えつかない方法で俺の何倍以上のお金を稼いでくるだろう。
「もちろんだよ。私を誰だと思っているの」
「俺の大大大好きな天才な楓様です!」
「そうだとも、そうだとも」
そんなノリで結局俺は妹の代わりに女子校に通うことになった。
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