未来のない僕たちの旅行記

Pepper

プロローグ

「ねぇ。君はこれからどうするの?」

 不意にテーブルの前に座る彼が聞いてきた。

 突然の質問に驚いて、動いていたスプーンが止まる。

「これからってどういうこと?」

 自分は思わず聞いてしまった。その言葉の意味は分かるけど、少し不安がある言葉だった。

 彼は少し笑って、手のティーカップを下に置き、ゆっくりと口を開く。

「簡単だよ。君は大きくなったら、何をやりたいんだい?例えば、お医者さんだったり、ケーキ屋さんだったりとか。少し方向を変えると、結婚して子供をつくるとか」

 いろんな例を出されて、頭の中が糸のようにこんがらがっていく。今まで考えていなかったことに戸惑う。

 今まで将来のことなんて考えてもいなかった。今この瞬間、てさえいれればそれでいいとずっと思っていた。

「まだ…わからないよ。そんなこと。考えてもどうせかなわないことだって思ってるから」

 自分の口からはそういうしかなかった。こんなこと言ったら、彼はどう思うのだろう。そんな不安もあったが、それしか言葉がなかった。

 そうなのかーと彼は朗らかに笑った。最初は少しイラっとはしたけども、彼が不安を持っていなくて少し安心もして、少し自分の顔に笑みを浮かべた。

 「じゃあ、そっちは?なにか夢はあるの?」

 お返しと思って、自分も同じ質問を上げた。すると彼は隣に座っていたベンチからおもむろに立ち上がって、

 「僕?僕の夢はね…」 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る