営業途中!!
第18話 幼馴染、千彩都ちゃん
黒子の幼馴染、逆叉千彩都はごく普通の女子高生である。
ダンジョン攻略なんかしない。
入ったこともない。
自分にはどんなスキルがあるのか興味もない。
徹底した観る専。
ネットでバズってる冒険者の情報を知っているだけでいい。
ある日の放課後、千彩都はクラスの友達とショッピングモールのフードコートに来ていた。
適当に注文したたこ焼きを食べていると、友達がスマホの画面を見せてくる。
アポカリプスの魔女、松平駿河の配信であった。
「っぱさー、アポ魔女しか勝たんのよ。見てよこの美しさ。戦うお姫様って感じじゃね!?」
そのアポ魔女と一緒に晩ごはんを食べたことがあるのは秘密である。
質問攻めされると面倒だし、駿河や黒子に迷惑がかかるかもしれない。
「あれ? スカラくんはどうしたの?」
スカラくんとは、女の子に人気の男性配信者である。
「あー、彼女いるからもういいや」
「へー」
「てかさ、これ知ってる? アポ魔女が新人冒険者とダンジョン攻略したやつ」
「キモい男が来て、大変だったやつでしょ?」
「そうそう!! 黒猫黒子が助けに来てさー!! ほんとこの子ヒーローだよね〜」
千彩都は最後のたこ焼きを食べると、紙コップに入った水を飲み干した。
黒猫黒子。
少し前まで引きこもりの幼馴染でしかなかったのに、いまじゃネットの大スター。
本人が望んだ人気ではないが。
それから友人と別れ、千彩都はなんとなく黒子の家に向かった。
用事はないが、無性にお泊まりしたくなったのだ。
その道中、黒髪に赤いメッシュが入った少女とすれ違う。
今日も黒子探しに勤しんでいた、ルルナであった。
バッグに装着された無数の黒子缶バッチは、ルルナのお手製である。
ルルナのことも、彼女が異常者であることも知らない千彩都であったが、これには苦笑い。
「熱心なファンがいたものだ」
タワマンに到着し、呼び鈴を鳴らして黒子にホールのドアを開けてもらう。
エレベーターで20階まで上がって、一番奥の玄関扉を開けると、
「あ、はじめましてっす!!」
見知らぬ男がいた。
「え」
部屋は間違えていない。
何度も来ているから間違えようがない。
じゃあ、こいつは……だれ?
衝撃のあまり硬直していると、部屋の奥から黒子がやってきた。
「千彩都、いらっしゃい」
「く、黒子」
「どうしたの? あぁ、鎌瀬くんとは初対面か」
ズババと黒子に接近し、耳打ちをした。
「ま、まさか黒子あんた、私に内緒で彼氏を!?」
「なっ!! 違うよ!! 鎌瀬くんは彼氏じゃなくて弟子」
「弟子?」
黒子に代わって太郎が答える。
「そうっす!! 師匠の弟子の鎌瀬太郎っす!! 師匠のために、身の回りのお世話からはじめてるっす!!」
「へ、へえ」
しかしただの弟子とはいえ、男を自分の家に入れるだろうか。
話が本当なら、鎌瀬太郎は何度も黒子の家に訪れていることになる。
彼氏じゃなくても、黒子は彼をどう見ているのか。
気になって仕方ない千彩都であったが、答えを聞くのが怖くて問い詰められなかった。
別に彼氏がいても良いとは思うが、ショックを受けそうな予感があったのだ。
それから太郎は二人分の野菜炒めを作って、帰ってしまった。
もしゃもしゃと熱いレタスを食べながら、黒子を見つめる。
「ん?」
「なーんかさ」
「ん」
「変わったね」
「そう?」
違う。千彩都だって気づいている。
黒子は変わってなどいない。彼女を取り巻く環境が変わったのだ。
交友関係が広がって、世間に注目されて。
周りが、千彩都から黒子を遠ざけている。
黒子の視線がお茶碗に集中する。
底にこべりついた米粒を箸で摘み、食べると、黒子は千彩都に笑顔を向けた。
「たまには同じベッドで寝ようよ」
「え〜、子供じゃあるまいし」
「いいじゃんたまには。童心に帰るってやつ!!」
「ん〜」
とか悩みつつも、答えは決まっている。
普段は、狭くなるから並んで寝たりはしない。
けれど今日は特別。
遠ざかる黒子が振り返って、手を差し伸べてきたのだ。
掴まない理由はない。
「しょうがないな〜黒子は」
「やった!!」
黒子は可愛い。
おまけにデリバリーをやっているわけだし、有名になって当然というか、なるべき存在。
本人は『バズりたくなんてなかった』と文句を垂れているが。
黒子と一緒に寝ながら、千彩都も思う。
確かに、バズらなければよかったのに。
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※あとがき
新章突入!!
といっても、ただ区切りが良かったから分けただけなんですけどね。
今後とも、応援よろしくおねがいします!!
これまで応援してなかった人は、この機会に是非ッッ!!
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