第162話 ふたりの認識【side友永ゆかり】
4月、ようやく進級叶った私と皐月は同じクラスになった。
本当に危なかった、留年するところだったよ。
皐月はニコニコで、
『春休みは課題が多かったけど、その分とっても勉強になったわ。
今年はキチンと良い成績獲ってみせる!』
なんて言ってる。
新クラスは8組。北翔高校で二年生は1組以外は横並び。9組はスポーツ科なのだが進学文系の8組に同じクラスだった子は少し居たけど話す間柄じゃなくて。
皐月も同じだった。まあ敵が居ていじめられるよりは良い。
…ただ皐月も私も悪名が広がっていて特別新しい友達が増えたりしないね。
さて新学年になり、数日が経った。
少し慣れてきた頃、私と皐月は無理に友達を作ることもせずに2人で過ごす事が多い。皐月はちょっと考え方はアレだけどストイックに美を追求するし、誇り高く傲慢さはあるけど私には無い強さも持っている。
…もちろん宏介くんにした仕打ちはどうかと思うけど…。
そもそも私は人に言えるような人物では無いわけで。
最近ふたりで話してて共通の疑問がある。
それは出会った頃や険悪だった頃の事。
あんなに仲悪かったのに?なんで今こうして友人になれたんだろう?ってふたりで話し合う事がある。
一年生の最後の方この話題が何度も出て来てこれが大変に面白い。
え?そんな事で?とかそんな事を思ってたの?みたいな事で盛り上がる!
…しかし留年の危機、目の前の脅威に無駄話をする暇は無くその頃棚上げになって居た重要なテーマだったの。
☆ ☆ ☆
私は前々から疑問に思って居た事があった。
昼休み、教室の端っこで私は皐月とその話をすることにした。
『ねえ皐月?前から聞きたい事があったんだよ。』
皐月はニコって笑って、
皐月『何?ゆかり?』
私はシリアスにならないように、
『1番最初に出会った時さ?私を馬鹿にして笑ったじゃない?』
16話笑う者、笑われる者 参照
※だいぶ前。
皐月はバツの悪い表情で、
皐月『…ごめん、あの時はそう思っててて今は違うよ!本当なの!信じて!』
皐月は必死に私に謝る。うん、わかってるって。
その事じゃ無いんだ。
『大丈夫、今更そんな事を気にしているわけじゃ無い。
あのあとさ?その事で謝らせたし?』
59話ミスコン本戦後半 参照
皐月『超ゆかりがキレてあの罵詈雑言録画してるから謝らないと皆にバラしてしまうって言われて…謝ったっけ。』
そうなんだよね…。私が気になってたのは…。
『…皐月、気を使わなくて良いから本当の事を教えて欲しい。
…夏休み会った時に罵詈雑言で、
『私が告白した事を告られた男子がおもしろおかしく吹聴してた』
って言ってたけど、本当なの?』
皐月が息を呑む。
目線が動き落ち着きなくなるけど…、
皐月『…ゆかりに嘘は言いたく無い…。
九頭くんが…補習の時に言ってた…。
同中の、デブ女が血迷って告ってきたって…。』
申し訳無さそうに、言いにくそうに。
でも断言した。
私は九頭くんに説明受けた時は…
九頭くんは三島さんに告白現場を目撃され、説明したのに三島さんが酷い吹聴して九頭くんが口汚く罵って笑い者にしてる!って広めたこと、
私は同じ中学の同級生で大事に思ってたから…口下手で、上手く私にその気持ちを伝えられず手酷い言葉に聞こえてしまったかもしれないとしゅんとしながら再び謝ってくれた。
第62話 和解 より。
皐月は慌てて、
皐月『言ってない!私は九頭くんが言ってたのを鵜呑みにして!
もちろん謝るし、今はゆかりを信じてる!
信じて!九頭くんに聞いた事で笑ったんだよ!私は自分から何かして居ない!』
皐月が泣きそうになりながら私に謝り、当時の真相を教えてくれた…。
はは、やっぱりそうなんだ。
やっぱり九頭くんは…。
『皐月、私さ?こないだ夏にダイエットの話したでしょ?
九頭くんが助けてくれったってミスコンで言ったけど本当は宏介くんが助けてくれた事。
…それを九頭くんが助けてくれた!って事にしてバレたから皆んなに叩かれて…でも助けて貰ったと思う事もあって…。』
皐月『うん。』
『普通のケーキの3割のカロリーなのに普通の味のケーキを教えて貰って…。』
皐月は痛ましいものを見る目で、
皐月『いや…それは無いわ…。』
私も苦笑いしながら、
『はは、そうなの。
ひとりでその喫茶店で店員さんに聞いたら、
『え?普通のケーキですよ?』
って言われて…なんなら普通よりカロリー高かった…そりゃ美味しいでしょ。』
そりゃそうだ。普通のケーキだもん普通に美味しいに決まっている。
やっぱりか…。
こんなの騙される方が悪いし、なんの言い訳にもならない。
…九頭くんは私の告白を面白おかしく吹聴して、ケーキのカロリーなど嘘をついてその上で宏介くんを下げ自分を上げたんだ。
自業自得だけど私はそんな嘘で塗り固めた王子様の手にまんまと乗ってあんなに良くして貰った宏介くんを手ひどく裏切って捨てたんだ…。
自分の愚かさが目も当てられ無い…。
九頭くんが悪いんじゃ無い、私に隙がありすぎて頭が悪すぎて坂道を転げ落ちるように汚れたんだって痛感した。
…こうなるともう一つ残ってた疑問も聞かずにいれない…!
『じゃあ?文化祭前に上履きを隠されたり、机にいたずらされて…あれは皐月がやったの?』
皐月は驚いて大慌てで否定する!
皐月『そんな、そんな事しないよ!
本当の本当!だって!そんな事するほど当時ゆかりの事を知らないし!
もちろんゆかりに嘘はつかない!本当にしてない!』
???
…本当にして居なさそう…?
九頭くんがしてた…?
ううん、九頭くんはあの時私を守る!とか言って一緒に登下校してたよ…。
62話 和解 63話嫌がらせ 参照
私は九頭くんが嘘をついていたのでは無いか?って少し前から思っていた。
進級したこの機会に真相が知りたくて皐月に打ち明けてもらおうって思って一部は予想通りだった…しかし想定外の部分が出て来た…?
じゃあ?机のイタズラ、上履き隠したのは誰なのだろう?
…私をつけて襲いかかって来たのは一体誰?
ここでお昼休みが終わり、話は放課後に持ち越した。
皐月…嘘は言って居ないよね?
言いようの無い不安としか形容出来ない感情を私は持て余した。
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