第117話 友だちの形【side三島皐月】
私さ、人当たり良くしてたつもりだった。
…身近で1番すごい女の子、香椎玲奈がそうだったから。
香椎玲奈派閥に居た頃私は一軍女子だった。
香椎『三島さんは私が気付かない事に気がつくね?』
綺麗で可愛い、スポーツ、勉強、諸技能もろもろ。
完璧女子なんて呼ばれる私らの代では伝説的な娘。
クラス分かれてからはそんなに絡みもないし、そろそろ私のグループを作る頃合いなのかも?って思ったけど思ったような陣容を整えられず私は2軍以降に甘んじてきて…。
だから基本『友達』ってなってやってる、私がランク下げて受け入れてるって思ってた。
だから、高校行く時、北翔行くんだから?それより下の学校の友達だったから基本皆んな切り捨てたし、惜しくなかった。
北翔に入ってから新しく私に相応しい友達作れば良い。
…そう思ってた。
高校デビューに成功して、一気にカーストトップ獲った事で自信を持ち、今まで上手くいかなかった、悔しい思いをした理由を宏介だと思った。
あんなに私が好きで、フった時やその後会って話した感触からボロボロで、弱った宏介を見るのはちょっとだけ罪悪感あったけど楽しく思い知らせてやった気がした。
正輝に処女あげて、カーストトップだったあの頃から半年ちょっとで私を取り巻く状況は著しく変化した。
私は一軍女子から陥落してぼっちになった。
取り巻きや友達はみんな離れて行った。
正輝は実家が没落して、本人も謝罪会見とかで炎上して、私たちは付き合ってるけど冷え切った。
秋に私がさらに上へ進むためのミスコンで、まさかのバカにしてたデブに足元を掬われた。
私はその友永ゆかりを恨んでた。
私に容姿で勝った事、そんな素材なのに平気で元のデブに戻ったこと。
あの見た目だけの九頭と付き合ってること。
どれも気に入らなくて、腹立たしくて、会った時八つ当たりもした。
私が生徒会長の一ノ瀬先輩を利用しようって策を一ノ瀬と永瀬に邪魔されてさらにその事で凹んで、傷付いて、自暴自棄になってる私を…ゆかりは何も言わずに助けてくれた。
…俺カレで黙って一緒にご飯食べてくれて…。
何も聞かないでくれて…。
進級を賭けて苦手科目教えあおうって言ってくれて…。
ハッキリ言って、私はすっかりゆかりに夢中。
…レズとかじゃないの。
器の大きさ?度量?
ゆかりは何もかも体型もだけど、
どっしりメンタルが揺らがない。
泰然自若っていうのかな?
私なら、あんなに太ってるのは我慢ならないし、怠惰で醜いダメ女って思っちゃうし、思ってた。
でも…。
ゆかり『見た目ってそんなに大事かな…?
…大事か…。』
私の価値観を尊重してくるれる…。
私もわかってる、こだわりすぎだって、それが全てじゃ無いって。
でも、それを認めたら…今までの努力や過去を否定するようなもので…。
でも、そんな話になった時、
鏡貸して?手渡すとゆかりは、
ゆかり『ふっふっふ!太ってる!確かに太ってるね!
こりゃ太った!』
おかしそうにふっふっふ!って笑った。
自分が太ったって自嘲するでも無い、まして自重するわけも無い。
認めないとかじゃなく受け入れてる。
女の子でしょ?良いのそれで?
せっかく、痩せれば私と勝負できるほどの女の子でしょ?
私はそれを主張する。
ゆかりはにっこり笑いながら、
ゆかり『…皐月から見て。
…私はそんなに不幸?
そんなに醜い?可哀想?』
風に吹かれて靡く髪、中庭でおやつのポテチを食べてるゆかりはとても幸せそうで…。
幸せそうに微笑むゆかりは菩薩像みたいな穏やかで慈愛の表情を浮かべてて…。
『…そんなことない!
…美しくすら見えるわ…!』
私がまさか太った女に美しいって言う日が来るなんて?!
私は自分に驚く。
忖度や遠慮、媚びて言ったわけじゃない。
自分の本当な気持ち。
不自由でがんじがらめでぼっちで留年しそうな自分と比べてなんてゆかりは自由で美しいことか…!
※ゆかりも留年の危機です。
それから、ゆかりと一緒に居ることは増えた。
…気が向けば話すし、話さない時はそのままお互い無視してるように見えそうなほど話さない。
でも、それで落ち着くし、心地良い。
…こんなの初めてだった。
友達ってていで上下があり、忖度したり、同調圧力があったり、付き合いや接待みたいな政治力も必要なのが友達付き合いで、だから上に行きたかったってのもあった。助け合うなんて幻想でしょ?そう思ってた。
ゆかりはそうじゃない。自然体、とにかく自然体なのだ。
…そういえばこう言う形初めてでは無いことに気付く。
…元カレの宏介と親友の立花。
ふたりはこうだった。
熱く討論したり、バカ言い合ったかと思えば同じ部屋で黙ってふたりで違う本読んでて。気まずく無い?って聞いたら、
宏介『…むしろめっちゃ落ち着く。』
って言ってて、意味わかんないって思ったけど今は少しわかる。
…最近色々な事に気付いてて、それが宏介の行動に意味があった、考えがあったって思い知らされるの地味に不快…。
ま、いいや。
とにかく、目の前の傷付いてるゆかりを私は放っておけない。
ゆかりは健気に私に気を使わせないように無理して食べてる…!
※奢りだから。
私…ゆかりと進級したい!
最近は学校楽しく無い、意味あるのかな?そう思ってた日々だった。
ゆかりのおかげで今は毎日が楽しい!
留年するわけにいかない!
私はゆかりと期末試験に向けて準備する!
初めて友達の意味を知ったから…!
…イヤだけど宏介に私を北翔に連れて来た責任を追求してなんとか勉強教えさせれないかしら?なんか言いがかりつけて…?
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