第十八話 エリオットの死と再生

 ナタリーの死後、ヘンデル伯爵と夫人は静養と称して、自分が治める伯爵領地へと戻って行った。ケイトは勉強と学院での総会長としての勤めがある為に屋敷に残り、長兄のマルクは田舎の領地は嫌だと残り、ソフィアとローガンも当然残った。

 エリオットはヘンデル夫妻に領地に連れて行って欲しいと懇願したが、両足がなく全てが人の手を煩わせるエリオットを伯爵夫妻は迷惑そうな視線で見下ろし彼の願いを却下した。

「エリオット様のお世話は私が。ローガン兄様もいらっしゃいますし」

 とソフィアが願い出ると、夫妻はソフィアを睨みつけてから、

「それがいい」

 とだけ言った。

 エリオットは絶望の表情をし、ソフィアはほくそ笑んだ。


「以前は田舎なんてバカにしてたのに? 一緒に行きたかったのか?」

 ヘンデル伯爵夫妻が馬車で旅だった後、ローガンは弟の部屋を訪ねた。

「……」

 エリオットの顔は青く、唇を噛みしめる。

 両足を膝下で切断されてから、エリオットはベッド上の生活だった。

「なんで……僕がこんな目に……」

「は? お前がソフィア様を虐めてたからだよ。まだ分かんないの?」

 ローガンが一歩近づくと、エリオットはひいっと腕で顔を庇うような仕草をした。

「お前、ソフィア様にやった事、忘れたのか? しまいには噴水で溺死したんだぞ?」

「ぼ、僕だけじゃないし! に、兄様だって虐めてた!」

「そうだ」

「なのにどうしてあなたはソフィアの味方みたいな事を言うんですか! 僕だけこんな目に遭うんですか! あなたは無傷じゃないですか! それにどうして僕がこんな目に遭ってるのに助けてくれないんですか! 僕は毎日毎日……虐められてるんですよ!」

「ローガンは真っ先にやられたよ? 階段から落下して死んだぞ。だから俺はお前の兄じゃない。でもそんなに辛いなら仲間にしてやってもいいぞ? 俺達の仲間になりたいか? その切断された足もソフィア様なら治してくれると思うぞ? なんせ、なんせ、驚けよ? あれほ邪悪な精神を持ちながら、持って生まれた魔法適性は全属性だからな? 聖魔法の治癒も使えるんだぞ?」

 と笑いながら言った。


「え……だって、ソフィアは魔力なしだって……あなたは兄上じゃないの?」


「違うね、俺はローガンの皮をソフィア様にいただいたのさ。マイアとメアリもな。ナタリーも殺すなって言われてたんだが、あれを仲間にするつもりはなかったから俺の独断でやった」

「仲間になったら殺さないの?」

 真っ青のエリオットは涙を浮かべてそう言った。

「ああ、まあ、まずは殺してからなんだけどな」

 ローガンがそう言った瞬間、彼の全身から太く硬いトゲトゲが現れ、それは一瞬でエリオットの全身を貫いた。

 顔も頭も腕も足も胴体も、全てがトゲに貫かれ、瞬く間にベッドの上は血で汚れた。

 トゲは機械仕掛けの運動するように、エリオットの身体何度も貫き、ぐじゅぐじゅとエリオットの身体を刻んだ。

「ローガン様ぁ、そんなに細切れにしたら、再生するの大変ですよぅ。ベッドの掃除も大変だし」

 とマイアがクスクスと笑いながら言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る