負けから始まるセカンドライフ ~恋せよ乙女~
ボンゴ
プロローグ
ーパイス城ー
この国の名を冠した石造りの荘厳な城。
バルコニー下の庭園には、多くの有力諸侯が集められていた。
やがて痩躯の男がゆっくりとバルコニーに姿を現した。国王である。
国王の登場でざわめき始める庭園の諸侯達。
国王は沈黙したまま、ゆっくりとバルコニー下に集った諸侯を眺める。
やがてざわめきが止んでいき、静寂が訪れると国王は口を開いた。
『忠実なる臣民諸君よ。今日は皆に重大な決断を伝えるために集まってもらった』
ゆっくりと国王は語り始めた。
誰一人国王の演説を邪魔しようとする者はいなかった。
『我々は三十年前の内乱で多くのものを失った。国は疲弊し、復興させるために三十年間という長い時間を費やした』
静かに、しかしハッキリとした口調であった。
『過去に起こってしまった内乱は仕方のないことだ。繰り返さぬように教訓とせねばならない。…だがしかし!許してはならない行いもあった!皆も知っておろう、卑怯にも突然和平協定を破り、疲弊した我々から領土を奪い取ったジブルの侵攻のことだ!』
静かに語っていた国王の演説に熱がこもる。
力強く拳を振りかざし、集まった諸侯を鼓舞してゆく。
『我々が復興に三十年という長い時間をかけることになったのは何故だ?…卑劣な手段でジブルに穀倉地帯を奪われたからだ!内乱が平定された後、長きに渡って飢餓に苦しんだのは何故か?…全てはジブルの領土欲による侵攻ためだ!』
演説は怒りを帯びたような口調になり、聞く者の心を揺さぶった。
拳を突き上げ、歓声を上げて賛同する者が増えてゆく。
『復興が出来たのは忠実なる臣民である皆の力があったからである!悲願であった復興を成し遂げた今、我々は奪われた領土を!誇りを!取り戻さねばならぬのだ!これは聖戦である!我々の子が、孫が、餓えることなく生きてゆく為の戦いである!』
聴衆の歓声は、バルコニーにいる国王の身体を震わせるほどに大きくなっていた。
熱狂的、狂信的、そういった感覚と一体感がパイス城に満ちていた。
『我々はジブルに宣戦布告をする!卑劣な手段で奪われた領土を取り戻す時が来たのだ!皆の力を貸してもらいたい!皆の手で後の歴史に刻まれるであろう偉業を成し遂げようではないか!』
『『オォォォォ!!』』
パイス城は異様な熱気と歓声に包み込まれた。
そして軍事侵攻の幕が開けるのであった。
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