第230話 チームの中心

試合直前、ロッカールーム。

残り八校になり、ロッカールームが解禁された。試合40分前から使用可能な運営のお気遣い。

キャッキャ騒いでそうな高校生も今日は静か。


ロッカールームに入る直前、紅緒さんが挨拶に来てくれここまでの健闘と心強い励ましの言葉を貰った。

承は良い娘に想いを寄せられてる。親友の周りの女の子たちの性格や人間性は明らかに見てわかる善性と思いやりがある…香椎さんも紅緒さんも伊勢さんも。


ほんわかムードもロッカールームに入るまで。

ロッカールームでは悲壮感にも似た緊張感が充満している…。


誰かが何か言う、周りが笑う、沈黙。

これを繰り返している。


監督が声かけて周ってるけどあんまり効果は出ていない。

…唯一、この場で闘志を露わにしているのはキャプテンだけ。

キャプテンだけは自分の中の何かを抑えるような、逸る気持ちを抑えるような集中を心掛けているのがわかる。


愛莉先輩も緊張の表情で、

マネたちに指示を出す。


愛莉『ほら!みんな緊張ほぐして!

コート内なら声しか飛ばせないけど今なら肩叩いたり、目を見て話せる!』


愛莉先輩は同学年のフォローをマネに指示して自分も三年の先輩の緊張著しい選手の手を取って、


愛莉『…出し切って来よう。

応援しているよ。頑張って…!』


ベンチに座る選手の前にしゃがみ込んで目を合わせ愛莉先輩は手を握る。


三年『あ!俺!手汗!』


愛莉『大丈夫!

緊張するのはこの試合の重要性と相手をわかってるから。

何も考えないで適当にやってたらこうはならない。

大丈夫、きっと通用する…。』


三年『…あ、あぁ、ああ!』


愛莉先輩は頷くと次の選手に同様な、でもひとりひとり違う言葉で声かけて周る。


マネ子『…宏介くん?』


…同じ二年生のマネ子があまり主張しないマネ子が一生懸命声かけてくれる。

横の康司と目が合うけど目が笑ってる。

この娘も一生懸命なんだよな。


『…ありがとう、力貰った。

昨日の試合映像もすごく見やすかったよ。』


マネ子は照れて私に出来ることしただけって答えた。

…なら俺たちも俺たちに出来ることをするだけ!


見渡せばまだ激励を受けてる選手も多い。

一年はベンチ入り2人なんだけど…


マネ美『がんばればぁ?愛莉先輩悲しませるなし?

猿田くんはぁ?大きさだけなら負けてないっしょ?』


マネ美はスマホいじりながら熊田に声をかけてた(?)

猿田って誰だ。


熊田『…熊田です…

…これはこれで…なかなか…!』


先輩は熊田くんの将来が心配です。


それぞれの学年のマネージャーが声をかけて回って大体回り切ったところで…。


愛莉『監督!そろそろ!』


監督『よし、じゃあ基本プランを…』


キャプテン『…あっ…!』


キャプテンが手を伸ばして何かを言いかけた?

※愛莉の激励の順番最後は自分だとワクワクして待ってたのに自分の手前で打ち切られてしまった内藤くんの魂のうめき声。

例 ラーメン屋さんで行列並んでて自分のところで『すいません、麺が切れちゃいまして…』『えっ…』ってシチュエーション。


監督からは特別なことなは無く、チェック厳しく相手を自由にさせない。

今日も走力勝負で消耗戦に持ち込もう!ボール奪ったらカウンターも狙っていけ!って。



監督『…キャプテンなにかあるか?』


周囲の目線がキャプテンに集まる。

キャプテンは困ったなって顔して、



キャプテン『オレはいつも寝る前にこの日を想像していた…。』


…ん?



『北翔が…王者高嶺農業とインターハイ出場をかけて戦うところを毎晩思い描いていた…一年のときからずっとだ…!』


最後はニヤニヤしながら…周りを見渡しながら、



『赤木キャプテンじゃねーか!』

『一瞬、ん?ってなったわ!』

『道理で聞き覚えが!!』


他の三年にもみくちゃにされるキャプテン。

キャプテンは笑いながら、


キャプテン『子供の頃から読んでた名作のあの人と似たシチュエーション!

いや、まじで彼とタメになったって信じられないし、自分がキャプテンになって決勝リーグ賭けた試合に臨むなんてな?』


口々に同意の声が聞こえる、わかる。

漫画の登場人物ってずっと年上な印象あるよね。


キャプテン『やる事はいつも一緒!

ボールを持ったら点取りに、相手がボール持ったら守るだけ!

一昨日も昨日も同じことだろ!』



キャプテンはニヤリと笑う、



キャプテン『会場は高嶺農業が勝つと思ってる。

…現に半年前も大差って言うか倍以上の差で負けてる。

これでリベンジ出来たら美味しいよな?ドラマだよな。

…俺はずっと高嶺ともう一回戦うのを想定してこの半年鍛えてきた…!

その機会が回ってきた!』



…キャプテンはそんな事を考えてずっと…!

高い目標を見据えて努力してるのはわかってた…でもずっと…!



キャプテン『もう待ちきれない!行きましょうか?』


…このチームのキャプテン、エース、精神的支柱は間違いなくキャプテン、内藤拓実だって思い知らされる。

キャプテキャプテンを中心にコートに入り、ウォーミングアップを始めた…!



この試合でキャプテンシーとは?チームの柱とは?俺は教えてもらうことになる。

内藤拓実って漢が全てを出し尽くす1日を目撃する。
















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