霊 夢
高草木 辰也(たかくさき たつや)
第1話 霊 夢
八月ももうすぐ終わる頃の話だ!
朝方、夢を見ていた。
何故かわからないが白くて清潔そうなバスに乗っていた。 乗客はそれほど多くない。みんな座席に座っていたが、空いている席もあった。
乗客は皆、固まったように静かでうつ向いていた。 私は突然のことで意味が分からず前席の人に思わず尋ねた。
「あの~、このバスどこへ行くんですか?」
しかし誰も答えてはくれなかった。
ほどなくしてバスは到着し皆が降りて行った。私も一緒に降りると、そこは駅のようだった。
辺りを見回すと、その日は爽やかな秋晴れで空気は澄み渡り清々しく気持ちの良い午前中のようだった。
私の心は、何か踏ん切りがついたような不思議な感覚になっていた。
そう、仕事がキッチリ終わって一区切りついた時のような・・・・。
その駅は東京ビッグサイトのような感じの建物で階段を上がった先に見えていたが、私がバスを降りた階段の下のところまで人が長蛇の列をなしていた。
こんなに大勢の人が列に並んでいるのに誰も話をしていない。
異常な静けさなのだ!
私はつたない文章を書き、多少なりとも怪談の世界に足を突っ込んでいる人間だ。 なのでその時、瞬時にこの状況を理解した。
「そうか、この人たちは " 死にゆく人達 " が乗る列車を待っているんだ! 怪談話によく出てくるやつだ!」
目が覚めるとなぜかいつもと違い寝覚めが良く、すっきり爽やかと言った感じだった。 そんな起き掛けの頭で考えたのは・・・
「確か、自分の死ぬ夢を見ると何か良いことがあるんじゃなかったかな~??」
などと都合の良いことを考えながらその日は気分よく出勤した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます